現代語訳 武士道 (ちくま新書)

  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480065650

感想・レビュー・書評

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  • 新渡戸稲造が欧米人に対して、日本文化を紹介。
    同時に、欧米人が抱いていた日本人のイメージを払拭する。

    いわゆる「武士道」の名誉、公正さ、優しさ、実直さなどを、義、仁、智などの項目ごとに解説。
    切腹や人斬り、男尊女卑、金銭への疎さなど、一見すると野蛮とも未開人とも取られがちだった風習も、その根底にある精神や、同時に発揮されてる別の特質なども解説して誤解をとこうとしていた。

    もちろん、刀を何よりも大切なモノと思い、主君への忠義を尽くし、武士の情けをかける、といった理想論すぎる武士道であって、現実の社会ではその権力を乱用した武士のほうが多かっただろうが、真髄はたしかに素晴らしいものだと思う。
    聖書の知識があると、時折引用されるキリスト教的な考え方との比較がより一層わかりやすい。

    勝ち組負け組、欧米追従、他責的、利己的な考え方の多い現代には、なおのこと広まればいいなと思った。

  • 新渡戸稲造が本著を記すきっかけとなった出来事のひとつとして、西洋人から宗教教育のない日本でどうやって道徳教育が授けられるのかと問われ、即答できなかったことが上げられている。よって本著は、開国間もない日本・日本人とはかくありなんということを西洋人に誤解無く認識させることを目的としている。

    どんなに世の中のスタンダードが西洋近代化していても、どこかすんなり受け入れ難く感じる事があるのは何故か。それは私達が、自分でも意識しない心の奥底に武士道の精神を携えているからではないか。
    こうした点から、本作は西洋人だけではなく現代の私達自身が、自らの持つ道徳観念の由来を知る手掛かりにもなる。

    武士道が表立って日本人の精神論として語られないのは、武士道そのものが沈黙や謙遜を美徳とし、多弁を好まなかったから。だからといってそれが現代の価値観に合わないとは私は思わない。誇るべきところは誇り、学ぶべきところは学ぶ。その柔軟さは必ず真理をつく近道であり、また真理はいかなる価値観や精神にとっても近しいものだと思うから。

  • 「口開けて腸(はらわた)見せる柘榴かな」SNS全盛のいまの時代、新渡戸稲造にはどう映っているのだろうか。しゃべること・話すこと・書くことも、刀を濫用するがごとし。刀の正しい使いどきを理解する意味でも、武士道、騎士道、ノブレス・オブリージュ、いつでも頭の片隅にに置いておきたいものである。

  • 現代語訳ということでとても読みやすく(他のものと比べていないのでどれほど読みやすいのかは分からないが)、章ごとに分かれていてその一つ一つも長くないため、これほど読みやすい本だったのか、というところにまず驚かされる。
    訳と解説をされた山本先生の言うとおり、この本は武士がどのような性質をしていたのか、という本ではなく、日本文化論を外国に紹介した本である。
    今の日本人にも受け継がれている特有の考え方や礼儀作法などの原点でもあり、しかもその良き部分を忘れてしまいそうになっているものが盛り込まれている。
    この本を読みやすく感じ、しかも現代の我々が共感できるのは、元々諸外国への日本人気質の解説であるので、その諸外国に存在する思想などを引き合いにしている点と、何より新渡戸稲造が日本人は偉いだとか優れているという目線ではなく、あくまで対等に、そしてこの武士道精神には欠点もあるという描き方をしているからだと思われる。
    この訳であればかなりわかりやすいので、ぜひ中学生の道徳や社会でも教科書としてほしいくらいの内容である。

    内容については時々わかりにい箇所はあるものの、取り上げるときりがないいい言葉が並んでいる。

    個人的に特に気に入ったのは、まず、知識に関してこの時代に既に知識そのものを身につけているだけでは役に立たず、それらを実際に応用することが重視されていたこと。
    戦後の受験競争で詰め込み教育になってしまい、最近になって応用力などと言われ始めているが、その重要さは実はかなりの昔に既に分かっていたことだったとわかり、恥ずかしくなってくる。

    もう一点強く印象に残った箇所は、トーマス・ブラウンの著にが日本の武士道に通ずる記述がある、として引用している、「生が死よりもさらに怖ろしい場合は、あえて生きることが真の勇気である」という箇所。
    切腹=自殺であるが、軽々しくされたものではない、という説明に使われており、現代日本の自殺率の高さにここから我々が学ぶべきことがあるのではないかという気にもさせられる。

    全体ではないが、リーダー論、部下論に通ずる箇所もあるので、下手な自己啓発書を読むよりはこの本を一冊読んだほうがよっぽど役に立つと思う。

  • 世田谷ビジネス塾の課題図書。
    課題図書にならない限り自分では手に取らない種類の本。

    今まで自分の性格と思っていたことが、実は武士道の影響を受けて日本人に染み渡った価値観に基づいていると解った。

    ・武士道では、知識の獲得は目的ではなく、知恵に至るまでの手段であるとした。(p32)
    ・孟子は「お前が裸になって私を侮辱しても、私は何とも思わない。お前の無礼で私の魂を汚すことはできない」と書いている。小言に怒るのは君子の恥じるところ、と。(p92)
    ・熊沢番山は「人が咎めても咎めまい。人が怒っても怒るまい。怒りと欲とを捨ててこそ、常に心は楽しむのだ」と言い小川立所は「人が悪口を言うのに逆らわず、自分が信頼されないことを反省せよ」と言った。(p92)

    命が名誉より安価なものとされた数々の事実は、現代人には受け付けれないが、いかに武士道の礼や義が今も日本人のDNAに刻まれているかを思わされた。

    ★読書会での意見
    ・現代から言うと、昔の女性(妻)は権利がないように言われるが、家庭を守り抜くという分野では実権を握っていた。
    ・夫が妻に稼いだお金を渡すのは、世界でも稀、江戸時代からの習慣。
    ・「自分よりまず人を助ける」「笑顔を絶やさない」は、日本人が3.11の際に世界から評価されたこと。
    ・武士道は漢字1字で示されていて、向かうところがわかりやすい、シンプル。
    ・今にも受け継がれている点: 土下座、礼儀、いただきます、などちょっとした儀式が多い。
    ・血なまぐさい背景から武士道は生まれたが平和を理想としている。

  • 思っていたよりも大変読みやすい本だった。
    高校生でも十分読めそう。

    新渡戸稲造が、欧米人に日本人のことを分かってもらいたい、野蛮な国だという誤解を無くしたい、という気持ちで
    武士道の観点から日本人の習慣や文化、倫理観等を英語で解説した本を、
    日本語に訳し直した本。

    読んでいて、欧米人にこんな誤解をされているからこんな風に弁明しているんだろうなーというのが分かりやすくて面白かった。

  • 願わくば、われ太平洋の橋とならん
    教育者にして世界的ベストセラー、武士道の著者であり、国際連盟の事務次長ともなった新渡戸稲造。

  • 内容が難しくて読むのに時間がかかった。日本人の道徳感、日本的思考の源泉の武士道をなんとなく理解した。贈り物を渡すときに謙遜して言う「つまらない物ですが」も逆に失礼という風潮もあるけど悪いものでもないなと思えた。それにしても僕には武士道は残ってないなぁ…。

  • …ぱねぇっす。

  • 岩波文庫の「武士道」と比べたわけではないが、こちらの現代語訳の方が分かりやすい気がする。
    とは言っても新渡戸博士の縦横無尽な“博学”についていくことは難しい。
    ただ、100年以上前に書かれた日本人論、日本文化論は現代でも色あせないし(時代の限界はあるが)、忘れてはいけない魂がある。
    継続して読み続けていきたい。
    ちなみに本書は15歳の長男の誕生日に贈ったもの。

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著者プロフィール

1862年南部藩士の子として生まれる。札幌農学校(現在の北海道大学)に学び、その後、アメリカ、ドイツで農政学等を研究。1899年、アメリカで静養中に本書を執筆。帰国後、第一高等学校校長などを歴任。1920年から26年まで国際連盟事務局次長を務め、国際平和に尽力した。辞任後は貴族院議員などを務め、33年逝去。

「2017年 『1分間武士道』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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