聴き屋の芸術学部祭 (ミステリ・フロンティア)

著者 :
  • 東京創元社
3.60
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本棚登録 : 372
感想 : 75
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  • Amazon.co.jp ・本 (231ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488017682

作品紹介・あらすじ

生まれついての聴き屋体質の大学生・柏木君が遭遇した四つの難事件。芸術学部祭の最中に作動したスプリンクラーと黒焦げ死体の謎を軽快かつロジカルに描いた表題作をはじめ、結末が欠けた戯曲の謎の解明を演劇部の主演女優から柏木君が強要される「からくりツィスカの余命」、模型部唯一の女子部員渾身の大作を破壊した犯人を不特定多数から絞り込んでゆく「濡れ衣トワイライト」、そして深夜の温泉旅館で二人組の泥棒とともに"いったいここで何が起こったか"を推理する力作書き下ろし「泥棒たちの挽歌」の四編を収録。聴き屋の柏木君ほか、誰よりもネガティブな性格の先輩、推理マニアの美男子学生作家など、文芸サークル部第三部"ザ・フール"の愉快な面々が謎解きを繰り広げる快作。

感想・レビュー・書評

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  •  人の話を傾聴するだけのお仕事、“聴き屋”。なぜか学校で聴き屋を勤めているT大芸術学部生・柏木が、大学生活で起きた事件を解決に導く、4編の学園ミステリー。

     図書館本。
     コミカル・ミステリとのことだったのでササッと読めるかと思ったのだが、結構時間がかかる。
     聴き屋とは何か、どういう大学なのか、依頼人の性格その他諸々、等をまず説明する必要があるため、どの話も前置きがかなり長い。
     芸術学部であることを強調してか、登場人物がどなたもこなたもクセの強い奇人変人揃いで、話がしょっちゅう横道にそれる。そういう掛け合い漫才みたいな下りが、この作品の魅力ではあるのだが。

     読後感としては、推理小説を読んだ気分にはあまりならなかった。推理1に対し、奇天烈なキャンパスライフ3といった雰囲気。
     “聴き屋”という設定がいまいち活かし切れていないのも、ちょっと物足りなく感じる。
     とはいえ、文章自体はテンポ良くスルスル読め、学生たちの掛け合い漫才も楽しかった。続編も買って読んでみようかという気になり、私にはわりと相性の良い作品だった。


    ◆「聴き屋の芸術学部祭」
     芸術学部祭の最中、火災が発生!? スプリンクラーでずぶ濡れになりながら聴き屋・柏木と友人が発見したのは、黒焦げの死体だった。

     能天気な大学ミステリーかと思いきや、なかなかに凄惨な事件。コージー・ミステリーだと思って手に取った読者にはキツいかと思う。
     う~ん、理屈は通ってはいるんだけど、動機がねえ……。伏線は目につくんだけど、それを結び付けるのはかなり困難な気が。
     気合いの入った女装男子・川瀬の強烈なキャラクターがすごい(笑)。


    ◆「からくりツィスカの余命」
     ひどいいたずらのせいで演劇部の台本が未完成に!? 空白の結末を埋めるため、柏木は台本原案の読み合わせをする羽目に……。

     物語の結末を推理するという面白い趣向。しかし、台本の原案である作中作を延々と読まされるのが結構つらい。今読みたいのはファンタジー児童文学じゃないんだわ……。
     よいこはこのいたずら、まねしちゃダメだよー(笑)。


    ◆「濡れ衣トワイライト」
     模型部の作品が壊された! 疑われた模型部員の濡れ衣を晴らすため、お人好しの聴き屋・柏木が面倒臭さをこらえて動き出す。

     伏線が上手く活用された話。ただ、個人的には犯人に不満が。別にこの人じゃなくても、他の容疑者も可能性大だと思う。
     聴き屋は容疑者たちの人となりをよく知らないのだから、行動をそこまで推測するのは無理があるのでは。この点は全く納得できなかった。


    ◆「泥棒たちの挽歌」
     箱根で芸術学部祭の打ち上げと洒落こんだ、文芸第三部員たち。夜中に露天風呂へ向かった柏木と川瀬は、旅館に侵入しようとしている2人組の泥棒を発見。逃げ出した泥棒たちを追いかけた先には、なんと死体が!

     ネタなのか?泥棒コンビの片方の名前が“ヤス”(笑)。
     1話目と同じく本格推理系の話だが、前半はやはりスットコドッコイな学生たちのお楽しみ大会。
     伏線などはよく出来ているのだけど、やっぱり犯人の行動にいまいち納得できない。そういう統計が出ているのは知っているが、その場の勢いというか、雰囲気でそういう行動に出る傾向があるのはむしろ女性では……?

  • 「無料で、何でも聴きます。ただ聴くだけですので、お気軽にどうぞ。」(8ページ)

    文芸第三部のサークルに所属しているメンバーの主人公。
    もともと話の聞き役になることが多かった彼は、
    気づいたら聴き屋として成り立っていた

    そんな彼の元に、個性豊かな学生たちがさまざまな話や事件を持ち込んでくる。
    そんな物語り。

  • 日常系ミステリーに分類される作品。
    主人公がただ人から話を聞く聴き屋として、情報を統合していき真相を明かしていく。

    いかにも大学生感があふれていて、瑞々しさを感じた。

  • 4月13日読了。図書館。

  • 新人さんの本で、久しぶりに楽しく読めました。ちゃんとキャラも立ってるし、展開がスムーズで分かりやすい。殺人事件が起きているけれど、亡くなった人が登場人物と接点がない人なので、推理する人たちが被害者にヘンに感情移入することもなく淡々と進めていくのが良かった。次作に期待。

  • 生まれ持った「聴き屋」の才能を発揮して事件を解決する話。ライトな話からヘビーな話まである。 聴き屋の柏木くんをはじめ、登場人物がみんなして個性的なのが魅力。その魅力的な人物から繰り出される会話はウィットに富んでいて、労なくさくさく読み進められる。 私もこんな同級生や先輩に囲まれて学生生活を送ったら…毎日疲れそうだなぁ。良い意味で。なんて思ってしまった。

  •  誰のどんな話でも聴いていることが出来る性格から、「聴き屋」として重宝がられている大学生の柏木くんが遭遇した4つの事件が収録されてます。
     柏木くんは推理力もかなりのものだけれど、お話は基本的に彼が推理を披露したところで終わっていて、本当の真相が明らかにはされないスタイルです。

     変な人ばっか出て来るけれど、大体まぁよかったです。
     2話目の月子さんだけは許せないけど。
     スーパーネガティブな先輩が好き。もっと登場してほしかったな。

  • デビュー作。ミステリ短編集。
    『放課後探偵団』で「横槍ワイン」を既読の作家さん。けっこう面白かった記憶が。
    大学が舞台ということで、若々しい、軽妙な作品になっている。

  • 読みやすいけど薄い。。。

  • 「聴き屋の芸術学部祭」
    “聴き屋”という設定も面白いけど、それを面白がる教授や客引きに利用する部長等、他の面々も個性豊かな人達ばかりで面白い。
    遊女のコスプレのまま電車に乗っちゃう川瀬は凄い。

    「からくりツィスカの余命」
    レモンティーとみりんを入れ替えられたらフツー怒るよ…。月子さん強烈すぎ。
    相変わらずおばけチックな先輩可愛い。
    小説と違って演劇は主役の見せ場が必要なのか!

    「濡れ衣トワイライト」
    成田はどんだけ捻くれ者なんだろう。自分で火に油を注ぐなんて。
    ザ・フールのメンバーがカオス…。副会長も可愛いな。使い物にならない会長が気になる。

    「泥棒たちの挽歌」
    マスター、良い人だなぁ。
    ひとり七ならべって、先輩なにやってんの…?梅ちゃんの発想には納得。
    川瀬と柏木の連携推理スゴイ。だから誤解されるんだ(笑)
    自分は女子より可愛いと断言したり、泥棒の提案にあっさり乗っかったり、本当に川瀬スゴイ。

    『放課後探偵団』で読んだ「横槍ワイン」と“聴き屋”のイメージで“日常の謎系ミステリ”だと思って読んだら、いきなり殺人事件で驚いた。
    登場人物たちのやりとりが面白い。
    続編が出るのが決まっていて嬉しい。先輩の名前わかるかなぁ。

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