- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784408133621
作品紹介・あらすじ
古代ギリシャではなぜ血液を「緑色」と表現するのか。なぜ「海」という単語がなかったのか。なぜ最高神ゼウスが「浮気性」なのか。学校でも本でも知り得なかったギリシャ神話の神々と古代ギリシャの人々。オリンポス十二神履歴書付き。
感想・レビュー・書評
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のっけから驚く
ギリシャは白くない!
元々神殿は極彩色に彩られていたのだ!
大英博物館が、所蔵するパルテノン神殿のフリーズ(建物上部の装飾彫刻)の色をこすり落とし白く磨き上げた
博物館のスポンサー命令とのことが1939年に発覚
なんとまぁ!
18世紀半ばから西欧でギリシャブームが起こる
ギリシャは崇高で静謐、単純美のシンボルでなければならない
大理石は白く輝いていないといけない
神殿は白亜でなければならない
国全体も、古代ギリシャっぽくないものは破壊され、古代ギリシャっぽい建築物が建てられた
西洋人が古代ギリシャの理想化する理由
それは「ギリシャ文明を自分たち西洋世界の共通のルーツ」だと信じているから!
しかしながらギリシャ文明はエジプト文明をはじめアフリカやアジアに起源があり、西洋文明の出発点は古代ギリシャではなく東洋におくべきでは…(黒いアテナ論争)という意見もあり
というわけで
「白亜の、白人の、古代ギリシャ」は西洋がそうあってほしかったギリシャの幻想が投影されている
中世ギリシャは存在しない
1000年の空白あり(確かにそういえばそうである)
古代ローマ(東ローマ帝国、オスマン帝国)に吸収された
次にギリシャ人を名乗る人が現れるのは19世紀(ギリシャ独立戦争)
古代ギリシャは多神教(ただし宗教という概念や言葉はまだない)
現代ギリシャは一神教(東方正教徒)
まぁそんな感じで古代ギリシャ人と現代ギリシャ人は異なる
(しかし現代ギリシャ人は古代ギリシャ人に大変誇りをもっている)
他にも
ギリシャ神話の世界、オリンポス十二神とその履歴書(これは役立つ)、古代ギリシャ人のメンタリティ、価値観や時間感覚(特に労働に対する価値観が日本とまぁ違うこと)、夢占い、盛んな同性愛(!)、日本と同じくセミ(ミーンミン鳴く蝉です)に情緒を感じる…など
なかなか面白いネタが多く、ギリシャの知識ゼロのド初心者の私にはピッタリであった
最後に著者について
藤村シシン氏
古代ギリシャ・ギリシャ神話研究家
高校生の時に「聖闘士星矢」にすっかりハマり、ギリシャ神話に興味を持つようになる…
ちなみに女性である
ネット検索するとギリシャの衣装で登場しており、なかなかインパクトがあって面白い
情熱をもって好きなことを仕事にするというのはまさにこういうことなんだろうと思わせる女性である
こういう方の活躍はこれからも楽しみだ
こういう本をおり混ぜながらギリシャの歴史を知っていくのはずいぶんおトクな気がする
楽しませていただきました♪詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
面白かった。
目から鱗の雑学で、ギリシャのイメージが覆る。
ギリシャ神話の神々も、人間臭くて笑う。
面白いエピソードのチョイス、絶妙なツッコミなど、筆者のセンスが光る。
『ハリー・ポッターと賢者の石』に古代ギリシャ語版があるとは。
ギリシャ神話メインだが、ほかの話ももっと聞きたい。 -
シシン先生節が冴え渡る!読んでいるとずっと先生の声が聞こえるような愉快な古代ギリシャツアー!
オリュンポス十二神を中心に履歴書や名言をピックアップして紹介する章は先生の溢れんばかりのギリシャ愛を感じざるを得ない。 -
ギリシャ旅行へ行く前にギリシャの歴史や神話に触れたくて読んだ本。
最初に想像していたギリシャの綺麗なイメージは白い建物、青いドーム、ピンク色の夕日、綺麗な海、美味しい海の幸であった。
読み終わったあとでは、神々の性への奔放さ自由さ、古代ギリシャ人の知的に考える力と、愛への情熱、文化的な背景を知って、白いイメージが色彩的になった。
人間が持つ感情を華やかに発揮される神様たちには驚かされるばかりであった。
でもなんだか好きになってしまう魅力があった。
日本とギリシャでセミに見出すものが、はかなさと永遠で真逆なところも面白かった。 -
知識が皆無に等しくても楽しめる内容だった。
漠然と持っていたギリシャのイメージが実は「オリジナル」ではなく、西洋的なアイデンティティを求められた結果の産物だったことには驚いた。
大英博物館の今では信じられないような行動にも驚き。最初から確立しているわけではないのだから、当然かもしれないがそういった時代もあったのだなぁ、と。学芸員課程をかじった者としてはそういうふうにも思ったり。
固定のイメージを覆すところからお話を始めるのはシンプルに構成として上手いな〜と思った。文体も堅苦しくないのでサクサク読める。
古代ギリシャ的な「信仰」や「習慣」は無くなっても、神話は語り継がれて、新しいものになったり、今だけじゃなくてきっとこれからも色々な解釈がされたり、題材やら元ネタになっていったりするんだろうなとギリシャ神話の強さを改めて感じた。
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「この場にいる者は誰か!」 「善良なる市民!」古代ギリシャのリアルがここに | ほんのひきだし
https://hon-hikidashi....「この場にいる者は誰か!」 「善良なる市民!」古代ギリシャのリアルがここに | ほんのひきだし
https://hon-hikidashi.jp/enjoy/132934/2021/07/27
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著者・藤村シシンさんのSNSが面白く、たまにまとめてエントリを読んだりする。一見おバカっぽい発言が続くように見えるけど、実は古代ギリシャに関する深く広い知見に裏付けられていて、非常に高度なユーモアをたたえた古代ギリシャ愛(というかアポロン神への愛)がダダ漏れである。
この本は、ギリシャ神話などでぼんやりとは知っている古代ギリシャ世界をざっくりまとめ、学術的な知見を加えて「リアル」を1冊で紹介したもの。断片的でいささかトンデモなトリビアを披露して受けを狙うのではなく、古代ギリシャ世界の成り立ち、それを利用した後世の世界などの知識をコンパクトに、トータルにまとめてある。
多くの人にはオリンポス12神のプロフィールをまとめた第2章が、神々のかなり無茶なパーソナリティとエピソードが見られて人気だろうと思うけれど、個人的には後世の社会による古代ギリシャ史のロンダリングとその復刻を解説した第1章と、古代ギリシャ人のメンタリティを解説した第2章が面白かった。特に、第1章に付属したコラムが古代ギリシャ人の色と質感、情感の関係を説明しており、なかなかこういう解説に出会えたことがなかったので「ふむふむ」と何回も読んでしまった。色と情感、質感が連動しているってすごいな、古代ギリシャ人。
やわらかそうで本気度の高い入門書で、海外文学を読む手掛かりなどにもなるので、1冊手元に置いていて損はない本だと思う。巻末の参考文献一覧に藤村さんの研究者としてのプロ魂を感じるので、この一覧から選んで読んでみるのも面白いと思う。まあほんとに、「好きこそものの上手なれ」とはよく言ったものだ。
私が読んだのは初版だけれど、注とルビの部分で誤植(まあイージーなチェック漏れなんだけれども)が私の気づいた部分で数か所あったので、増刷で訂正していただければありがたいです。もうたくさんのかたが読んでいらっしゃるようなので、追い打ちで指摘しませんけど。 -
藤村シシン先生は他所の企画に乗っかることは多いようだが、単独でのアウトプットが少なめ。読み足りない。YouTubeでも書籍でもいいからもっと発信して欲しい。
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古代ギリシャの知られていない意外な真実と、そして現代日本人にもつながる共通した感性も明らかにされる、なかなか楽しい切り口の古代ギリシャについて詳しくなれる読み物でした。
色の捉えかた、「流れるもの、生きているもの」などという共通性から同じ単語を使うという感性は素敵だと思うし、蝉に感じる儚さを古代ギリシャの人々も感じていたというのは遥かなロマンチシズムを感じたり…。
そういうエピソードひとつひとつによって、かつて彼らはほんとうに存在していたんだな、という「リアルさ」が自然と浮き立ってきたように感じました。
一方でギリシア神話の神々のハチャメチャさ(そしてそれがだんだんと曲色されたものでもあるという)や、夢や生活の感性(はたらかざるものこそ人であるという)のわからなさもそれはそれで凄いなと...
古代ギリシアのあれこれを小難しくなく、ひたすら平易に楽しく解説してくれていて有難いし、すてきな本だと思いました。