泥の河・蛍川・道頓堀川: 川三部作 (ちくま文庫 み 3-1)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 38
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  • Amazon.co.jp ・本 (403ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480020338

感想・レビュー・書評

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  • ずっと買ってあって置いてあった本。なぜか手元にあり、一度読みかけて勢いがつかなくてやめたのが、寝る前の本にと読む。読んでいくとゆるやかに川の流れがあって、昔教科書や国語の試験で読んだ物語文を思い出した。

    寝る前に読むにはつい読んでしまうけどほどほどの長さの話だったので読みやすかった。
    解説まで読んで、父3部作という感じを受けた。大阪に住んでいるので言葉遣いや場所が出てきて親しみがあった。

    青年の目覚めのような作品はまたそれか、と思うような感じがあるが、初期の作品ということでそれならそうか、とも納得する。だんだん主人公の青年が年が上がっていくので成長するように読めた。解説で何回も書き直したり、ヒントを得るために別の作品を書いたりしたとあってなるほどと思う。

    宮本輝さんというと、何かのテレビかで自分の書いた本を発作的になってビリビリに破いたことがある、と言ってたのを思い出す。何度もそのことがちらつく。一度でも納得できた作品が世に出せてよかったと思う。

  • 三部作とも その時代や背景をとても感じる作品。特に,螢川は わかりにくかった。短い話なのに、なんだか入ってこなくて、理解不十分な自分が情けなかった。泥の河のせつなさ、道頓堀川の父子の情。この時代だから描ける情景が、心にしみる。

  • 「泥の河」
    戦後の日本。昭和30年代の大阪。病人の主人公のために父親は空気の良い新潟に静養のため引越しをするという話。続きをまた読みたいなと思わせる話ですね。

    「螢川」
    終盤の蛍の光景は素晴らしいものであろう。
    結局は、大阪に行ったのだろうか?とその後を想像させられる。

    「道頓堀川」
    長編でしたが読み進めていくと面白くなる。
    大阪の戦後の闇市があるようなドヤ街〜昭和30年代頃のお話。
    主人公の武内がビリヤードでプロ級の腕前をもつ。今は、喫茶店の店主をしている。妻と店をやっていたが、ビリヤードのすれすれの生活にのめり込むと妻と息子の政夫は家から居なくなる。いろいろあって戻っては来るが妻は亡くなってしまう。
    その事があったことを抱えつつもそれでも生きている。また、同じ血筋は争えないようで、政夫もビリヤードに目覚めてプロを目指すという。
    親子の真剣勝負が始まろうとしている。

  • 三部作を通して見てみると、どれもひんやりとした死の匂いがする。だからこそ、その裏返しで「生」が熱を帯びた動的なものになる。哀しさの中にあっても前を向いて生きていく、静かな力強さを感じる。

    人間の感情と関係の描き方、情感鮮やかなクライマックスへ向かうストーリーのもっていき方、土の匂いや太陽の熱までも感じさせられるような表現の豊かさには、感動さえ覚える。
    けれど、それと好きかどうかは別だ。好きかどうかと言われれば好きではないのだが、緻密で重厚で素晴らしい作品だと思う。

    特に印象に残った「泥の河」
    子ども特有の繊細さや危うさ、貧困と倫理、そして大人の性を一つ一つ浮びあがらせていく筆致に、気づけば作品の世界にのめりこんでいた。青く燃える蟹と、波打つ男の背中が目の前に浮かぶ。
    これがデビュー作、当時著者は(計算上)30歳であったことを思うと、この表現力と構成力はさすがと言うほかない。

    レビュー全文
    http://preciousdays20xx.blog19.fc2.com/blog-entry-491.html

  • 初めての宮本輝です・優しい文章を書く人です。とても読みやすい。女性のようなロマニズム
    3部とも親と子供が登場し、子供は常に親の奔放さの前に犠牲者。そこが読後感を悪くする。自分の読解力を棚に上げて物申せば、話の落とし方が分からない。何が云いたいのか判らない。人生色々って事か?!

  • 日本語、という言葉の美しさを感じる。(経験したことはないのだけれど)戦後の土臭さ、人間関係の泥臭さが細部に丁寧に表現されている。

  • 太宰治賞や芥川賞を受賞した川三部作。時代背景が戦後まもなくなので、しっくりこないところも多々あるけど、人と人とのつながり方は今も昔も同じみたい。家族や夫婦、友人あるいは赤の他人。そんな人間関係がとある河の見える場所で繰り広げられる。最近こういう私小説なノリの本とはごぶさただったけど、読める。グッとくる。

  • 久しぶりに小説を読んだって感じ。昔の街の空気と人間臭さに圧倒された。

    ただ、主人公たちが子供~青年で、読者の自分は少し客観的な立ち位置に留まる。もっと若い時に読むべきだった(・・;)

  • 『春情蛸の足』に続いて、大阪弁の小説でした。なんかやっぱり不思議な感じ。
    道頓堀川が一番面白かったかな。

  • だいぶ昔に読んだので忘れてもうた。

著者プロフィール

1947年兵庫生まれ。追手門学院大学文学部卒。「泥の河」で第13回太宰治賞を受賞し、デビュー。「蛍川」で第78回芥川龍之介賞、「優俊」で吉川英治文学賞を、歴代最年少で受賞する。以後「花の降る午後」「草原の椅子」など、数々の作品を執筆する傍ら、芥川賞の選考委員も務める。2000年には紫綬勲章を受章。

「2018年 『螢川』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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