日本の国境問題 尖閣・竹島・北方領土 (ちくま新書 905)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (231ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480066091

感想・レビュー・書評

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  • 「尖閣諸島は日本固有の領土ですか」
    「尖閣諸島はいつから日本の領土になっていますか」
    「尖閣諸島は日本固有の領土であるとして、中国も自国領だと言っています。では彼らは何を根拠としていますか」
    「では、米軍は北方領土で日ロが軍事紛争になった時に日本側で戦いますか。安保条約は北方領土を対象としていますか」

  • 日本に存在する(日本国として)領土問題。

    色々な意味で知っていなかったことがこの本で歴史的事実と一緒に分かった。
    日本固有の領土として主張する尖閣諸島も、日本古来の領土と言っているが1870年代以前に日本の領土であったことはないと言う事実。

    北方領土も第2次世界大戦で放棄したが、アメリカがソ連と日本の国交回復を複雑にするため領土問題を曖昧にし、日本は北方領土返還を主張しソ連との良好な関係が構築出来なかったこと。
    敗戦で領土を放棄し、その決着はポツダム宣言を日本が受諾したことにより決定したことであることを受け止めないといけない、それを国家は国民にちゃんと説明していない。

    ドイツは敗戦により日本の比でない領土をソ連やフランスに没収されてしまったが、領土問題は棚上げして経済交流や国家交流を優先させおたがいに経済成長をして友好的な国家関係を構築した。
    竹島についても同様にアメリカの地名委員会の地図には所属国を大韓民国とされている。

    だからといって、この領土を日本の領土でないという結論を導き出しているわけではない。

    聲高に領土問題を主張することはナショナリズムを利用しようという考えの人たちの戦略である。
    それはどの国にも穏健派とそういった人たちが存在すると言うことであり、どういった方法がいいかはその時にどちらの人たちが権力に近いかによって違ってくる。
    今の日本は前原氏のような強硬派がそれを煽っている。
    先ほど述べた資料等によって、アメリカが日本の領土問題で紛争が起きた時日米安保によって日本を守るかどうかはこの本の事実を読む限りあり得ないと言う事になる。

    だから戦後50年間の間棚上げという尖閣諸島近海の漁業協定や首脳会談で築かれた歴史がある。
    違犯者はそれぞれの国の法律でそれぞれの国がその違犯者を取り締まるというルールだった。

    それを先日の尖閣諸島の船長逮捕は違犯者を執拗に追いかけ、日本の法律で裁いてしまった。まさに棚上げでおたがいに暗黙のルールであった約束を日本が踏み込んだのだ。
    中国の強硬派の人たちにとっては好都合なことである。
    領土問題が解決しておらず棚上げになっていたことを違犯者はお互いに任せるのではなく時刻のルールで裁けるという事になれば、日本漁船を中国側のルールで裁けるという事にもなるからだ。
    空軍・海軍など中国の軍事力が整備されアメリカとも肩を並べるほどになってきた中国の軍隊に、日本の保安庁の船だけではとてもではないが尖閣など守れない。

    軍事力の無い国家にとって領土問題を解決するのは政治力と外交力、そして最後に頼るのは国際社会に向けての国際司法裁判所の活用である。

    ただこれとて、日本に有利な結果が導き出せるとは限らないと言うことだ。

    友好と共に教授出来る発展を外交力でおたがいに得るか、領土問題で徹底した抗戦をするかは政治を司る人間の判断によって分かれるだろうが、棚上げという曖昧な外交によってそれ以上の悪化や緊張を生まない手段を過去の指導者達がお互いのためにやってきたことを否定し、積み上げてきた今の均衡を大きくバランスを壊す必要はないと思った。

    領土問題は難しい。それだけに一筋縄ではいかない問題だ。

    日本が経済的に有利だった時代にソ連と中国との交渉で日本に僅かではあるが、有利な状況になっていたが経済状況が逆転しつつある現在、譲歩する利点も無くなりつつある。

    その中で領土問題をおかしな方向に向かわせない方法はより一層の英知と努力のいることだと考えさせられた。

  • 尖閣諸島、竹島、北方領土、これらの領土問題はいつか解決する日が来るんでしょうか?一方的な主張は紛争を産み出します。この本には、日本の国境問題に関して相手国や諸外国の見方、過去の外国間の領土問題の解決事例を元に、国際問題解決への知恵がまとめられています。多くの人に読んでほしいと思う一冊でしま。

  • 必読

  • 尖閣諸島、北方領土、竹島。

    今の日本が抱える周辺諸国とのこれら領土問題について、歴史的背景や関係国とのやりとりを踏まえ、実情がどうなっているのか、とてもわかりやすく書いている。

    これらの領土問題も、直近の歴史を紐解けば、すべてが第二次大戦時の「ポツダム宣言」に帰結する。

    これら領土問題を巧みに利用する米国。

    日本とは対照的に領土に固執せず、周辺国との協調路線を歩んだ、同じ敗戦国のドイツ。

    日本のマスコミではあまり報じられないことを知ることができた。

  • 領土問題について、ある程度は知っているつもりであったが、この本を読んで何もしらなかったことを思い知らされた。
    たとえば、尖閣は明治時代にその領有を宣言したことは知っていたが、それ以前に台湾の領土であることを示した文書が残っている。そして琉球の領土では決してなかった。北方領土は、日ソ関係が正常化しないように歯舞、色丹の2島返還で合意しないように米国に恫喝されて交渉がまとまらなかった。そこに米国の外交が絡んでいたことは知らなかった。
    今回の尖閣に関する対応は、いままでの外交努力を水の泡にし、日中関係を悪化させた。
    領土問題はナショナリズムがすぐ絡むが、そうはせずに、より大きな2国間の利益を追求することが得策である。

  • 日本の安全は近隣国との友好関係が重要である。日本に攻撃するよりも現状を維持したほうが利益になるよな状態を作り出すこと重要になる。

  • 元外交官、防衛大学校の 孫崎亨の最新の書だった。

    日米同盟や戦略的思考の本もあるが、今回は2010年にいろいろと問題が起こった、尖閣諸島、竹島、北方領土の問題を、中国の軍事大国化、アメリカの思惑などもからめながら、歴史的検証もいれて書いている。

    ドイツの敗戦国としての戦略を例に出しながら、強い者ほど譲らなければならないということで、イラン・イラク戦争、中ソの問題を提起しながら、領土問題(国境問題)を世界がどのように解決してきたか、また、歴史的に検証をしっかりしたうえで、議論を成り立たせることが必要だと書いている。

    紛争解決の交渉として、国益論や一般的な交渉としてできる方法論、個々の事例で行える方法論などについてもまとめており、体系的な領土問題における国際交渉論としても有効な本だと思う。

    ナショナリズム的な感情的になりやすいことをしっかり論証している点が晴らしい。領土問題を考えるには、まずこのようなことを押さえた上で、考えたい。

  • マスコミの報道するニュースだけでは理解できない国際政治・外交の歴史的経緯をもとにした日本の領土問題・国境問題について論じている。
    非常に分かりやすく、また今後の米国・中国との外交における処方箋まで論じており、勉強になる。

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著者プロフィール

1943年、旧満州生まれ。東京大学法学部を中退後、外務省に入省。
英国、ソ連、イラク、カナダに駐在。駐ウズベキスタン大使、国際情報局長、駐イラン大使、防衛大学校教授などを歴任。現在、東アジア共同体研究所所長。
主な著書『戦後史の正体』(22万部のベストセラー。創元社)、『日本外交 現場からの証言』(山本七平賞受賞。中公新書)、『日米同盟の正体』(講談社現代新書)、『日米開戦の正体』『朝鮮戦争の正体』(祥伝社)、『アメリカに潰された政治家たち』河出書房新社)、『平和を創る道の探求』(かもがわ出版)ほか。

「2023年 『同盟は家臣ではない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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