家康、江戸を建てる

著者 :
  • 祥伝社
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感想 : 203
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396634865

感想・レビュー・書評

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  • オーディブルで聴きましたが、これはかなり面白いですね。
    関白秀吉に東海から関東へ国替えさせられた徳川家康。家臣団は大反対したが、家康はここにこそ未来があると江戸にかけます。
    本書は家康の命を受け、河川工事、飲料水、通貨の発行、城造りなどなど、派手な戦場での話ではなくどちらかというと地味な内政を行う文官の活躍を連作短編によって描いています。主役は江戸の街そのものですね。この巨大都市がどのように造られていったのか?

    秀吉が大阪で発行していた大判に対抗して、家康は小判を造ろうとするエピソードなんかは特に面白いですね。
    戦と同様に経済や民の衣食住の改善に力を注いでいたからこそ、結果的に家康が他の武将を抑えて勝ち残ったんだろうなあ、という事も感じます。

    今はなき江戸城の天守閣は、家康の強い意志で真っ白な漆喰塗りだったそうです。その時代においてはあまり考えられない事だったそうです。家康がなぜ真っ白の天守閣に拘ったのか?その謎を2代将軍秀忠が推理する場面がありますが、その答えを語る家康の言葉はに感動してしまいました。

  • 個人的に、歴史物で現代語が出てくる本は(どっぷりその時代に浸りたいのに一々現代に呼び戻される感じが)昔から好きではなくて、本書も読み進めるうちに、段々現代語が頻出してくるように感じて少し苦手だった。
    とうとう真ん中くらいで「インフラ 」「アトラクション」という単語まで出て来た時にはその点はもう諦めた。
    その点は好みの問題なので、説明書として読めば、わかりやすくて良いとも思う。
    総じて内容は良かった。
    勉強になり、面白かった。

  • 「家康、江戸を建てる」
    タイトルとは違い、家康はほとんど出てこない。主人公は江戸を建設し繁栄に導いた仕事人たちの物語である。
    その主人公たちは治水工事、小判の製造、水道工事、石垣作り、漆喰の壁作りの専門家の活躍の話である。
    家康は先見の明や何が最優先課題かを判断する能力はあっただろうが、それぞれの分野の技術専門家たちが活躍して江戸を作ったと言うことは間違いないだろう。
    五つの話はそれぞれ独立しており、主人公は侍だけではないことも面白い。決して時代は為政者だけで動くのではなく、時代に合わせた技術力が集まることによって動くことを感じさせる。そして、時代を動かす力はそれぞれの主人公がこれをやりたいという思いであり、それぞれの主人公の個性によるところにあり興味深い。
    時代小説というとどうしても為政者の話しが多くなりがちであるが、大変面白い切り口で楽しめた。
    翻って、現代社会を動かしている、あるいはこれからの未来を作るであろう技術とは何なのかを考えさせられる。

  • 史実をベースにしたフィクション。
    秀吉から国替えされた家康が水浸しのクソ田舎の関東をプロデューサーとして全体を構想し、ひとつひとつをゼロから造り上げていくという設定の連作集。

    インフラとしてまずは利根川を曲げて水の流れを変え、水道を整備し、貨幣を造り流通の仕組みを整え、江戸城を建て天下に知らしめる。

    それぞれを実直な事務次官や職人を主役に据えて、さながらプロジェクトXのようなものづくりの魅力を満喫できます。

    江戸城の石垣築城を石切り職人の目線で見る章は特に面白かった!皇居ランが今後新鮮に感じられそう!

  • 江戸城を見て、想像以上のお粗末さに呆然とする家康であったが、川の流れを変え、飲み水を引き、低湿地ばかりの土地を豊かな土地に変えていく。また、家康は江戸を日本一の商都とするために小判を発行し、現代に通じる貨幣経済の地固めをしていく。
    個人のもつ能力を適材適所で発揮させる術に長けていた武将家康の、江戸に託す思いを描いた小説。

  • 江戸という世界有数の巨大な街を造り上げた人々を描いた連作短編集。

    江戸城というより、江戸という都市の機構をどう造り上げたかを重点的に描かれているところが面白い。上水機構や利根川などの河川工事など、今現在に到るまでしっかりとその機能が受け継がれていることに感銘すら覚えるものであった。

  • 江戸を作り上げたのは、家康じゃないんだということね
    そりゃあ、家康が全部できるわけではないけど
    人の力を信じて、発想して、時間をかけて
    そして、江戸に住む人々を想像して作られる姿は
    なんだかすごいなぁと思いながらも
    やっぱり、顕示欲や独占欲、諦めもあったりと
    人間臭くて、驚きも満載の、元気が出る小説

  • 家康の江戸開府について歴史小説として知れる本。ひとつひとつのエピソードが長くないので読みやすい。今の東京の地名の由来が分かって面白い。冷静に考えると東京が都市として発展したのはこの江戸開府の400年前からであり、それまでは湿原状態だったことを考えると、とてつもない編纂だし、その基礎を作った徳川家の偉業ぶりは計り知れない。

  • 江戸、家康という切り口で書かれた作品は枚挙に暇が無いが、江戸のインフラに着目し独自の視点で書かれている本作品。 関八州の荒野を目の当たりにした家康の心に去来したものを推し量る術は持ち合わせてはいない。けれど、 江戸から戦禍を無くし未来永劫平和な社会を打立てようとする胸に秘めた家康の決意が 天守閣の漆喰を白に固執する、その言葉に込められた真意を知り思わず言葉を失う自分があった。 命を賭けて江戸の基盤を築いた人々が、巷での市場移転・誘致勧誘の混乱醜態を見て何処かで嘲笑していないことを切に願う!

  • 連作短編5編
    江戸の町を一から造るという大事業に,治水工事や金融政策,上水道や築城などそれぞれの専門分野で精魂傾けた男達の仕事,気概に圧倒される.そしてその背後にあるのは家康の信念.感服しました.

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著者プロフィール

1971年群馬県生まれ。同志社大学文学部卒業。2003年、第42回オール讀物推理小説新人賞を「キッドナッパーズ」で受賞しデビュー。15年に『東京帝大叡古教授』が第153回直木賞候補、16年に『家康、江戸を建てる』が第155回直木賞候補となる。16年に『マジカル・ヒストリー・ツアー ミステリと美術で読む近代』で第69回日本推理作家協会賞(評論その他の部門)、同年に咲くやこの花賞(文芸その他部門)を受賞。18年に『銀河鉄道の父』で第158回直木賞を受賞。近著に『ロミオとジュリエットと三人の魔女』『信長、鉄砲で君臨する』『江戸一新』などがある。

「2023年 『どうした、家康』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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