- Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
- / ISBN・EAN: 9784396634865
感想・レビュー・書評
-
歴史小説なのかエンタメ小説なのかよく分からないが、面白かったから何でもいいや。ドラマ見たかったなー
小学校の社会科で、神田上水や玉川上水をやったのを思い出したり。あれは東京限定だったんだろうなあ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
権力者の戦いが主題になりやすい歴史小説では珍しい江戸の街づくりに貢献した人にスポットライトを浴びせている。利根川の流れを変え、飲料水を引き、貨幣造り、江戸城を建造する(石垣を切り出し、白塗りの天守を作る)。それぞれのストーリーがオリジナリティーに溢れていて面白い。
-
門井慶喜氏の歴史小説。江戸を一大都市にのし上げることになった大仕事を、その中心人物のドラマとともに描く。
河川の流れを変えた灌漑技術の伊奈忠次、小判を作り、貨幣の日本統一で経済を掌握した橋本庄三郎、水を引いた内田六次郎。石を見通す見えすき吾平、天守を作った職人たち。
家康の攻めと守り、そして天下人にふさわしい判断力と、一つ一つに思慮のある家康と、優秀で、且つ自分の意思と夢を持つ主人公たちが織りなすプロジェクトのロマン。ゼネコンや、石油コンビナートなどの建設に携わる現代人とも通じるような、熱い情熱が江戸を作っていたということを土台にしたドラマとなっている。特に、石を運び石垣を作るプロジェクトでででくる石切り、そして石への強い思いが、親から子へと、また人から人へ伝わっていく。江戸城完成に至るに3代をかけた徳川は、その後2百年あまりを太平の世とした。その功績と情熱を感じる一冊。 -
テレビドラマ化もされたことで、興味を持って読んでみました。短編連作で江戸の立ち上げを描いており、まとめて読むと、単に僻地を開拓したということではなく、新規開発に合わせて、新しい仕組みを取り込もうとする力があったことを感じさせられる。
一編一編が、短いため、もう少し細かく知りたいところもあるが(特に「流れを変える」)、大きな視点が故に世代を超えた結びつきが、歴史の流れを感じさせるところもあり(「飲み水を引く」「石垣を積む」)、やはりまとめて読むことで面白さが増すと感じた。 -
門井慶喜さんの時代小説は初めてですが、非常に読みやすい。時代小説としてのハードルが非常に低い。
内容は、「小説版ブラタモリ」。上水のエピソードとか、そのままタモリさんがブラブラしていました。
壮大にしてニッチな、というあの雰囲気も近いものが。 -
家康が秀吉から国替えを言い渡され、江戸という街を造っていく。
まず河の流れを変えて台地造成、貨幣造成、飲み水の確保、城の石垣造り、そして江戸城天守閣。
江戸は出来たのではなく、建てたのだ、という気持ちが伝わってくる。 -
「家康、江戸を建てる」というタイトルだが、家康はほとんど出てこない。
家康がいかに将来を見据えていたか、それとその家臣がそれぞれの事業にかかわる人選に秀でていたか、それに尽きる。
家康が築いて来た江戸が、現在の日本の生活に多大な影響を与えている。生活する為の飲み水を確保したり、貨幣を流通させたり、今の生活に根付いていることの原点を見た気がする。
そこが現在の日本銀行本店や井の頭公園である、と聞くとなんだか鳥肌が立つ思いだった。
川の流れを変えるなんて、計画が壮大過ぎる‼︎
44 -
おととし東京都現代美術館でオスカーニーマイヤーの建築を振り返る展覧会がありました。彼の作り上げたブラジリアという人工都市のスケールに度肝を抜かれました。でも「家康、江戸を建てる」を読みながら、家康の江戸にあってブラジリアにないものもなんとなくわかりました。そこに暮らす人の生活です。人生です。江戸を建てるということは江戸城を建築するということではなくて新田を開発して生産力を上げるだし、上水をひいてインフラを整えるだし、貨幣を鋳造して商業システムを作るだ、と思い知りました。ビジョンとしての都市とリアルの積み重ねとしてのと都市の違い?治水の伊奈忠次、鋳造の後藤庄三郎、水道の大久保藤五郎、六次郎、春日与右衛門、石切りの見えすき吾平、見えすき喜三太、そして新概念の天守閣を作った徳川秀忠、平和の時代に必要なマニアックなスペシャリストたちの総合芸術がその後百万都市になる江戸なのでした。いやいやすべてを包含する総合プロデューサー家康のビジョンが凄いのかも。2020に向けて槌音高らかな江戸の進化形,TOKYO。そこにはどんなビジョンが示されているのか、いまだに見えてきていません。
-
歴史小説のように心地よく、すらすら読めた。
『ローマ人の物語』の10巻「ローマは一日にして成らず」の江戸版とでもいえそうな、すなわち、「江戸は一日にしてならず」とでもまとめられるような内容だった。
(じっさい、文中に「パクス・トクガワーナ」という記述もあり、ニヤッとさせられた)
上水道を井の頭池からひいた神田上水の話や、金貨をのべる話は、土木や国土経営的な観点からも面白かったし、江戸城の石垣をくむ話も、印象的。
逆にすこし残念なのは、利根川東遷の話については治水のことぐらいしか背景が語られておらず、物足りなかった(まあ仕方ないか・・・)。
内容にフィクションが多いともおもってはいないが、もう少し詳しく、学術的に記されたものも読みたいと想い、『江戸はこうして造られた』(鈴木理生)をこんど手に取ることにしたのである。 -
江戸構築を描いた連作歴史小説。
・流れを変える
・金貨を延べる
・飲み水を引く
・石垣を積む
・天守を起こす
の5編収録。
家康の方針を受けて、それぞれのインフラ事業の物語でした。
前半の三つの章は町のインフラ、最後の二つの章は江戸城建築の話なので、土地の埋め立てや町づくりなどの町のインフラ話でまとまめた方が良いかと思いましたが、最後の一章は家康から秀忠へと引き継がれていくところは良かったのでOKだと思います。
それぞれの章が短く、自分も知らないような史実的主人公も異なるので読みやすいですが、巻数を増やしてでももっと多くのインフラ話やひとつひとつの仕事の深堀や物語の厚みを増しても良かったと思いました。