日本の国境問題 尖閣・竹島・北方領土 (ちくま新書 905)

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  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (231ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480066091

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  • ■領土問題

    1.北方領土は「歴史問題」が主であり、竹島は「政治問題」、そして尖閣諸島は「資源問題」。

    2.北方領土を実効支配している国はロシア。だから、ロシアは交渉に応じ、日本は四島の領海に漁船などを乗り入れない。
    竹島ですと、現状を変えようとする国は日本では実効支配している国は韓国で、日本は竹島に一方的に物理的に近づくことはしない。
    そのかわり韓国は、「領土問題が存在しない」という態度を変えて、話し合いに応じなければならない。
    尖閣諸島は日本が実行支配している。中国は尖閣諸島付近に侵入することはやめ、日本政府は「尖閣諸島に関する領土問題は存在しない」という態度を変えて話し合いに応ずるべきである。

    A.国境問題がある島について日本の固有の領土ですか?の質問には、約9割がそうだと答える。
    しかし、国境問題のある島がいつから日本の領土になっているか問われて、ほとんどの日本人は応えられない。

    B.人間の行動を実験するわけにはいかない。
    歴史こそ実験室と言える。歴史だけが人間、社会の行動の広範な証拠を提供してくれる。

    C.国境問題があったとき、関係国の全ての人が、紛争を円滑に収めようとする訳ではない。
    紛争を発生させ、それによって利益を得ようとする人々が常にいる。

    D.安定した関係を作るには力の強いほうが譲歩しなければならない。

    E.ドイツは奪われたものを奪いかえす道を選択しなかった。
    むしろ奪われたものを欧州全体のものとする制度を求めた。

    F.ドイツは国家目的を変更した。
    「自国領土の維持を最重要視する」という古典的生き方から「自己の影響力をいかに拡大するか」に切り替えた。

    G.日中は大同を求め小異を克服すべきである。(周恩来)

    H.千島列島に対するソ連の主張に異議を唱えることによって、米国政府は日本とソ連の対立をかきたてようとした。

    I.相手が紛争解決に利益を見出すなら、事態は簡単に解決する。

  • 20120923読了

  • 何をもって利とするか。を考えさせられる。
    個人レベルの事象で想像してみても、強硬路線には利が少ないような。

  • 今起こっている中国の反日デモ。尖閣諸島を巡る問題で揉めているのは自明だが、この本の著者である孫崎氏は、本書の中でいずれまた尖閣諸島を巡って日中は揉めるだろうと書いている。

    この本は、尖閣諸島、北方領土、竹島など日本が抱える国境問題について、その歴史的背景、アメリカの思惑などの問題の棚卸しから、それを受けての平和的解決、国家戦略について述べられている。

    尖閣諸島や北方領土に関していえば、どうやったって日本は軍事力では中国やロシアには敵わない。必然的に平和的解決を図るしかない。
    その上で、著者の提案する9つの解決策は大変有効と思われる。中でも、大戦後のドイツの
    取組みが参考になるのではないか。すなわち、ナショナリズムを抑え、多角的相互依存関係を構築していくことである。

  • 日中間・日韓間の関係がかなり難しくなってきた昨今、領土問題を考える上でMustな一冊だと思います。
    いろいろな考えがあるかとは思いますが、今となっては「棚上げ論」というのは、案外なかなか良い”解決策”だったんじゃないかと思います。ただ、これだけこじれはじめてしまうと、落としどころを見つけるのは双方とも難しいだろうなぁ…。(-_-;

  • 報道などからはわからないことを知り、自ら学ぶことの重要さを改めて痛感。そういった意味ではこの本のみを鵜のみにすることなく、さらに知識を広げていきたい。そうすればもっと大きな観点でものが見れるようになるのではないか。

    尖閣諸島の領有問題は台湾に属するか沖縄に属するかという問題。よって琉球王国が日本にならない限り尖閣諸島は日本ではなかった。
    サンフランシスコ平和条約によって南西諸島の一部として米国の施政権下におかれた。よって沖縄返還とともに日本の施政権下となった。中国は東京裁判にて釣魚群島は台湾州の管轄とした。日本支配下の台湾警備府長官も釣魚群島がその管轄下にあったことを認めている。

    米国の地名委員会は竹島を韓国領として扱っている。(尖閣に対しては中立)連合軍最高司令部訓令のなかで日本の範囲から除かれる地域として「鬱陵島竹島済州島」とされているサンフランシスコ平和条約では「日本は朝鮮の独立を承認して、済州島巨文島および鬱陵島を含む朝鮮に対するすべての権利を放棄する」としており、竹島は含まれていない。
    ラスク国務次官補の韓国大使あて書簡では「独島を済州島等とともに権利放棄の中に含まれるようにとの要請に対しては応ずることはできない。われわれの情報によれば独島は朝鮮の一部として扱われたことは一度もなく、島根県隠岐島司の所管にある」

    ポツダム宣言で主権は本州北海道九州四国と連合国側の決定する小島とされた。連合軍最高司令部訓令では日本の範囲から竹島千島列島歯舞群島色丹島などを除くとされている。サンフランシスコ条約での中では千島南部の択捉国後との吉田首相の演説があり、択捉国後は千島の一部と理解されていた。サンフランシスコ条約では千島は放棄されている。
    日ソ国交回復交渉のなかで歯舞色丹返還で決着しようとしかけていた。

  • 正しい歴史認識と正確な事実把握がいかに大事か。
    勢いに流されるだけのナショナリズムで領土問題を語ってはいけない。
    そのうえで、多面的かつ冷静な対応が必要。

  • 元外交官の孫崎氏の冷静沈着かつ的確な分析が冴える。政治家とマスコミが国民のナショナリズムを煽る元凶との著者の指摘には激しく同意します。今こそ感情的でない理性的な状況把握と隣人との建設的な共同関係を築く努力をするべき時であると感じます。

  • 第一に、相手の主張を知り、自分の言い分との間で各々がどれだけ客観的に言い分があるかを理解し、不要な摩擦をさけること。
    第二に、紛争を避けるための具体的な取り決めを行うこと。
    第三に、国際司法裁判所に提訴するなど、解決に第三者をできるだけ介入させること。
    第四に、緊密な「多角的相互依存関係」を構築すること。
    第五に、「国連の原則」を全面に出していくこと。
    第六に、日中間で軍事力を使わないことを共通の原則とし、それをしばしば言及することにより、お互いに遵守の機運を醸成すること。
    第七に、係争地の周辺で、紛争を招きやすい事業につき、紛争を未然に防ぐメカニズムを作ること。
    第八に、現在の世代で解決できないものは、実質的に棚上げし、対立をさけること。
    第九に、係争になりそうな場合、いくつかの要素に分割し、各々個別に解決策を見いだすこと。
     

  • 難しい本だが、過去の歴史を振り返り現在の日本・中国・韓国の主張とその根拠を述べている。日本を見直す良い機会になった。

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著者プロフィール

1943年、旧満州生まれ。東京大学法学部を中退後、外務省に入省。
英国、ソ連、イラク、カナダに駐在。駐ウズベキスタン大使、国際情報局長、駐イラン大使、防衛大学校教授などを歴任。現在、東アジア共同体研究所所長。
主な著書『戦後史の正体』(22万部のベストセラー。創元社)、『日本外交 現場からの証言』(山本七平賞受賞。中公新書)、『日米同盟の正体』(講談社現代新書)、『日米開戦の正体』『朝鮮戦争の正体』(祥伝社)、『アメリカに潰された政治家たち』河出書房新社)、『平和を創る道の探求』(かもがわ出版)ほか。

「2023年 『同盟は家臣ではない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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