- Amazon.co.jp ・本 (525ページ)
- / ISBN・EAN: 9784478340226
作品紹介・あらすじ
ゼネラルモーターズ(GM)を世界最大の企業に育てたスローンが語るマネジメント哲学。経営書の最高傑作が待望の復刊。
感想・レビュー・書評
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GMを全米に広めた立役者。下請けの部品製造者の社長が合併でGMに入り、社長までになった。経歴はミシュランでタイヤ工場から経営の道を歩んだカルロス・ゴーンと似てますね。ドラッガーが「会社という概念」をまとめる事を許可した。T型フォードを破った。
興味深かったのは、あのGMを始めとする米ビッグスリーと言われる自動車も黎明期はベンチャーのような企業だった事。馬車メーカーが手作りで富豪向けの高級車を作る所から始まり、デュポンの庇護の元吸収合併で大きくなる。それで、当初無定見に種々の自動車を作っていたが、製品ポリシーを決める事になる。
それは、
・すべての価格セグメントに参入し、各価格帯の最上位に車種を投入して、やや背伸びしてでも優れた製品を手にしたいという買い手の心をつかむ。ワンランク上のセグメントからも、「品質の割に価格が安い」と感じた買い手を引き付ける。
というものだった。今からすれば靴メーカーがこれからは複数のサイズを揃えますと誇らしげに述べているような、常識に過ぎない事と思えるかもしれない。
しかし、当時は決して自明の内容ではなかった。フォードは二つのモデル、低価格・大量生産の<T型フォード>と高価格・少量生産の<リンカーン>のみで全市場の50%を押さえていた。ドッジ、ウィリス、マックスウェル(後のクライスラー)、ハドソン、スチュードベーカー、ナッシュ他並み居るメーカーが他のポリシーを土台に存在感を示し、さらなる躍進を期していたのだ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
市立図書館で借りた。
思った以上に緻密に書き込まれていたので、延長しても貸出期間内の読破が難しかった。
中古本でも買うてじっくり読みたい。 -
1.この本を一言で表すと?
・ケーススタディが宝庫の経営書
2.よかった点を3〜5つ
・企業がうまく拡大を続けていくためには、組織を充実させることが欠かせない。しかも、誰もこの重要な点に注意を払っていないのは明らかだった。(P57)
→拡大路線での重要なポイント
・権限の分散と集中をうまくバランスさせ、分権化を進めながらも全体の足並みを揃え続けるのが、優れた経営の秘訣である。(P483)
→これだけの規模の会社を取りまとめられるのがすごいと思います。
2.参考にならなかった所(つっこみ所)
・成功は自己満足を生み出しかねない。すると、競争に生き残ろうとする強い意志、すなわち経済活動を推し進めようとする最も大きな動機が薄らいでいく。変化に逆らって現状を保とうとするため、企業家精神が失われていく。このような傾向が生じると、成長は足踏みをし、衰退への道をたどりかねない。(xxiv)
→これがわかっていてなぜ経営破綻したのか。
3.実践してみようとおもうこと
・特になし
4.みんなで議論したいこと
・GMはなぜ倒産したのか
・名著といえるか
5.全体の感想
・偉ぶらず、傲慢な書き方をせず、淡々と事実のみをつづっているところにとても好感が持てる
・第?部は淡々と歴史だけ書かれた印象で面白味が少なかった
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ボリューム(普通のほんの4,5倍はある)もすごいが、内容もすごい。おそらく経営のケーススタディといういみでは、この本を超える本はないと思う。多少とも経営的視点が必要な人には、必読。ちなみにこの本は、ドラッカーのお勧め本でもある。
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本書はマネジメントの教科書であり、自動車産業の歴史書でもある。ドラッカー氏の推薦もあり、前者に重きを置いて読んでみた。
氏の言う通り、数多くのケースが詰まった良書であり、氏の作品に影響を与えた箇所も幾つかあった。だが、個人的には氏の作品の方が好きだ。
そう感じたのは、具体から抽象を導く文章よりも、その逆の方が好きだからだと思う。また、ケースが自動車に限られており関心分野でないことも挙げられる。
GMの成功理由を突き詰めて二つ挙げるとすると、事業部制と財務コントロールとなる。戦略を機能させるための組織の充実、もっと言えば本社と事業部のバランシング。現状をスピーディーに把握し、直ぐに対処するための財務機能。これを自社に合う形に発展させてきたところに成功があった。
経営者になるためには、後者の素養が明らかに不足している。 -
GMの伝記。中身が深い感覚は受けるが、正直難しい。その時代に近い経営者なら感動も大きいだろうが、今の時代ではどう受け止めてよいか分からない。しかも、この分厚さを何度も読み返したいとは思わない。
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世界最大の自動車メーカーへとその地位を築き上げたGMのCEO、アルフレッド・P・スローン。なんとCEOに就任したのは1923年。90年前というのだからアメリカの自動車産業の歴史の長さには改めて驚きです。
さて、内容については、自伝的なものではなく、自動車産業の歩みとともに得た自身の経験や考えをもとにして、経営を論理立てて述べようとした「経営の書」です。そう言った意味で、冒頭の寄稿文としてピーター・F・ドラッカー、出井伸之の両名があるのもうなずけます。(ちなみに僕が読んだのは2007年発行の第5刷)
具体的には、組織(事業部制含む)、エンジニアリング、デザイン、流通・販売ネットワーク、財務、人事、(海外含む)事業拡大から企業ポリシーの考え方まで、おそらく一産業のすべての領域をカバーしていると言っても過言ではないボリューム(500ページ以上)で、当時の議事録や想い、反省などをベースにスローンの持論が展開されて行きます。
しかも、それらの多くが、スローンが考案・実現したものであり2013年現在でも不変のまま継承されている概念です。
代表的なものでは、自動車の年次モデルチェンジ(モデルイヤー)の導入でしょう。加えて、ブランド別の商品ラインナップの考え方(価格レンジを意識した品揃え、商品間の差別化など)、ディーラーのフランチャイズ経営、在庫管理なども今となっては自動車業界の常識(だがコントロールは難しい、、、)とも言える考え方ですが、これらすべてが(本書に書いてあることが正しければ)スローンによって考案されたものです。
その他にも、海外事業展開や非自動車分野への進出(収益源の多角化)の考え方などは、成熟産業だけでなく、現在のベンチャー企業にも参考になるのではないでしょうか。
量・質ともに、まさしくこれは「経営の書」です。ただし、これらすべてを頭の中に叩き込むのは相当な労力を必要としそうですから、まずは最後の第24章にあるこのフレーズを覚えておこうと思います。
「経営者の仕事とは、方程式をただ当てはめることではなく、その時々の課題に柔軟に対処して行くことである。融通のきかない規則を四角四面に当てはめて意思決定をしても、堅実な判断にはけっしてかなわない。(P.499)」
一方で、先ほど述べたように、スローンが構築した自動車産業における様々なスキームは、この90年間変わっていない、とも言えるでしょう。世界恐慌が起きようが、IT革命が起きようが、グローバリゼーションが拡大しようが、根本的には何も変わっていないと思います。そういった意味で自動車産業を捉えると、これはいったいどんな意味を持つのでしょうか。パソコンや携帯電話などに代表されるような「破壊的イノベーション」の機会はないのでしょうか。
たしかに、自動車は公的な面(道路など国家のインフラとの強い結びつきなど)と私的な面(自己表現、趣味など)を兼ね備えており、ちょうど飛行機と服飾の間のような位置づけの産業なのかもしれないと思ったりしています。どちらも飛行機は飛行機であり続けていますし、洋服は一定のサイクルで流行廃りがありますが、やはり洋服としての機能を超えていないと思います。
自動車という商品そのものには、「破壊的イノベーション」は訪れない、という大胆な仮説は成り立つでしょうか?だとすると、航空会社間での競争環境の変化(例:サウスウェスト航空)やファストファッションの隆盛(ユニクロ、ZARAなど)といったように、ビジネスシモデルや流通網、商品企画といった、商品を取り巻く環境下での変化が想定できるでしょうか。
いずれにしても他の産業でこれだけ環境が変化している中で自動車産業は未だ大きな変化を迎えていないというのはとても興味深いことだと思います。突拍子もないアイデアが突如現れたりするのでしょうか?有志を募ってディスカッションしてみたいですね。 -
「人間」が介在する組織を動かす原理原則は今も昔も変わらない。