とりつくしま (ちくま文庫)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480428295

感想・レビュー・書評

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  • 死んで間もない人が、未練のある何かに「とりつく」ことができる。
    亡くなったばかりの老若男女のそれぞれのストーリー。

    もうダントツで「白檀」が好きです。
    まるでカメラを通して観ているかのような視線、先生の手の触感、白檀の香り、桃の滴る甘さ。こんなに五感に訴えかける文章に出会ったことがありません。
    なにより、死んでもなお、桃子さんの恋焦がれる切なさが行間からほとばしっていました。

    これからは、ものを慈しんで大切にしよう。
    私は死んだら何にとりつくかな……

  • いきなりこの世からいなくなることなんて
    想像できないけど
    いつ何が起こるか分からない 。
    なるべく未練がないように…とは思うけど
    なかなかそんな風には生きられないし。 。
    死んだら何にとりつきたいかなぁーって考えながら読んでたけど、なかなか決めれないなぁ。
    死んでるけど笑えるのがいいなぁ。

  • 涙がとまらない

    逆バージョンで死んでいく人の
    とりつくしまにになり
    ついて行きたい

    *ある日とつぜんある人が
    この本を持ってきて
    私に読んでと言った。

  • もし自分が死んだとして、その後「物」にとりつく事ができるとしたら…。私は何にとりつくだろう?そんな、もしもな物語がいくつも詰まった短編集。温かくて切ないちょっぴりファンタジー。

  • If I were a bird, I could fly to you.

    「とりつくしま係」に会ったら、わたしは何にとりつくことを希望するだろうか。この世に未練のある死者は、なにかモノになって戻ることができる。ロージン、カップ、ジャングルジム、扇子、名札、補聴器、日記、マッサージ器、リップクリーム、カメラなど、登場人物は様々なモノを選んでこの世に戻るが……。すべての話が「とりつくしま係」に会うところからではないところが面白い。死者の年齢や性別、境遇も様々。まさかという結果もある。しかしどれも優しさにあふれた物語だった。「とりつくしま係」の存在、その過去(あるならば)も気になる話だった。

    「白檀」ひそかに想う書道の先生の扇子にとりつく。先生のおそばに、夏だけでも。しかし先生の奥様のことも好ましく想っている。控えめな、でももう一歩踏み出せたような、じれったい想いが印象的。

    「名前」居場所のない男は、生前の時間を過ごしていた図書館の、好意を持っていた「小雪さん」の名札にとりつく。設定を聞けば気持ち悪いとも思ってしまいがちだが、ほんのり温かく、最後では名札の死者と一緒に喜んでしまう。

    「レンズ」孫に大枚はたいて買ってあげたカメラにとりついたつもりが、カメラは中古で売り払われていた。名も知らぬ人のものになったが、そこからの日々は。先に逝った夫への想いが、新たなカメラの持ち主への想いに重なる。

    「番外編 びわの樹の下の娘」なぜ植物にはとりつけないのか、の答えかもしれない話。

  • 今のところ、自身の死を実感をもって考えられないからかもしれないが、未練をもって他界することは想像できない者であります。しかし、こういったこともあるのかもしれないなと現実感をもって優しく迫ってくる掌編にいろいろと考えさせられた。

  • 死後も少しだけ現世に残れるという設定と、さっくり読める短編が10ほどという構成からすると、似たような感動系の話が多いんだろうなあと思いつつ読み始めたが、意外と一筋縄ではいかないというか、考えさせられるものも多くて、バリエーションが豊かだと感じたのは予想外だった。
    個人的には、「私は、空気に少し飛び散った。」という二度見必至の一文が登場し、結末も美しいと感じた「ロージン」がお気に入り。

  • 一緒に食事をするということは、一緒に満たされてゆく、という1行に感動した

  • 帯のように号泣はしなかったけれど、1つ2つ読んだ後に顔を上げたら、目の前の人やモノの見え方がちょっと変わる。短編の数だけ思考実験をしているみたいだなと思ったら解説に「現代美術のような本」というくだりがあって合点がいった。「とりつくしま」の文字列は何度も見ると不思議な呪文に思えてくる。

  • 『もしも私が鳥だったなら、あなたのもとに飛んでいけるのに。』
    .
    心を残して亡くなってしまった人が、「とりつくしま係」によって、何かに取り憑き親しい人のそばに行けるという物語。
    そばに行った後は、どのような結末になるのかは人それぞれ。「ロージン」と「白檀」が良かった。
    東直子さん、ほっこりとする文章が印象的。他の作品も読んでみたい。

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著者プロフィール

歌人、作家。第7回歌壇賞、第31回坪田譲治文学賞(『いとの森の家』)を受賞。歌集に『春原さんのリコーダー』『青卵』、小説に『とりつくしま』『ひとっこひとり』、エッセイ集に『一緒に生きる』『レモン石鹼泡立てる』、歌書に『短歌の時間』『現代短歌版百人一首』、絵本に『わたしのマントはぼうしつき』(絵・町田尚子)などがある。「東京新聞」などの選歌欄担当。近刊にくどうれいんとの共著『水歌通信』がある。鳥好き。

「2023年 『朝、空が見えます』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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