ピスタチオ

著者 :
  • 筑摩書房
3.52
  • (60)
  • (169)
  • (192)
  • (38)
  • (5)
本棚登録 : 1261
感想 : 224
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (290ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480804280

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 難しくてよくわからない。
    だけど小説に出てくる言葉は好き。
    棚という変わったペンネーム、ピスタチオグリーン、ジンナジュ、ダバ。
    ジンナジュは狐憑きのキツネのようなもの。
    ダバは癌のようなもの。
    裏庭に引き続き二人で一人というような双子が出てきた。
    こういうの好きなんだね。

    飼い犬の介護のためにオムツをすることは、犬が嫌がらないのなら全然抵抗ないよ、私は。
    そんなことで悩むなんてしんどいね。

  • 主人公の職業はライター。ペンネームが棚。

    マースという犬とマンションで暮らしている。

    結婚はしていないが、パートナーはいる。

    マースが病気になり、手術をする事になる。と言うのが前半。

    後半は以前知り合いだった片山海里が亡くなった事を知り、研究していた

    アフリカの呪術医の文献を読み見えない引力にひかれる様に

    アフリカへ行く仕事が決まり、海里の足跡を辿る。

    その中では思いがけない事や、自分を待っていたという運命の人とも出会う。

    という、読んでいてこの本をどう捉えたら良いのか分からなくなった。

    空気感は好きな作品。でも、満足かと言われたらうなずけない。

    何を描きたかったのだろう。人間の繋がりなのかな。

    愛や性や生を描写しなくても繋がっている、引力なのかな。

    最後まで、うーん…と言い続けた作品でした。

  • なにか世界のもう一つの顔を見せてもらった気がした。
    やっぱり梨木さんは、魔女か妖精か、そんな生き物だと思う。
    こういう世界、とても好きだ。

  • 夜中読んでいた。

    トイレにいくのも、かたわらのコタツに入ることもできないで。

    なんかに覗き込まれているようで。

    取りつかれるように読んだ。
    淡々とそしてひたひたと、こわかった。

  • 『棚』は、ライターである翠のペンネームです。
    画家・ターナーと頭の中の棚をイメージしています。

    そんな棚の愛犬・マースに腫瘍が見つかり手術に踏み切るのですが、棚自身、「これでいいのか…」とすっきりしないでいます。

    そこに、アフリカ取材の話が持ち上がり、単身渡ります。ここから、物語が大きく動いていきます。

    アフリカの大地、人々を取り巻く精霊、伝統医、ダバ(身体に巣くう黒い塊)の除霊、宴会療法!?
    アフリカの空気感とスピリチュアルな感覚に魅かれます。

    棚自身、マースの病気とリンクしながらも次々と衝き動かされるように、ウガンダを巡ります。

    最後に、帰国した棚が書いたお話が載っていますが、アフリカを後にしたところで、お腹一杯になっていたので疲れました。
    棚の中で、一連の出来事が集約された話なので、ここだけ、後で読んだ方が良かったかもしれません。

    でも、『沼池~』は苦手だったのですが、好きなタイプの作品でした。

  • 【推薦文】

    ピスタチオ。
    ピスタチオ。
    いい一生を生きた。
    安心してお休み。

    そして
    死者は、
    物語を抱いて眠る。


    ライターの「棚」は見えないクライアントに導かれ、
    武蔵野からアフリカの奥地へと、死者の物語を解放しに旅をする。
    梨木香歩の文章のもつ圧倒的な包容力と、優しくも強い言葉たちに、
    いつも通り、”もっていかれます”


    (国際文化学研究科 M2)


    【配架場所】
    総合・国際文化学図書館 2F 国際文化学図書館学生選書 913-6-N

  • 「棚」というちょっとかわった筆名でライターをしている翠は、日本で仕事をしながら、どういうわけかこのところ、アフリカの風を感じる機会が続いた。そんな折に舞い込む、ウガンダへの取材旅行の話。旅立った棚が出会う、奇妙につながったいくつもの出来事、奇妙な縁。なにか大きな力に背中を押されるようにして、棚が見つけたものとは……

     非科学的なものを信じることに抵抗を覚えながらも、なにかに導かれているとしか思えないような流れで、はるかな異国を旅する棚。アフリカの大地、夜の暗闇、精霊、呪術と分化していない医術。そこに生きる人々の価値観、信仰。

     棚に掘り起こされることを待っていた物語。人はなぜ物語を必要とするのか。
     ヒトという動物が言葉を話すようになってまもないころ。そういう古い古い時代から、物語というものは、生まれ続けてきた。語られるうちに変形し、消えて、また新たな物語が生まれ……。
     小説がいまのような形態になったのは、あるいは映画や漫画というメディアが普及したのは、ごく最近のことかもしれないけれど、年寄りが焚き火を囲んで子どもたちに昔話を聞かせていた時代から、ずっとずっと、物語は必要とされ続けてきた……

     ほの暗く湿ったイメージ、ほのかな不気味さや、わりきれない感じがあって、万人に面白い本ではないかもしれないけれど、個人的には読んで良かった一冊でした。ストーリーそのものが面白いというよりも、ところどころでさりげなくにじみ出る価値観のほうが、印象深い感じ。

  • なにがどうしてピスタチオなんだろうと思ったけど、ちゃんとピスタチオでした。
    梨木香歩といえば日本的なものと決めてかかっていたけど、アフリカの、この地球上の土地に宿るものは国境を越えて不変のものなのかもしれない。
    シャーマニズムとグローバリズムが絡み合ってできた新しい時代の話なのかもしれない。

  • 待望久しかった梨木さんの長編小説。今回の物語のメイン舞台はなんとアフリカ・ウガンダ。女性ライターである主人公・棚(ペンネーム)の日々の暮らしを描いた序盤は、梨木さんが趣味とするバード・ウオッチングやカヌーなどの話題がいくつも織り交ぜられて落ち着いた描写。 年老いてきた飼い犬が、突然の変調を来たすあたりから徐々に不穏な空気が漂いはじめ、暗示の如く以前滞在したアフリカの話題が身近に溢れ始める。やがて依頼された取材旅行がウガンダへの旅。何者かに導かれるように棚はアフリカに向かうことになるのだが、、、 スピリチュアルなものを扱った小説だけれど、似たようなものを書く「よしもとばなな」との大きな違いは、描写の節度だろうか? 対象となる呪術や憑依にしても、ある一定度の距離を置いた扱いで、主人公が巻き込まれていく様子も淡々としていて混乱が少ない。 精霊とでもいうべきものの存在が確かに感じられるようないくつもの符合。壮大な自然に囲まれたウガンダでの、行き当たりばったりに見えて、実はあらかじめ仕組まれていたかのような出会いと行程。不思議な偶然性はいつもの梨木ワールド。なかなかタイトルとなった「ピスタチオ」が登場しないなと、やきもきするのだけれど、そのピスタチオと終盤で思わぬ出会いを迎える衝撃。 すべての事件が解決した後に、棚の手により書くべくした書かれた神話『ピスタチオ―死者の眠りのために』が印象的。鳥の観察者としての梨木さんの一面が、この小説を産み出したのだなと納得。

  • (2010.11.02読了)(2010.10.28借入)
    梨木さんは、亡くなった人の霊、動物や植物の霊を扱った作品を割と書いているように思います。今まで読んだ中で、以下の作品はそのような物語です。
    「りかさん」梨木香歩著、新潮文庫、2003.07.01
    「家守綺譚」梨木香歩著、新潮社、2004.01.30
    「沼地のある森を抜けて」梨木香歩著、新潮社、2005.08.30
    「f植物園の巣穴」梨木香歩著、朝日新聞出版、2009.05.30
    今度の作品は、アフリカの呪術師に関するものですので、体調が悪いのは、その人の身体に何かがとりついているとか、誰かの呪いによるもの高いう考えに基づいて治療するという考えですので、今回も同じようなテーマということになります。

    今回の主人公は、物書きの女性です。名前は、山本翠。もうすぐ40歳。ペンネームは、棚。イギリスの画家、ターナーから思いついたということです。名字と名前という形にはなっていなくて、単にたな(棚)です。ある時期以降のターナーの絵には、緑が使われていないのだそうですが、そうだったですかね。ターナーの作品をたくさん集めた展覧会があったら覚えていて、確認することにしましょう。
    山本翠さんは、独身ですが、彼氏はいるので、都合のいい時に会って一緒に過ごしたりしています。結婚しないで、お互いにあまり拘束せずに暮らすということがこれからどんどん増えて行くのでしょうか。子供がいらない、生命の連鎖を断ち切る、ということであれば、それでもいいのでしょう。
    山本さんは、犬(名前は、マース)を飼って、11年経つのですが、最近頻尿のようで、ときどき粗相をしてしまったりします。医者に診てもらったら、膀胱に腫瘍ができていることがわかったので、手術で取り除いてもらいました。少し調子を取り戻しています。
    山本さんに、アフリカのウガンダへの取材旅行の話が舞い込みます。丁度、アフリカの呪術師の話を取材しつつ、アフリカの民話も集めていた知り合い(片山海里)が死亡し、現地のガイドも死亡した、ということがあって、彼らに何があったのかついでに調べてみたいと思っていたところだったので、引き受けることに、出かけて行きます。
    亡くなったガイドの弟が、ウガンダでの案内を引き受けてくれて、取材を始めます。
    依頼されたウガンダ観光の取材を進めながら、亡くなった知り合いの会っていた呪術師にもたどり着きます。山本さんの知り合いは、その呪術師のもとで、呪術師の修業をしていたことがわかります。しかもその知り合いは、呪術師としての最初の仕事で、人探しをしていたのですが、日本からやってくる女性が、行方不明の女性の亡くなった場所を教えてくれると言い残していたのです。
    山本さんがその人です。ウガンダでは、反政府ゲリラが、幼い子供を誘拐し、兵士に育て上げるということが行われており、反政府ゲリラが、月の山(ルウェンゾリ)の向こうへ逃亡したという情報をもとに、ルウェンゾリ観光の取材も兼ねて、言ってみたら、霊感のように行方不明の女性が埋められている場所がわかりました。
    ピスタチオの樹の下だったのです。
    呪術についてのそれなりの理屈は書いてあるので、興味ある方は、本を読んでご確認ください。このあたりに興味を持てるかどうかで、この本の評価が決まってきそうです。
    物語の最後に、「ピスタチオ―死者の眠りのために」という物語が挿入されています。一読では、内容が読み取れませんでした。この辺も・・・。

    ●雨季と乾季(93頁)
    ウガンダの雨季と乾季のことを調べてもらった。現地の関係者によると、最近はいつからいつまでが雨季というような明確なことは誰にも言えなくなっているという。長期的な見通しの立たない、旱魃か洪水。雨季と乾季というシーズンそのものが消えつつある、と。いわゆるラニーニャ現象の影響らしい。
    ●オーダーメイドの物語(94頁)
    学生時代から、棚は文章を書くことが好きだった。牧畜でチーズやバターを作って市場で売り、その金でその日の生活に必要なあれこれを買って生活していくように、自分も一つの作品を売って、その金で質素な生活をする、というのが棚の夢だった。石屋が墓石を作るように、誰か、その人のためだけの物語を、心をこめて作る。
    (この本の最後の「ピスタチオ」がこのことらしい。)
    ●ジンナジュ(107頁)
    ジンナジュは、中東からアフリカ全般に広がる、精霊・ジンのバリエーションの一つらしい。(アラビアン・ナイトにはいっぱい出てくる。)
    ●物語が必要(237頁)
    患者と、患者のジンナジュが、本当に欲しがっているのは、ストーリーなんだ。特に人の恐ろしがる病の場合は、なぜ、自分がその病気になったのか、納得できる物語が欲しい。死者には、それを抱いて眠るための物語が本当に必要なんだ。

    ☆梨木香歩さんの本(既読)
    「りかさん」梨木香歩著、新潮文庫、2003.07.01
    「家守綺譚」梨木香歩著、新潮社、2004.01.30
    「村田エフェンディ滞土録」梨木香歩著、角川書店、2004.04.30
    「沼地のある森を抜けて」梨木香歩著、新潮社、2005.08.30
    「水辺にて」梨木香歩著、筑摩書房、2006.11.20
    「f植物園の巣穴」梨木香歩著、朝日新聞出版、2009.05.30
    「『秘密の花園』ノート」梨木香歩著、岩波ブックレット、2010.01.08
    「渡りの足跡」梨木香歩著、新潮社、2010.04.30
    (2010年11月4日・記)

全224件中 11 - 20件を表示

著者プロフィール

1959年生まれ。小説作品に『西の魔女が死んだ 梨木香歩作品集』『丹生都比売 梨木香歩作品集』『裏庭』『沼地のある森を抜けて』『家守綺譚』『冬虫夏草』『ピスタチオ』『海うそ』『f植物園の巣穴』『椿宿の辺りに』など。エッセイに『春になったら莓を摘みに』『水辺にて』『エストニア紀行』『鳥と雲と薬草袋』『やがて満ちてくる光の』など。他に『岸辺のヤービ』『ヤービの深い秋』がある。

「2020年 『風と双眼鏡、膝掛け毛布』 で使われていた紹介文から引用しています。」

梨木香歩の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×