ねぼけ人生〈新装版〉 (ちくま文庫)

著者 :
  • 筑摩書房
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本棚登録 : 429
感想 : 57
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480034991

感想・レビュー・書評

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  • 生前に購入はしていたけど、逝去を期に読了。そこかしこの表現から窺われる、氏のあっけらかんとした死生観が、実際の戦争で生死の境を体験したからこそ、本当の声として感じられる。そんな氏だから、きっとその最期も淡々と、人生はそんなもんだとして旅立たれたんだろうなと愚考します。左腕を失った詳細とか、鬼太郎とか悪魔くんの誕生秘話とか、ファンとしてはそれだけでも十分に楽しめる内容がてんこ盛りでした。このタイミングだからって訳でなく、純粋に高品質な作品として楽しむことが出来ました。
    幼少時、鬼太郎を通して妖怪の魅力にとり憑かれ、妖怪図鑑を片端から買ってもらって貪り読みました。アニメにも釘付けで、どうしても放送が見たいのに、塾の時間が重なって何度も涙を呑みました。30過ぎてから、思い余って境港まで一人旅もしました。人生を豊かにしてもらったことを、本当に感謝しています。
    ご冥福をお祈りします。

  • 追悼読書用に。
    南伸坊の装画のとぼけた味わいが好き。
    生い立ちから漫画家として人気がでるあたりまでの自伝は「ほがらかなニヒリズム」という呉智英(解説)によるキャッチフレーズがまさにぴったりで、ワイルドな子ども時代、怒涛の戦中・南方従軍、戦後漫画で暮らし始めるもある意味戦中よりもつらかったという食うや食わずの極貧生活を経て、ついにはアシスタントを何人も抱えて締め切りに追われる売れっ子になって南方を再訪問できるほどになったところまでがおもしろく語られている。

    昔のこどもたちってワイルドだったんだなあ、ガキ大将集団ごとに縄張りがあって木箱の戦車で石を投げ合うとか…
    そしてテレビもラジオもなかった時代だからこそ村の運動会のような行事でいまのオリンピックも顔負けの大盛り上がりだったとか、さもありなん。
    けっきょく水木御大は子ども時代からずっと、いつも妖怪やあの世と地続きのところにいたのだなあとあらためてよくわかった。

    読んでいる最中に天皇陛下のフィリピン訪問があって、戦中戦後のフィリピンと日本に関する記事が相次いだり、お別れ会が開かれたというニュースを聞いたり。京極夏彦さんや荒俣宏さんの音頭で妖怪尽くしのたのしいお別れ会だったのも、本の内容と語り口から伝わってくる裏表ない実直さで慕われる水木さんならではと改めて思った。

  • 水木しげるの自伝(と言っても30年前までの)。墓場鬼太郎の暗さとユーモアが好きで漫画を買い集めたりしたけど、その生い立ちを知るのは初めてでした。とにかく明るく前向きな性格!読んでいてとても元気になれた。戦争時、南方で死の淵をさまよい片腕をなくす体験をするも、持ち前の性格で土人と仲良くなり日本へ帰るなと泣かれるほどに彼らの輪に入り込む。なんて面白い人なんだ!こんな朗らかで呑気な人があんなに陰気な漫画を描いてたとは驚きでした。

  • 水木しげるさん最高。
    ご家族、周りの友人・知人・仕事仲間等々、変わった方々が多くて面白い。戦争に行くにあたっても極度にリラックスしていてすばらしい。

    ほかの関連する本も読みたくなった。

  • こんなに読み終えるのが惜しい本に出会ったのは、久しぶりだ。
    『ゲゲゲの鬼太郎』でお馴染みの漫画家水木しげるの波乱万丈の人生を本人がのんび~りと苦しい時も前向きで、次から次へと起こる事件を可笑しくてゲラゲラ笑って、そして最後は涙する名著。
    この本は4つの章に分かれている。
    1章では、子供時代のガキ大将で皆をまとめた時代。
    2章から大人の時代だが、左腕をラバウルで失うことになる辛い話で輸血の血液型を間違えそうになり、もう少しで命を失いかけたこともあった。
    この戦場での経験が、のちの傑作『ゲゲゲの鬼太郎』を創作したキッカケではないだろうかという勝手な想像だが、こういう面白い出来事がある。
    ラバウルでの日本兵は空腹で動けなかった。
    しげるは、ある日、現地の土人の小部落を見つけた。
    そこは、「天国の部落」であった。
    南国の景色も綺麗で、女性も綺麗だし、さらに美味しそうなパンの実を焼いていた。
    なんと、しげるはピジン語(土着語と英語の混合語)のカタコトで土人の少年と会話した。
    お腹が空いていることをアピールして、食事をご馳走になり、2人分を食べてしまった。翌日、御礼にタバコを持っていったら喜ばれ、更に仲よくなっていく。
    終戦になり、日本に帰るころには、土人ともすっかり仲よくなって、このまま、ここで生活しようかと考えたりした。しかし日本に帰る決心をするが、7年後に又再会することを約束した。
    3章は、日本に戻って、漫画を始めるまでに、紙芝居をやったり、貸本屋をやったりして、本当に喰えない貧乏時代の話。この部分の話が、NHK朝ドラで話題になった、『ゲゲゲの女房』の奥さんからの視点で書いた自伝が面白いだろう。
    そして、最後の4章が『ゲゲゲの鬼太郎』のヒットで超多忙の時代。
    最後の部分で涙するエピソードが用意されている。
    本当に、おススメの本だ。

  • BSフジ「原宿ブックカフェ」のコーナー「ブックサロン」で登場。

    ゲスト 弟・久住卓也さんの人生を変えた一冊。

    「もうこれを読んだ途端に、今に至る『水木しげる門』が、バーーーっと開けたような本ですね。ゲゲゲゲゲと笑。」(久住卓也さん)



    原宿ブックカフェ公式サイト
    http://www.bsfuji.tv/hjbookcafe/index.html
    http://nestle.jp/entertain/bookcafe

  •  長年の貧乏の方が、半死半生の目にあった(著者はニューギニア戦線で片腕を失っている)戦争よりも苦しかった、という一文が重い。

  • 鬼太郎他、たくさんの漫画を残した(とはいえ、2014年現在まだ現役ですが)水木しげる先生の自伝。子供の頃のガキ大将の逸話~戦争で腕を失う~戦後の混乱とマンガを始めるというあたりを、珍しくイラスト抜きで書き上げている。
    とはいえ、たくさんの水木作品や自伝的漫画を見てきたので、それぞれのシーンが自然とあのタッチで頭のなかに再構成されていくのである。ただ、40歳で結婚ということだけど、NHKのあのドラマでは、もっと若かったんちゃうかったっけ?とちょっと疑問になったりもする。
    文体は漫画のザクザクとしたキレとはまた異なり、若干ねちっこくて、最初は面食らう。そこを乗り越えればそれなりに楽しめるだろう。ただし、水木作品を好きな人であれば、という大切な前提を最後に記しておきたい。

  • 新潮文庫『ほんまにオレはアホやろか』とかぶる。こっちは文字数が多く、いろいろなエピソードが細かく描かれていて良い。水木しげるは変人ぽいけど、言動はまったくおっしゃる通りで、いい具合にクールで、いい具合に情熱的で、疲れたときに読むと、ホント癒されます。

  • 文字通り、波乱万丈な人生をつづったエッセイ。
    こういう生き方は、現代ではなかなかできない。
    時代の違いもあるし、戦争の存在も大きい。
    困難も多いが、口調はからりとしている。
    筆者の人柄が感じられる。
    http://koroppy.cocolog-nifty.com/blog/2013/04/post-8e1b.html

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著者プロフィール

1922年(大正11年)生まれ、鳥取県境港市で育つ。太平洋戦争時、ラバウル戦線で左腕を失う。復員後、紙芝居画家を経て貸本漫画を描き始め、1957年『ロケットマン』でデビュー。以後、戦記もの、妖怪ものなど数多くの作品を発表。1965年『テレビくん』で第6回講談社児童漫画賞を受賞。1989年『昭和史』で第13回講談社漫画賞を受賞。1991年紫綬褒章受章、2003年旭日小綬章受章。主な作品に『ゲゲゲの鬼太郎』『河童の三平』『悪魔くん』『総員玉砕せよ!』『のんのんばあとオレ』など。2015年11月死去。

「2022年 『水木しげるの大人の塗り絵 あの世紀行』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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