- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488024550
感想・レビュー・書評
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マンションの一室で起こった殺人事件。
死亡したのは、その部屋に住む夫婦。
その場に居合わせた人々の証言から、事件は早期解決したかのように思えたが・・・。
単純な事件のようで、とっても奥が深い。
すべては“N”のために。
殺された夫婦も含め、事件現場にいた全員が、それぞれ自分が想う相手“N”のために行動していた。
たくさんの想いが交錯して、すごく複雑なんですけど、人ってそういうもんだろなって思ったり。
人の心って見えないですからね。
誰が誰を想ってるのか、それぞれの“N”って誰なんだろうって考えて読み進めると、それぞれの心が少し見えてきて、深く楽しめる作品です。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
本が出てからだいぶ経ったよな、と思わせる頃になって、そう、いわば忘れた頃になって、『告白』が本屋大賞を受賞して書店に改めて増刷された同作が積み上げられ、山になったときは、ふうん、そんなものかと思った。でもその頃には二作目が出て、三作目もちょうど本屋大賞の作家だよ、っていう乗りでそこそこいいコーナーに並べられ、ある程度売り上げが見込まれる作家になった、ということなのだろう。
そういうことを言うのも、実は本書4作目がこれまでになく、あまり面白くなかったからなのだ。作品は一つの夫婦殺人事件をめぐる真相追究ものなのだが、現場にいた青年が容疑を認め刑務所送りになるのは冒頭のシーン。実は真相はそれだけじゃないんだと、関係のあった青年を含む若者たち四人の独白が始まる。この作家のスタイルはもはや言わずと知れた口語独白体なので、ここからが真骨頂……となるはずだったのだろう。作者の目論見では。
ところが、狙いであったところの芥川龍之介『藪の中』もどきの各自によって解釈の違う事件というイメージは、あまり切れ味を感じさせず、どちらかと言えばそれぞれのキャラクターの育ちの世界に作者の視点は向けられ、それらは、事件とは別の短篇小説のようなそれぞれの暗い歴史であったりする。貧しさ、放火、虐待、そういった暗い、島での追憶を語りつつ、彼らの事件は真相というよりも、それらの過去がゆえにもたらす複雑な人間観の距離をあらわにしてゆくかのようだ。
最後に救いのようなところに作者がすべてを持って行きたかったのかもしれないが、どうもあまりそのあたりが伝わらないのは、容疑者にされた青年が罪を認めてしまうに至る心理についての説明の少なさのせいかもしれない。独白体は、ある意味主観で表わすがゆえの独特の表現力を持ちはするが、同期しづらいテンポの悪さという方向にもするりと逃げてしまいがちである。
読む側に判断を委ねる意味深い小説であろうとすればするほどそうした罠に陥りがちなのがこの手の決着のつけ方だと思う。個人的にはどこかすっきりとせずに終ってしまった感じが拭えない。書き急ぎのないようこの作者には慎重にもっと鋭い物語を紡いでもらいたいと思うのだが……。 -
このミステリーはどうなっていくのか、興奮を伴う上手い序章につい引き込まれた。しかし、序章以降はどんどん退屈になってしまった。少しずつ切り口を変えた同じことの繰り返しを、永遠と聞かされるような退屈さとでも言おうか。『告白』でも感じたが、この作家さんは瞬発力はすごいけど持続力がないような。完全な独立した短編なら次も読んでみたい気がする。
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ぼちぼち、面白かったかな?
インタビュー形式で事件を振り返る方式だと、宮部さんの『理由』とか、恩田さんの『Q&A』とかが思い浮かぶけど、それらと比べたら・・・・
10年後という第2章にも期待したんだけど、よく読むと第2章は当時のそれぞれの立場での展開で10年後は関係なかった・・・
まあ、一番驚いたのは安藤が男だったってことかな?(笑) -
湊さんの作品はほんと引き込まれる。お風呂に入ってる間、ご飯食べてる間、『あ〜続き読みたいな〜〜』ってうずうずする。
さて今回は先日の『少女』に引き続き『Nのために』です。
表紙の油絵風青ばらといい全体的に落ち着いた色といい、内容にあってるか?と言われたら『どうかな〜』としか言えないけどすごく素敵ですな。
裏表紙の金色の魚は“N”たちなんだろうか。
前述の通り、湊さんの文章には引き込ませる魅力がある。最後まで読みつかせる筆力がある。
でもオチがな…… 、と、最初『贖罪』を読んだとき思った。
次に『告白』を読んだときは全てにおいて素晴らしい!と絶賛した。
この『Nのために』のオチはまあまあ好き。なんとなく甘い匂いがする。
恋と呼ぶには危うすぎる、『Nのため』の物語。
また読み返したい。
とりあえず今日は返す。 -
ある殺人事件に関与した'N'達の独白が繰り返され、事件の真相、過程はもちろんのこと各々の過去や生い立ちが描かれていく。まず思ったのがやはり湊かなえは人間の本性、汚さを描くことが巧いな、ということ。今まで自分が読んだ作品も、全て読み終わったあとの清々しさが皆無で、人間性をさらけ出した登場人物について考えさせられた。今作も同様だが、他の作品に比べるとあまり登場人物に惹き付けられなかった。1人1人の印象がはっきりせず自分の中で登場人物の設定を整理しにくかった。しかしもっと大きなテーマで考えさせられたので、そこは自分の中で差し引き出来たので☆3つ。
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一つの事実に関係する複数の登場人物たちの告白は興味深いが、話があちこちするから、告白者の名前を独白の前に記して欲しかった。
最終行で、何故希は病気をしているのか、尻つぼみ終わり方が残念。 -
湊かなえ はもう 『告白』以上のものは書けないんじゃないかと思っていたけれど
この作品を読んで、
まだまだ もっと 面白い作品が書ける人なのではないかと思った。
Nって 結局 だれのためだったんだろうか?
最後の一行は のぞみのつぶやきではなくて
それぞれ 安藤や、西崎や、一人ひとりのつぶやきだったのではないかと思った。
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