遠い朝の本たち (ちくま文庫 す 14-1)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 75
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480036285

感想・レビュー・書評

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  • 本が大好きだった著者が子供時代に出会った本たちをエピソードと共に紹介。
    静かで美しくゆったりした時間という印象。
    子供の頃大好きだった本、大草原の小さな家シリーズを思い出した。
    人生に影響を及ぼした本が私にはどれだけあるだろうか、、そんなふうな本の読み方をしたいと思える本でした。

  • 読んだ本を思い返すことは、その時の自分の思い出を手繰ることなんだと教えてくれる。
    美しい言葉で語られる情景は素晴らしく、読んでいると須賀敦子さんの思い出に入っていくようです。

  • サンテグジュペリの「人間の土地」が出てきたりして、ものの見方とか、絆とか、そういうものも考えさせられました。須賀さんて、いい本を読んでるんだなあ・・・というより、いい本を見つける力があるんだろうなぁ。私はいい本だと気づかないまま、その本をブックオフにやってるんだと思うとちょっと反省。

  • 本好きのための本。読書の習慣があれば同じ体験をした記憶がきっとよみがえる。
    若い頃の本との出会い。本に関わる友人との巡り会い。それにまつわる記憶。
    それらをすべて抱えて生きていくことの覚悟。読書する幸せを実感できます。

    著者の須賀敦子は漱石、鴎外、谷崎、川端など日本の近代文学をイタリア語に翻訳されています。
    日本での文筆業としては遅咲きで、晩年のわずかな期間に残した随筆は、
    うっとりするほど美しい文体、優しくも圧倒的な文章です。

  • ぐっぐっと何か力をいれながら書かれているようで、
    ひとつひとつ選び抜かれた言葉が重い。

    はじめとおわりが、著者の友人じげちゃんの昇天。
    やさしい言葉と、正直なことばでかかれているから、
    なんだかとても心にしみて、
    ついうるうると来てしまう。

    著者の読書歴を垣間見ると、自分は読書好きではあるけれど、読書家ではないと思い知らされる。
    父親との本でつながれた関係には自分を重ねたし、
    本を通じて「あの時の自分」を手繰り寄せられるのは
    うらやましくて、自分も将来そういう風にできような
    そういう読書をしているかと問うてみることにつながった。

    私の好きな米原万里も、須賀敦子も、
    自分の昔を振り返って「少女時代」という言葉を使うが、私は自分の幼いころをどうしても「少女」という言葉で捕らえられなくて、すごく新鮮だった。
    私もいつか、自分の昔を「少女」として受け止めるのだろうか。


    「そのために自分が生まれてきたと思える生き方を、
    他を顧みないで、徹底的に探究する」というくだりに
    線を引いた。


  • 須賀さんの本、初めて読みました。
    わかりやすく、すっきりとしていながら、やわらかく情景が浮かび上がってくる文章に心が震えました。

    見たことのない情景が、目にも心にも浮かぶように感じました。
    時を超える感覚が新鮮で、もっと他の本も読んでみたくなりました。

  • 文章のもつすべての次元を、ほとんど肉体の一部としてからだのなかにそのまま取り入れてしまうということと、文章が提示する意味を知的に理解することは、たぶんおなじではないのだ。
    幼い時の読書が私には、ものを食べるのと似ているように思えることがある。多くの側面を理解できないままではあったけれど、アンの文章はあのとき私の肉体の一部になった。
    いや、そういうことにならない読書は、やっぱり根本的に不毛だといっていいのかも知れない。

  • 何よりもまず人間。

    詩と自然にひたりたかった私が、なによりもまず人間,というフランスやイタリアのことばに,さらにこれらの国々の文学にのめり込んで、はては散文を書くことにのめりこんでいったのが、ふしぎな気がする。p206
    と、かいておられる。須賀敦子さんの、子ども時代学生時代を振り返る本書を貫くのは、読んだ本,作者やその登場人物、行動から本能的に,そして本質的にかぎとり、受け止めてきた、何よりもまず人間ということ。

    サンテグジュペリの,人間の土地。飛行機とともに、われわれは直線を知ったという文章がある、と、須賀敦子さんは引いている。牛や羊に依存していた人たちによって作られた、くねくねと曲がった道をたどっていた時代の社会通念と、都市と都市を直線でつなげることを知った空からの視点を人間が手に入れた時代のそれとは大きく変わるはずだと言う事をこの短い文章は指し示しているが、これは宇宙飛行士の視点に通じるものに他ならないだろう。空から地球を見るようになって、と、サンテグジュペリは、書いている。私たちは、(… )宇宙的尺度で人間を判断することになったのだ。人間の歴史を(もう一度)さかのぼって読むことになったのだ。
    という須賀敦子さんの文章,は、飛行機により新しい時代新しい尺度新しい人間性を大いに期待しながらも、飛行機により戦争やさまざまな,今ならCO2エミッションなどの厄災ももたらしてきた、インターネットがウェブやコンピュータの登場も当初はなんら同様の直線化による無限の可能性無限の新尺度を期待させながらも、新しき良き時代だけではなく、飛行機でもないさらにドローンなるもので人間も土地も破壊できるようになっている,そんなことを思いながらも、なによりもまず人間なのだという須賀敦子の一貫したよりどころに、救済される。

    冒頭と最後の、しげちゃんのこと。くらい戦争の時代を、精一杯カラフルに生きようとし、くらさや嘘,欺瞞、偉そうな感じ,排除やきなくささに敏感になりながら自由自分らしさを求めて生きたおふたり、そこにつながるリンドバーグと一緒に飛行機で冒険したアンモロウリンドバーグの、世界を空から見る目線と,庭に咲く草花や木の芽をありのままに捉える目線。
    須賀敦子さんならではの筆致,圧巻と感じるのはやはりイタリアのシエナの坂道の章,シエナの聖女カテリーナとの邂逅。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/764245


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著者プロフィール

1929年兵庫県生まれ。著書に『ミラノ 霧の風景』『コルシア書店の仲間たち』『ヴェネツィアの宿』『トリエステの坂道』『ユルスナールの靴』『須賀敦子全集(全8巻・別巻1)』など。1998年没。

「2010年 『須賀敦子全集【文庫版 全8巻】セット』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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