リムレスの空 (クリスタル文庫 55 魚住くんシリーズ 5)

著者 :
  • 光風社出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (305ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784415088341

作品紹介・あらすじ

ようやく久留米と恋愛関係になった魚住にアメリカ留学の話が持ち上がる。いまださちの死の影響が大きくPTSDと闘う魚住は大きな不安を覚えるが、久留米との恋が彼の中の何かを確実に変えていた…。幸福も不幸も、出会いも喪失も、強さも痛みも…すべてを見つめる静謐な眼差しの物語、感動の完結。

感想・レビュー・書評

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  • 魚住くんシリーズ第5弾。
    最終巻。
    魚住と久留米、ふたりの恋愛というより、
    お互いの心の変化と成長がメインな気がする。
    一時的なものではなく、今後も続いていく関係において、
    とても大事な成長だと思う。

    さちのの件を引きずりながらも、前へ進もうとする魚住。
    それを見守る事しかできない歯がゆさに葛藤する久留米。
    微妙なバランスを保ちながら、安定してゆく。
    まさしく、割れ鍋に綴じ蓋。

    「夏の子供」
    魚住が渡米する年の夏のお話。
    魚住がいた園から預かった子供目線で話は進む。

  • 新装版が出版されたので、遠慮無く何度も何度も読み返してボロボロになっているシリーズです。
    元は雑誌「小説JUNE」の投稿作品。第一作目でその世界観から目が離せなくなりました。読んだだけで分かる人物像、風景、心情等、わかりやすさに合わせてグイグイとストレートに感情に突き刺さる文章です。
    BL、耽美などにジャンル分けしてしまうのが残念なほどの良作です。

    心的外傷、PTSDなどとても丁寧に描かれ、悲劇を昇華できるほどに芯のしっかりした物語があります。
    不安定な主人公魚住真澄を支えてるんだか放置しているんだか、でも確実に魚住の中にいつでも住んでいる鈍い男な久留米。ふたりと過去に交際のあったマリ、久留米の部屋の隣に住むインド人留学生サリーム等、魅力のあるキャラばかり。
    当時では(たぶん今でも)珍しい女性キャラが格好良くて惚れてしまいそうです。

    私の中では完結した今でも「物語はどこかで続いて」いるのです。

  • 2010.02.20. 最終巻まで一気読みしてしまった。魚住くんシリーズの中で、1番好きなタイトル。開放感がある。幸せになるんだよ、なれるよと思いながら読む。

    2005.10.09 最終回なんだけど、終わった気がしない。きっとどこかでみんな生きてる気がする。「夏の子供」は、違う視点からみんなが描かれてて、新鮮だったな。実際の施設って、今増えてるしどうなんだろう?なにより、幸せになってるふたりがよい◎

  • 一巻から読んできて、とても感慨深いです。なんだかキャラクターたちと長いお付き合いをしているようでした。

    私もゆるゆると繋がっていたいなあ。人と。

  • <※男性同士の恋愛を扱っています>魚住君シリーズの完結作。「ちいさな魚になって、泳ぎだそう」と決心する魚住の成長を、素直に祝福したくなります。タイトルになっている「リムレス(=ふちのない)の空」のエピソードも秀逸です。

  • 1〜5巻イッキ読み。これでデビュー作なんだから、榎田尤利はスゴイなぁ・・・と。久留米ったらイイ男だし、マリちゃんは素敵だし、サリームのカレーが食べたいし。ラスト、魚住くんが幸せそうで嬉しかったよ。うー、読んでよかった!!

  • 魚住は、とてもきれい。この本が完結しても彼らの日々が続いていくことが、当たり前だけどすごくうれしい。何回でも読めるシリーズでした。

  • 魚住くんシリーズ 5巻目

    ■リムレスの空

    魚住の元カノ響子ちゃんの話を通して、
    「親」について色々語られるお話。
    親がいなくても子は育つけれども、
    アイデンティティーの根幹なのだなあ
    なんて思いました。

    ■アイ ワナビー ア フィッシュ

    魚住に両親やさちのを失ったことによる
    PTSDの症状が現れ始めます。
    ようやく幸せが訪れたかと思ったのに、
    魚住にどこまで試練を追わせるんだろうか・・・。

    そんな魚住を思うように救ってやれないことに
    苦悩する久留米の姿は初めて見ました。
    でも思っているより魚住は強かったです。

    さちのの友達に優しい嘘をつけるようになった
    魚住には感動しました。
    前なら本当のことしか言えなかっただろうに。

    ■夏の子供

    魚住と似た境遇の子供、太一視点の話。
    太一の姿から子供時代の魚住を想像したり、
    太一視点からの魚住や久留米を見るのは
    意外と面白かったです。
    最初はまた新しい脇役出てきた!とか思ってごめんなさい。

    留学を終えた後も二人が続いているらしいこと、
    それなりに幸せに暮らしている様子が垣間見れてホッとしました。
    もちろん、太一のことも。

  • 1巻からここまで読んでいて眉間が痛くなるほど皺が寄ったり号泣したり辛いことがたくさんあったのに、何なんだろうこの気持ちいい涙と読後感。
    あぁ、いいストーリーだったなぁ。やっぱり榎田さんはすごいなぁ

  • 以下シリーズ最初の『夏の塩』から全編通しての感想。
    BLとしては勿論、BLの枠には収まりきらないひとつの『物語』として楽しめた。魚住と久留米は勿論、脇キャラも魅力的、話の展開も無理なく、そして飽きさせず、山場もきちんと用意されている。すごい。さらにはここまで長い物語を最後に太一という家庭環境に恵まれない少年の視点で描ききり、それで物足りなさを感じさせないのが本当にすごいと思った。久留米と魚住の将来に関する具体的な話し合いなどは描かれていない。それなのに読後はすっきりして不完全燃焼な感はなかった。

  • 最終話がいい。魚住の話だけなのが、とっても!

  • シリーズ読了。
    ……なんて言ったらいいんだろう、この物語のことを。上手く説明できそうにない。魚住と、久留米と、マリとサリームと濱田さんと響子ちゃんとさちのと……沢山の、本当に沢山のひとたちの、生きていく途中を、ほんの少しだけ切り取ってその停滞しない生き様と感情と時間の流れを追った物語。
    読後の気分は、誰かと実際に話をして、その人の考えや生き方や価値観を一生懸命聞いて揺さぶられたときのような充実感に似ている。

    いま、この時、変な言い方だけれどこの年齢でこの物語を読む事ができて、心から良かったと思う。生きる──生活する、ということ。食べること、泣くこと、人を愛すること、その苦しさと愛おしさの感覚は、今でなければこんなにもダイレクトに(恐ろしいほど自身にリンクして)浸みることはなかっただろう。あまりにも最近自分が考えていたことと、到達した結論にぴったり当てはまりすぎてしまっていて。
    本への自己投影はあまり好きではないのだけれど。魚住までは到底いかないけれど、響子ちゃんとか、ある意味マリさんとか、(やっぱ魚住も、だな)考え方とか状況とか、他人事な感じじゃなかったもんなあ。

  • 『メッセージ』がひとつの大きな山場となっていたので、4冊目で一応魚住と久留米がまともにくっついて、5冊目でその山を乗り越えた事で新たに表面化してしまった傷を、今度は押し込めるのではなく、きちんと乗り越えていこうという未来。
    マリちゃんの番外編や恋愛、就職した荏原さん、日本にとどまる濱田の思いなど、最後まで本当にいろいろあって、苦しかったりもするけれど、太一の見た八年後の魚住の笑顔と、「そして今日もどこかで、物語は続いているのだ」という最後の一文に、それぞれの未来が明るいことを信じさせてくれる。

    全5冊でここまで触れていいのかというような考えさせる内容がこれでもかと詰まっているシリーズって凄い。
    今までも本を読むことで少なからずいろんなことを考えて、それによって考え方や見方がちょっと変わったり、何かの答えのようなものを思いつくようなこともあったけれど、このシリーズにはそれが息もつかせぬ勢いで迫ってくる。
    押し込めるのではなく乗り越えるっていうのは、わかっていてもなかなか難しいことだとは思うけれど。でも、何か「苦しい」と思ったことがあるなら、これを読んで何某か思うところはあるはず。
    やっぱり上製本で復刊してるみたいだから買おうかなあ…。

  • あまりにも有名な榎田尤利のデビュー作完結編。
    7年という時間をかけて完成しているためか、物語はとてもゆっくりと進んでいく。
    内包されたファクターは暗く重いが、淡々とした描写に先を促される。
    この先に、予定調和のハッピーエンドが待っているわけではない、
    そんなに甘くはないことを読者だって知っている。
    それでも静かにそっと、未来を期待させる場所へ連れて行ってくれる、
    それが榎田尤利という作家の持つ力だ。

    茶屋町勝呂の独特で魅力的な絵柄も相まって、「新聞の夕刊に連載されていた」
    と言われたら、信じる人もいるかもしれない。
    愛すべき普遍的な作品。

  • 初めて読んだBL商業小説シリーズでしたが、たいへん楽しく読むことができました。

  • 魚住視点でなく語られる魚住の心情がせつない。でも、幸せを求めない魚住に少しずつ小さな幸せが降り積もっていくのが嬉しい。すべての人が幸せになる、読後感のとてもいい物語です。

  • 生きることについて考えさせられる…と言ったら大袈裟だろうけれど。
    人生、より道回り道も大切だと思う。

  • 魚住くんの周りには本当にすてきな人たちが集まってくる。
    久留米しかり、マリちゃんしかり・・・
    そんな人たちに見守られながら、魚住君はしっかり一人で立っている。

    でも、そんな人たちを引き寄せてくるのは、他でもない魚住くんなんだろね。

  • 「すべてを見なさいと、彼の養母は言いました。辛い光景も、美しい光景も、それが自分の周りで起きたことならすべてを見て、泣いたり笑ったり憎んだり許したりしなさいと」


    内容紹介です。

    ようやく久留米と恋愛関係になった魚住にアメリカ留学の話が持ち上がる。いまださちのの死の影響が大きくPTSDと闘う魚住は大きな不安を覚えるが、久留米との恋が彼の中の何かを確実に変えていた…。幸福も不幸も、出会いも喪失も、強さも痛みも…すべてを見つめる静謐な眼差しの物語、感動の完結。


    ついに終わった…か。
    けれどなんというか、すごく綺麗な終わり方だな。
    魚住がアメリカ留学を決めて、別れのシーンも、決心したことを伝えるシーンも、そして再会のシーンすらない。
    なのに、心が繋がっていることがはっきりとわかる。
    幸福に満ちていることがよくわかる。

    ああ、よかったなぁと心から思える。
    そんなラストです。

    これまでは魚住の辛さに引きずられる形で、冷たい涙を流したりしたけれど、この巻はすっごく温かい涙が流れます。
    ふ、と微笑みたくなる感じ。

    魚住から人の話が聞きたい。なんて言葉が出るとは思わなかった。
    魚住も成長したんだなぁ。ようやく幸せになれたんだなぁと嬉しくなります。
    これから先もきっといろいろあるんでしょうけれど、それらのひとつひとつを見て、感じて、苦しんで、そして昇華していくんでしょう。
    彼はとても強いから。
    その傍にはたぶん、久留米がいて、同じように苦しみながら同じ方向を向いて、生きているんだと思います。

    本当、幸せ。辛さや哀しさを乗り越えた後の幸福であるからこそ、ここまで幸せなんでしょう。



    最近のBL作品は読んではいないけれど、「BL」という言葉が今ほど定着しておらず、市民権を得ていなかった時代を知っている私から云わせてもらえるのならば、たった一言。

    これがJUNEです。

  • 中学時代、この作品が大好きだった。(掲載されていた雑誌は、今は中学生がひとりで買えない類のものらしい。私はいい時代に育ったなァ)
    胸が痛くて、呼吸が苦しくて、涙で文字が読めなくなって、それでも先へ進んだ。
    生きるということは、こういうこと。どういうこと?こういうこと。
    何度も何度も、悩みながら読んだ。苦しみながら読んだ。
    大好きだった。
    それでも、忙しさや、何だか満ち足りてしまった気分のせいで、当時は3巻で読み止めていたのだ。(ふたりの関係が変わってしまうのを見るのが、怖かったのもある。)
    最近になって1~3巻を改めて読んでみて、改めて「好きすぎる!」と気付いた私は、慌てて4・5巻も買い揃えた。(出版社がなくなったみたいでちょっと哀しくなってしまったが、少し余計にお金を出せば手に入るのだ、自分もそれができる歳になってしまった。)
    私の中で、10年かけてやっと、この作品の終結を見つめることができた。
    私はあの頃から、少しは成長できただろうか。まぁ、歳だけは平等に食ってきた訳だが。
    久留米や魚住やマリやサリームのように、誰かに優しくできているだろうか。
    るみ子や響子ちゃんのように、自分らしく生きようともがけているだろうか。
    あの頃から10年経った私は、今でもまだ彼らの生き方に感動し、憧れ、羨ましく思う。愛おしく思う。
    彼らが、本当に大好きだ。
    彼らを生み出してくださった、聖母・榎田氏に心からの感謝を。

    ~そして今日もどこかで、物語は続いているのだ。~

    今日は一日、この余韻にぼぅっとしている。

    !あまりにあっさりすっきりした結末に、青空に放り出された気分になった私は、
     結局、ハードカバー上下巻もI'm homeも注文してしまったのだった。
     現在、発送待ちちゅう。!

  • 【あらすじ:ようやく久留米と恋愛関係になった魚住にアメリカ留学の話が持ち上がる。いまださちの死の影響が大きくPTSDと闘う魚住は大きな不安を覚えるが、久留米との恋が彼の中の何かを確実に変えていた…。幸福も不幸も、出会いも喪失も、強さも痛みも…すべてを見つめる静謐な眼差しの物語、感動の完結。】

  • ようやく久留米と恋愛関係になった魚住にアメリカ留学の話が持ち上がる。いまださちの死の影響が大きくPTSDと闘う魚住は大きな不安を覚えるが、久留米との恋が彼の中の何かを確実に変えていた…。幸福も不幸も、出会いも喪失も、強さも痛みも…すべてを見つめる静謐な眼差しの物語、感動の完結。

  • 巻が進むにつれて話に引き込まれる感じ。

  • ジャンルとしてはBLですが、主人公の人間として成長していく様を描いています。読みやすくてとても面白いです。

  • 雑誌掲載で読んで以来忘れられず、数年後文庫化してるの発見して大人買い。舌の上のクリームって単行本収録ないんでしょうか…………?

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著者プロフィール

東京都出身。2000年、「魚住くん」シリーズ第1作となる『夏の塩』でデビュー。以降、多彩なテイストの魅力的なボーイズラブ作品を世に送り出している。代表作としては「交渉人」「漫画家」「Nez〔ネ〕」各シリーズなど多数。榎田ユウリ名義でも「宮廷神官物語」「カブキブ!」「妖き庵夜話」「死神」各シリーズなどを発表し、読者から熱い支持を得ている。

「2022年 『threesome』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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