社会心理学講義:〈閉ざされた社会〉と〈開かれた社会〉 (筑摩選書)

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  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480015761

感想・レビュー・書評

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  • • 新しい価値やアイディアはなぜ生まれるのか(297)
    -少数派が行使する影響は盲目的な追従や模倣ではない。常識を見直すきっかけを少数派が与え、そこで新しい発見や創造が生まれる(298)
    -閉鎖系として影響を把握する機能主義的発想を脱し、自己言及的な相互作用を通してシステムが変遷する可能性を見据える必要がある。少数派に影響されるとき、主張内容を超えて、背景にあるイデオロギーや人間像も問い直される。多様な見解が衝突する中で、暗黙の前提を新しい角度から見直す契機が与えられる。こうして多数派の見解にも少数派の立場にも収斂されない新しい着想が現れる。社会という開放システムは異端者を生み続けるおかげで停滞に陥らず、歴史の運動が可能になる。
    -イデオロギー・宗教・科学・迷信・芸術・言語・価値・道徳・常識などの精神的産物は、多くの人々のコミュニケーションによって生成される。
    -人間が複数集まって集団を作ると、そこに規範が生まれる。市民全員が同じ考えに染まる完全な全体主義社会でない限り、多数派に従わない逸脱者が必ず現れる。少数派と多数派との対立を通して新しい価値や思考が誕生する(299)

    • 非連続性は連続性の懐から滲み出てくる。知識は開かれた系をなすから。新発見の源は、過去の遺産の周辺部にすでに潜んでいる(300)

    • 国語が人工的に発展させられる事実:日本、フランスにおける標準語化政策、トルコ語のラテン文字採用、イスラエルのヘブライ語(312)
    -初等義務教育制度、戦争中の兵士動員を通して言語の均一化が進む

    • 太古から続く伝統などというものは、たいていが後の時代になって脚色された虚構である。実際に生じた変化、そして共存する多様性が忘却されるおかげで、民族同一性の連続が錯覚される(e.g.スコットランド「伝統文化」)(314)

    • 血縁の連続性も虚構:文化も血縁も実際には断絶がある(314)
    同一性維持の錯覚(317)
    -同一性と変化をめぐる謎:<部分>の変化にもかかわらず、<全体>はそのまま維持される:テセウスの舟
    -形相の連続性を根拠に同一性は保証できない。それ以外の何かが必要になるが、その何かは舟自体にはない。同一性の根拠は当該対象の外部に隠されている。
    -変化が極めて小さければ、同一性が維持されると我々は認識する。もし人間の感覚に探知されない程度の変化が徐々に生じるならば、同一性が中断された事実に我々は「気づかない」(319)
    -対象の異なる状態を観察者が不断に同一化する。これが同一性の正体。時間の経過を超越して継続する本質が対象の同一性を保証するのではなく、対象の不変を信じる外部の観察者が対象の同一性錯視を生む。同一性の根拠は対象の内在的状態にではなく、同一「化」という運動に求めなければならない(320)

  • 全ては人間の相互作用、関係性の中にある。

  • 図書館で借りて一読し、すぐに買った!
    人とは、社会とは、そんな多くのこと自分で考える入口になる本でした。

  • 難しかった。P138で挫折。再挑戦したい

  • 2020.8.22 読了
    社会心理学のテーマに興味があったので読んでみることに。
    非常に濃く、そしてヘビーな内容だった。
    社会心理学の存在意義と分類から定義を行い、やや哲学的な考察を交えて話を進めていく構造。
    自分には哲学的解釈の部分が非常に難解で、一読で理解できるような内容ではなかった。
    深い洞察が多く、自分の読書の力量のなさを痛感することに。
    また機会があれば再読したい一冊。

  • 人間とは何か、考えるとは何かという問いを読者に深く刻み込む

  • なかなか内容が入ってこなかったので超流し読み。評価無し。
    アイヒマン実験と、囚人看守実験、救助/通報行動と居合わせた人数の関係性から見る責任回避行動実験あたりが印象に残りました。
    第12講の生物と社会の本質的な特徴は同一性の維持と変化であるとしながら、変化も同一性も矛盾しながら共存しているのは、どちらも虚構だからではないか(テセウスの舟のような心理現象)という考え方も面白く感じた。
    ※日本人は100年程度で総入れ替えされるのに日本人という同一性を保つという考え方は心理現実とも考えられる。

  • 著者が熱い。社会と心理は切り離して考えられないという主張を支えるように、著者の言葉には魂がこもっていると感じる。人の意志と言われるものは環境の集積によるもの、自由意志による責任は社会が要請しているもの、といった考察が頭に残っている。

  • 私の貧相なボキャブラリーでは、すごい本としかいえない。
    また、今年中に読みたい。
    以下、気になったことば。

    常識を、理論に1人歩きさせる余裕が大切。
    大切なのは答えよりも問い。
    異質性多様性を受けてめる訓練が人文学。
    理論から始める、事実からではなく。
    社会が個人の選択を誘導する。
    結果があり、そのための責任として自由意思がある。
    同質のものの間に差別が生まれる。

  • 人間の判断が、いかにいろいろなものに
    左右されているのか、過去の研究成果を分かりやすく
    説明しつつ、人文科学の研究のあり方、
    研究者の問題意識の立て方などを論じる
    刺激的な書。

    再読したい。

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著者プロフィール

小坂井敏晶(こざかい・としあき):1956年愛知県生まれ。1994年フランス国立社会科学高等研究院修了。現在、パリ第八大学心理学部准教授。著者に『増補 民族という虚構』『増補 責任という虚構』(ちくま学芸文庫)、『人が人を裁くということ』(岩波新書)、『社会心理学講義』(筑摩選書)、『答えのない世界を生きる』(祥伝社)、『神の亡霊』(東京大学出版会)など。

「2021年 『格差という虚構』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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