「ふつうのおんなの子」のちから 子どもの本から学んだこと
- 集英社クリエイティブ (2018年7月26日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784420310819
作品紹介・あらすじ
本好きな生命科学者が、幼少期から親しんだ児童文学のヒロインたちから「ふつうのおんなの子」の生きかたを取りだし、その視点から見えてくる世界と可能性について魅力たっぷりに語る自伝的エッセイ。
感想・レビュー・書評
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「ふつうのおんなの子」のちから
中村桂子著
今八十代半ばの生物学者の書いた本です。2018年出版の本ですから、安倍政治絶頂のころ、戦争のできる国になりかげ新自由主義、すべて経済優先、科学信仰が叫ばれてたころの時代を憂慮されて、おんなの子の発想、人間観、社会観、を子供のころ読んだ本を土台にして展開してます。「あしながおじさん」「ハイジ」「モモ」「やかましむらの子どもたち」etc
中村先生は生命誌という分野の学問を確立してそれを基礎に平和、経済を多岐にわたり教えてくれてます。
コロナ後の、地球沸騰、戦争と経済成長一辺倒のこの時代に半分を占める女性の考え方が主流にならなければと思いました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
お会いしたことはないけれど、ちょっとだけ、ある方を通じて存じている中村先生の著書
温厚なお人柄をかねがね聞いてはいた。本業の研究者としても、書き手としても一流であるということも。
この著書の中でご自身も書いていらっしゃるけれど、喧嘩したことない、人の悪口を言わない、聞き上手。
そばにいてくれるときっとすごく安心感を与えてくださるお人柄なのだろうな。
ちょっとしたことで動揺してイラっとしてしまう自分のなんと愚かなことか。
ここに出てくる名作はおそらく小さいころに読んだことのある人の多いことだろう、事実、赤毛のアンの故郷のカナダの島へは毎年多くの日本人が訪れるという。
でもなぜだろう、本が好きなのは昔からのはずなのに私は赤毛のアンも若草物語もちゃんと読んだことがない。
自分は読んでいないのに娘には今しか読めないから、と半ば押し付けるように与えたけれどやっぱり蛙の子は蛙。彼女も赤毛のアンは途中で放り出してしまったようだ。
時代背景が違うと読みづらいものなのだろうか。
唯一ハイジは本ではなくアニメを何度も見て大好きなキャラクターなので
すんなりと入ったけれど。
そんな私でもこの本のハードルは高くない。
むしろ、ああ、今からでも遅くない、ちゃんと読まなければ、と思わせてくれた。
ふつうのおんなの子って、うまく言葉で言えないけど、
先生のおっしゃりたいことはすごく伝わってくる。
素直で勇敢で・・・ -
「ふつうのおんなの子」とは。
取り立てて、ものすごい能力や才能がなくても、日々の暮らしを生きることと、誠実に向き合っている人のこと、なのかなと思う。
「『ふつうのおんなの子』は、権力•経済力•武力で動く社会を求めていません。こういったもので動く社会は望みません。現実はそのような力で動くようにできていることはわかっていても、大事なことは別のところにあるということを忘れず、少しでも変えていきたいのです。ところが、最近、そのような価値観で動くことが難しくなってきました」
「ふつうのおんなの子」は、必ずしも女の子であることを意味しない。男の子の中にも、それはあるものだという。
ただ。2018年にこれを書こうと思ったのは?
その憂鬱さとは、何がもたらしたのだろう?
私たちは多様性を尊重する社会に生きている。
色んなマイノリティが、それでいい、むしろ私たちはそれぞれ何らかのマイノリティだと思える時代になっている。
なのに、一方で、何かが憂鬱をもたらしている。
それは、何だろう?
本書を読んでいて、私はクシャナ型の女性を目指してきたことに気付いた。
男性に負けない力で統率する女性。
でも、ナウシカはそれとは違う。
「相手を違うものとして拒否せずに受け容れる」。
ぶつけ合うことから、受け容れ合うことへ。
けれど、それは、先へ先へと進む社会では、難しいことなのだと思う。
相手の声を聞き、自分の声を知り、その上で受け容れるということが成り立つから。
そこには、積極的な時間の静止、余白が必要なように思う。
あとがきの村上春樹の引用にも、あらためて、頷いた。
我々はシステムという強固な壁を前にした、卵だという、あの有名なスピーチ。
「もし我々に勝ち目のようなものがあるとしたら、それは我々が自らの、そしてお互いの魂のかけがえのなさを信じ、その温かみを寄せ合わせることから生まれてくるものでしかありません」
人工知能が人間を超えると言うが、人間というものを分かってもいないのに、何故そんな風に言えるのか?と問う中村さんの眼差しは、強くて温かい。
その目が、さまざまな児童文学の「ふつうのおんなの子」に向けられていく、楽しい本だった。 -
科学者中村桂子氏、子どもの頃読んだ「あしながおじさん」や「ハイジ」など、児童文学の古典ともいえる作品から世の中について考えます。子どもの本のガイドなどと思ってはいけない。世界のありよう、現実としての諸問題、本の中のふつうの女の子たちから考えさせてくれます。
中村さんは、本当に素敵だ。 -
元祖リケジョとも思われる著者が、子どもの頃出会った児童文学と、その中に登場する「ふつうのおんなの子」のもつ力について作品別に述べられている。
男女共同参画云々と言われて、ずいぶん久しく、そして日本は先進国の中でも男尊女卑がかなりヒドイといわれている。
今なお、ふつうであることが難しいのはどうしてなのか。
いろいろ考えさせられる。そして文学から得られる希望や生きる力というのは結構重要なんだなと、改めて考えさせられた。 -
著者が言う「ふつうのおんなのこ」というのは実際の女の子の事ではなく、経済優先、権威主義の現代社会の中心層である年配男性の対義語としての位置付けで、おかしいと思う事を素直に変だと言える感性を持って生きようというメッセージを感じた。読書案内をしながら、優しい言葉でこれからの社会づくりや生き方を説いているので、中高生ぐらいの子にも読んで欲しいな。もう一度、ハイジやミヒャエル・エンデのモモを読みたくなった。虫愛づる姫の本は現代語訳なのだろうか?
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中村桂子さんが挙げた「ふつうのおんなの子」って誰だろう? 「あしながおじさん」の主人公・ジュディのことばを知り、合点がいかないはずがない。
『人生で立派な人格を要するのは、大きな困難にぶつかった場合ではないのです。誰だって一大事が起これば奮い立つことはできます。また心を押しつぶされるような悲しいことにも勇気をふるってあたることができます。けれども毎日のつまらない出来事に笑いながらあたっていくのは、それこそ勇気がいると思います』
中村さんが、幼少期から親しんだ児童文学のヒロインたちから「ふつうのおんなの子」という生きかたを取りだし、その視点から見えてくる世界と可能性について書いているらしい
目次は
1『あしながおじさん』の女哲学者
2『長くつ下のピッピ』の自由な生きかた
3『やかまし村の子どもたち』のふつうを絵に描いたような日々
4 おんなの子の戦争と平和
5 少女時代に読んだ本
6『若草物語』の四人姉妹
7 ケストナーと子どもの世界
8『モモ』の時間感覚
9『ハイジ』を取りかこむアルプスの自然
10『小公女』の語る力
11『赤毛のアン』を支える人々
12「虫めづる姫君」の観察眼
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しずくさん、コメントありがとうございます。
ジュディの言葉、いいですよねえ。
読んでる私にもそれこそ勇気がもらえました!
また...しずくさん、コメントありがとうございます。
ジュディの言葉、いいですよねえ。
読んでる私にもそれこそ勇気がもらえました!
また、子供の頃読んで以来ご無沙汰だった児童文学を改めて読んでみたくなりました。
この本も爽やかで前向きな気分になれる素敵な本でしたよ。
しずくさんが楽しまれますように・・・!
2019/05/30
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孫引き。
『あしながおじさん』より、主人公ジューディの言葉。
「大事が起これば、ふるいたつことができます。また、心を押しつぶされるような悲しいことにもふるってあたることができます。けれども、毎日のつまらないできごとに、笑いながら当たっていくには・・・それこそ勇気がいると思いますわ」-
孫引きの言葉を教えて下さってありがとうございます! 何でもない普通の生活をエンジョイして暮らすのは本当に難しく大切なことだとつくづく思ってい...孫引きの言葉を教えて下さってありがとうございます! 何でもない普通の生活をエンジョイして暮らすのは本当に難しく大切なことだとつくづく思っていたので、頷かずにはいられませんでした。2019/05/30
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読後感のなんと清々しいこと!
元気と勇気をいただきました。
児童文学好きにとって、登場する彼女たちへの愛情あふれるコメントに何度うなずいてたことか。
そして中村桂子さんの生き方の普通でないけどふつうな生き方。声高には主張しないけど芯を持った生き方に励まされました。
今の嫌な雰囲気の風潮には絶対にNOと言わなければ!