消費ミニマリズムの倫理と脱資本主義の精神 (筑摩選書)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480017314

作品紹介・あらすじ

行き詰まりを見せる資本主義社会。その変革には「脱資本主義の精神」が必要であり、ミニマリズムにはそこへ通じる回路がある。その原理と展望を示した待望の書!

感想・レビュー・書評

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  • 読み応えあった。ミニマリストなのでよく理解できた。

  • 意欲作で楽しめたが、まだ「消費ミニマリズム」という概念が新しくて定義が確立されておらず、深堀りもされていないので、そういう前提条件の解説とかミニマリズム系界隈の書籍解説が多かった気がする。とくに新奇な話をしているわけではない。題名から察せられるくらいの普通の話を展開している。本書では消費ミニマリズムを反資本主義的立場に位置付けて論考している。

    私見では、消費ミニマリズムは結局のところ貧乏を正当化(=金持ちになるという強迫観念からの脱却など、反資本主義というより資本主義からの逃避など)するツールなのかもしれない。まず格差の激しい欧米先進国からムーブメント、そして今、同じように格差が拡大して国の大多数が昔より貧乏になった日本で着実に根を下ろし始めているというわけだ。

  •  スケールの大きい論が、つまりヴェーバーの『プロ倫』やパレートの『エリートの興亡』のようなsocial science fiction(たしか森嶋通夫の表現)が、自分と同じ時代の人の手で書かれたこと、そして私がそれを読めることが嬉しい。

    【書誌情報】
    『消費ミニマリズムの倫理と脱資本主義の精神』
    著者:橋本 努
    シリーズ:筑摩選書
    1,980円(税込)
    Cコード:0333
    整理番号:刊行日: 2021/06/15
    判型:四六判
    ページ数:368
    ISBN:978-4-480-01731-4
    JANコード:9784480017314

    いくらモノを買っても幸福感は訪れず、世界各地で経済格差が広がり、環境危機が深刻化する―。資本主義社会が直面するこれらの問題を乗り越えるには何が必要か?身の回りのモノを捨て、最小限のモノで暮らすミニマリズムには、資本主義の支配力に抗して新たな文化を生み出す「脱資本主義の精神」に通じる回路があるという。今も圧倒的な支配力をもつ資本主義の「魔法」から抜け出すべく、「消費ミニマリズム」を多角的に検証し、その可能性を論じた画期的な思想書である。
    https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480017314/

    【メモ】
    ・「はじめに」から一節だけ抜粋する。
    "……本書で扱うミニマリズムは、プロテスタンティズムと比べるならごく小さな運動にすぎないが、私はこの同時代のミニマリズム現象が、現代の資本主義の解明にとって重要であると感じている。現代資本主義を解剖するための一つの現象として、私はミニマリズムに関心を寄せている。……"


    【簡易目次】
    目次 [003-006]

    はじめに 009

    第1章 消費ミニマリズムの流行とその背景
    1‐1 消費ミニマリズムの時代 018
    1‐2 主要な背景的要因 027
    1‐3 背景にある社会変容 035
    1‐4 考察 039

    第2章 消費社会とその批判
    2‐1 ロスト近代がやってきた 044
    2‐2 ポスト近代社会は批判されてきた 052
    2‐3 富を獲得することのバカバカしさ 065
    2‐4 消費社会に代わる理想とは 072

    第3章 正統と逸脱の脱消費論
    3‐1 文化から仕事へ 089
    3‐2 心理学と文化人類学の視点 104
    3‐3 逸脱と新たな正統① ──精神・自然・環境 113
    3‐4 逸脱と新たな正統② ──価値の創出・土着の発見 126
    3‐5 逸脱と新たな正統③ ──幸福、快楽、上位文化 132
    3‐6 複雑な問いをシンプルにする 150

    第4章 ミニマリズムの類型分析
    4‐1 ミニマリストの台頭 154
    4‐2 ミニマリストの位置 168

    第5章 ミニマリズムの倫理
    5‐1 幸福になるための実験 182
    5‐2 保守回帰 199
    〔コラム〕 文豪たちのミニマリズム 211
    5‐3 脱資本主義的な自己実現 212
    5‐4 自己との和解 241

    第6章 ミニマリズムと禅
    6‐1 欲望の愚かさについて 264
    6‐2 禅に向けて 271
    6‐3 禅の思想 278

    第7章 資本主義の超克
    7‐1 オルタナティブなき批判 291
    7‐2 代替システム 301
    7‐3 電脳技術の可能性 310
    7‐4 精神の拠点 318

    あとがき [331-332]
    注 [333-354]
    参考文献 [355-366]

  • つながり:
    『サスティナブル主義 5%の「考える消費」が社会を変える』


    行き詰まりを見せる資本主義社会。その変革には「脱資本主義の精神」が必要であり、ミニマリズムにはそこへ通じる回路がある。その原理と展望を示した待望の書!

  • 爽やかな雰囲気漂う表紙と興味をそそるタイトルに惹かれ手に取った.悪い意味で「タイトル通り」の本である.

    数々のミニマリストやそれと同じ精神性を持ち生活を営む人を多数取り上げながら,その姿勢,ミニマリズムが資本主義の束縛から逃れるチャンスであると解く.

    この本の特徴的なところはミニマリズムを鳥瞰的に説いているところだ.ミニマリストや関連性が高い領域の活動家による著作を取り上げ,どういう内容でどういうメッセージがあるかを筆者が紹介する.
    簡単に言えばミニマリスト本をひたすら紹介する本なのだ.
    ミニマリズムってなんだろうかとざっくり・客観性を持って把握するにはいい本だと思える.

    ただ,正直この取り組みは面白みに欠ける.
    ミニマリスト本の面白いところは書かれた内容がまさに著者の実践,身銭を切った体験から紡ぎ出されているという点で独自性や効果,一般読者が受ける衝撃が担保されているが,それら鳥瞰するこの本には自らが身銭を切るという姿勢を感じない.
    そのため導き出される結論やメッセージもせいぜいオリジナルと並ぶか,それを一般化して抽象的にした言い換えたものにしか聞こえない.

    この本の中で紹介されているミニマリスト本を何冊か読んだことがあり,それをできる範囲で実践し有効性を感じていた自分からしたら,資本主義(勤労と消費の無限回転)とは異なったオルタナティブな選択,位置づけとしてミニマリズムを強調されても「今更感」が拭えない.

    =======================


    鳥瞰的

    ミニマリスト系の本を何冊か読んだことがある自分にとっては
    「今更感」がある.その「今更感」を仰々しい表現で飾って出来上がったのがこの本かなあという印象.
    世代的なものもあるかもしれないので昭和の価値観に染まったおじさんみたいな人には新鮮かもしれない.
    感覚でわかっていることを上手く言葉にしてくれていとも言える。

    資本主義社会における支配的な思想
    「よく働き、よく消費しろ」
    →息苦しい思いをしてまでこの文化に従う必要はあるのか?


    "ミニマリズムの実践が、欲望消費によって駆動される資本主義から降りる企てに接続られるように見える"

    現象・理論・精神

    日本語のときめき=英語訳でSpark joy(こんまり本)

    記号の消費
    物質消費から記号の消費

    「電通戦略十訓」

    「自分へのご褒美」っていつからあった風習?

    ビックリマンチョコが売っていたのはチョコでもシールでもなく物語
    →と、コルクダブル性?

    物質ではなく情報を消費する社会

    勤労の美徳と他者の視線を敏感に感じ取りながら営まれる顕示的消費が次第に評価されなくなる

    資本主義の倫理は禁欲から創造へシフト
    ウェーバーの時代は職業を通じた禁欲生活
    現代は創造できるものが資本主義を発展

  • ミニマリズムの生き方がいろいろ紹介されてて面白かった。また脱資本主義の解説も勉強になった。確かに勤勉に働くこと、貨幣で買えるものに価値を見出すことから見直す必要がある。
    作るという行為の大事さもあったな

  • 系・院推薦図書 総合教育院
    【配架場所】 図・3F開架 
    【請求記号】 331.1||HA
    【OPACへのリンク】
    https://opac.lib.tut.ac.jp/opac/volume/455943

  • [脱資本主義の精神]=資本主義を活性化させないための消費
    ・ミニマリズム的な生活だけではだめ
    ・勤労倫理と快楽消費をやめる
    ・稼いだお金を「資本の支配力」を削ぐ方向へ
    ・資本が一部の人へ集まらないようにする消費

    [具体的行動]
    ・余暇の時間を地域的なコミュニケーションに使う
    ・経済的自由主義(メルカリなどの資本が少ないビジネス)
    ・リベラルな福祉国家
    ・ディープエコロジーの立場(自然の恵みだけで生活する)


    [ミニマリストの目的のひとつ] =自己実現
    ・身の回りの不要なものを捨て、自分にとって本当に価値があるものを見つけ、それに時間と情熱を投資すること。

  • 東2法経図・6F開架:331.1A/H38s//K

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著者プロフィール

橋本 努(はしもと・つとむ):1967年、東京都に生まれる。横浜国立大学経済学部卒業。東京大学大学院総合文化研究科課程単位取得退学。博士(学術)。現在、北海道大学大学院経済学研究科教授。シノドス国際社会動向研究所所長。専攻は社会経済学、社会哲学。主な著書に、『自由原理――来るべき福祉国家の理念』(岩波書店)、『解読 ウェーバー『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』『経済倫理=あなたは、なに主義?』(ともに、講談社選書メチエ)、『自由の論法 ポパー・ミーゼス・ハイエク』(創文社)、『帝国の条件 自由を育む秩序の原理』(弘文堂)、『自由に生きるとはどういうことか 戦後日本社会論』『学問の技法』(ともに、ちくま新書)、『消費ミニマリズムの倫理と脱資本主義の精神』(筑摩選書)など多数。

「2024年 『「人生の地図」のつくり方』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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