消えた山高帽子 チャールズ・ワーグマンの事件簿 (ミステリ・フロンティア)
- 東京創元社 (2004年6月25日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488017040
感想・レビュー・書評
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(収録作品)坂の上のゴースト/ジェントルマン・ハラキリ事件/消えた山高帽子/神無月のララバイ/ウェンズデーの悪魔
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明治初期、英国人が探偵であるという設定に溶け込めなくて最初の2編はおもしろくなかったが、だんだんなじむにつれておもしろくなってきた。
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江戸から明治へかけて(だよね?)の時代背景が巧く組み込まれた連作短篇。「仇討ち」や「切腹」などといった要素、日本人と異国人との思考のギャップなどというものの使い方が実に巧いなあ、とひたすら感心。時代風俗の勉強にもなる気がするし。そして個々の物語に付けられた「オチ」的解釈にもくすりと笑える。
「日常の謎」的な表題作が見事。探偵であるチャールズ・ワーグマンよりも升蔵カッコ良すぎるってば。真の意味での「探偵」は彼だったかもなあ。 -
明治初期の横浜を舞台にした推理小説。
主人公は英国人の新聞記者ワーグマン、そして相棒には、イギリスの推理モノといえば真っ先にあがるシャーロック・ホームズと同じく、医者のジョナサン・ウィリス。(ただし、ウィリス視点で書かれている訳ではないけど)
舞台設定が面白いな~と思って、読んでみました。ちなみに5編の短編集です。
そうですねー、解決場面の構成が、せっかくの盛り場だというのに盛り上がりに欠けちゃう気がしました。
イギリスで発行されるイラストレイテッド・ロンドン・ニュースの記事にワーグマンが事件の結末を書くという形なんですが、事件の性質上、実際の事実とは違う内容を書いたります。で、後でウィリスに本当の事実を説明する。
解決場面が二重になっているんですね。
新聞記者が主人公ですから、この形は面白いと思うのですが、ただ、どんでん返しの更にどんでん返し!という事実ではないので、せっかくワーグマンが語る場面になっても推理の冴えが光らない。先にあらかた、説明されていますから。付け足しみたいな感じ?なんかもったいない。あと、事件自体が、ややムリして練り上げているような感もあります。
それと、せっかく明治初期という時代で、異人という立場の人間を主人公にもってきたのですから、それをもっと活用して欲しかったかな。わりとすんなり溶け込んでて、外国の人という感じがないです。日本人の奥さんがいて日本語が達者だからと言われたらそれまでですが。でも周囲の人が戸惑ったり、勘違いがあったり、笑いがあったりしていいと思うのです。日本語が達者にしても、あまりに流暢で日本人っぽい喋り方すぎるかな?と。
ま、この部分に関しては私の個人的趣味な領域になるでしょうね。
一番良かった話は、ラストの“ウェンズデーの悪魔”。
実は最初の方でトリックは分かったんですが、最後の締め方がカッコ良かったです。司祭とワーグマンのやりとり、そしてラストの一節。私も神に打たれたような気がしました~。 -
明治の横浜、新聞記者のワーグマンが事件を解決する。
西洋と日本の文化が入り混じった時代の雰囲気は好き。
西洋人の思想に少し違和感を覚えるが、目を瞑れる範囲内。 -
明治の初め、横浜の外国人居住区に住む英国人の医師が、日本で起きるいくつかの事件に立ち向かう。明治初期の日本という設定がよいですねー。
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時代物なので話し方がちょっと…
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開国に沸く日本。外国人居留地で起きる事件を、新聞記者、ワーグマンが解決します。
歌舞伎役者の升蔵がかなり男前な江戸っ子で好きなキャラでした。むしろ彼を主役で一本読みたいくらい(笑) -
時代本格ミステリの嚆矢であると言っても過言じゃないと思う。
まず「時代」の部分。
ここは書き込み方が素晴らしく上手く、その時代の空気感を感じられるほど。
現実感の無い書割のような明治ではなく、本当にその時代、このような空間があったのではないかと感じさせられるだけの筆力がある。
もちろん細かく見れば瑕疵もあるのかもしれないが、普通の読者が見る分には何の支障も無いわけだし。
そして「本格」の部分。
凶悪で狡知に長けた犯罪者が現れるわけではないし、派手な事件が繰り広げられるのでもなく、また「名探偵、皆を集めて『さて』と言い」な場面があるわけでもない。
そこで起こるのはシンプルかつストレートな事件である。
しかし、そこにこの時代特有のさまざまな事情が絡み合うことによって、事件が非常に魅力的な、不可解な事件へと変貌する。
言葉、文化、服装、宗教……これらのギャップが事件を複雑なものに見せる。
そして、西洋と東洋の両方の観点から事件を見ることで解決に導くのがワーグマンとなる。
手がかりはフェアに提示されており、解決の場面では読者も膝を打つ論理を見ることができる。