レーン最後の事件 (創元推理文庫 104-4)

  • 東京創元社
3.65
  • (34)
  • (49)
  • (60)
  • (10)
  • (3)
本棚登録 : 439
感想 : 41
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (404ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488104047

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 本作は大英帝国博物館に勤務する警備員の失踪と、消えたり現れたりする古書の謎を追う話ですが、終盤まで緩い展開が続くのであまりパッとせず、前三作と比べると劣る印象です。
    ラストの衝撃度は抜群ですが、帯の謳い文句やタイトルで何となく察しがついてしまうのは残念なところです。
    ただ、前三作のあるシーン、ある台詞、ある行動がペーシェンスの推理に集約される趣向は秀逸。シリーズの締めくくりとしては最高だと思います。

  • 悲劇4部作の最後を飾るにふさわしい傑作。衝撃のラスト、ペイシェンスが活躍しています。なぜ最後なのかがよくわかります。

  • この時代のミステリなので、事件に関係が薄い人物描写やエピソード(登場人物同士の恋愛とか)が少ない一方で、当時のエラリーは「フェアプレー」(結論に至る根拠をすべて文中に散りばめてある)を謳っていたので、現代のミステリに比べると理屈っぽいのですが、論理的な可能性の膨らませ方と収束のさせ方、そして最後に一気に結論に達してすべてを整合させる技はさすがです。日本語解説にある通り、初めに本書の構想があってからXYZが作られたのでしょう。

  • 2013年11月25日、読了。

  • レーン四部作の最後を飾る作品。

    ブリタニック博物館に陳列される予定だったシェークスピアの初版本を巡る陰謀と殺人。シェークスピアの専門家でもあるご存知ドルリー・レーンが、最後の事件に挑む。

    事件がシェークスピア絡みとあって、かつての元気を取り戻したかのように活躍するレーンを見ることができる。前作では語り部だったペーシェンスにも探偵としての役割が与えられているし、サム警部や初登場のゴードン・ローにもそれぞれ見せ場がある。ペーシェンスに関しては、本作での活躍を想定して前作から出していた可能性もある。

    トリックは特に難しいものではなく、ミステリーとしてはXやYに一歩及ばないものの、伏線の張り方はとても丁寧。ドルリー・レーンの物語を締めくくるにふさわしい出来と言えるだろう。

  • 4作続けて読んできたので、シリーズが終わってしまうという惜しさと、作品自体の意外な結末に、読んだ後はかなりショックを受けた。しかしながら自分にとって大切な作品であることには変わらない。

  •  ドルリー・レーン四部作のラスト。『最後』まで読んでこその四部作だと噂には聞いていたが……。
     全くもってその通りでした。
     相変わらず、サム警部は良いキャラクタで親近感がわくのですが、その娘のペーシェンスはいけすかないまま。この時代の(知的な)女性がどういう風なのか全く知らないし、想像も出来ないからだろうけれど、ゴードンに対しての彼女の態度が一切理解できませんでした。
     つまりはあれ? こっちは恋多き女で場数も踏んでるはずなのに、本を相手にしてる学者の言葉に赤面したりドキドキしたりしてる自分が情けなくって、口惜しいってこと?
     ってまあ、そんなことはどうでもよくて。
     XYZの三悲劇とはしょっぱなから雰囲気が違い、ああラストに向かってるなぁと痛感。レーン氏のどうでもいい秘密主義は相変わらず顕在してましたが。かわいそうに、暗号が解けてたならパットやサム警部に教えてやりゃよかったのに。(って、教えてたら多分この物語、成り立たないよな。)
     以下ネタバレ、反転処理。
     後半に差し掛かった辺りで、この斧持った男がレーン氏だったら面白いよなぁ、と空想。シェークスピアに傾倒してるし、文化的価値のあるものを保護する為ならこれくらいやりそうだし。ただ、今にも死にそうな(失礼)じーさんに斧を振り回せるのか、と。
     結果、やっちゃったみたいですけどね。あれ、つまりはレーン氏が殺したんだよね、ハムネットを。
     この作品はもともと四部作にするつもりで書いてたらしいが、色盲と耳が聞こえない人と、異なった障害をもつ人間二人が関係してくる事件がラストにきても違和感がないのは、レーン氏は耳が聞こえない探偵っていう設定を前三作で読者に慣れさせていたからだろうな、と。
     ラスト、あれはレーン氏、毒飲んで自殺してるんでしょうか。
     確かに「最後の事件」ではあったな。

    04.09.09

  • (1984.12.31読了)(1983.12.03購入)
    *解説目録より*
    サム警部のもとに現れた七色の髭の男が預けていった手紙の謎は? シェイクスピアの古文書をめぐる学者たちの争いは、やがて発展して、美人のペーシェンスを窮地におとし入れ、つんぼの名探偵レーンをまきこむ。謎また謎の不思議な事件続き。失踪した警官の運命は? ロス名義の名作四篇の最後をかざるレーン最後の名推理。

    ☆E.クイーンの本(既読)
    「Xの悲劇」E.クイーン著・大久保康雄訳、新潮文庫、1958.10.30
    「Yの悲劇」E.クイーン著・大久保康雄訳、新潮文庫、1958.11.15
    「Zの悲劇」E.クイーン著・横尾定理訳、新潮文庫、1959.10.20

  • サム警部のもとに現れた、奇妙な色のひげの男。
    その男が預けていった手紙の謎。
    シェークスピアの古文書をめぐる怪奇な事件は、
    サム警部の要請によって事件に関わった
    名探偵ドルリー・レーンを巻き込んでより複雑さを増す。
    不可思議な事件の最後に待ち受ける衝撃の結末――。

    クイーンが別名義で発表した、
    ドルリー・レーン四部作のラストを飾る作品。
    原題「Drury Lane's Last Case」。

    X、Y、Zの各「悲劇」で名推理を見せてくれた
    名探偵ドルリー・レーンだが、この作品をもって
    文字通り「最後」の活躍となる。

    事件は、今までのように殺人事件がメインではなく、
    シェークスピアをめぐる古書の盗難事件や
    警備員の失踪事件などに端を発する一連の怪事件が主軸である。

    それらの事件の謎に挑むのは、レーンはもちろんのこと、
    サムの娘・ペーシェンスや、若き学者ゴードン・ロー。
    そういった面々の中で、レーンがやや精彩を欠いていて
    どうにも覇気がない様子なのだが、ラストまで読めば
    その違和感にも完全に納得がいく。

    「X」や「Y」はもちろん、「Z」も
    「意外な犯人」という点に重きを置いていたわけだが、
    この作品も、シリーズの最後を飾るにふさわしく、
    「意外な犯人」の究極を行くパターンを見せてくれる。

    もちろん、今となっては使い古された手かもしれないが、
    クイーンの時代にはかなり衝撃的な結末だったであろう。

    また、それ以外にも、ミステリーではおなじみである
    「双子」といったガジェットも登場していて、
    本格ミステリーの原型を見たという感じ。

    話がやや錯綜していて混乱しやすいかもしれないが、
    本格らしい本格といった作品で面白かった。

    なお、今回から、評価は星5つをフルに活用して
    つけるという方針に改めたので、
    星4つという評価になっているが、
    これは平均以上に面白かったという意味である。

  •  X・Y・Zそして最後の事件。
     まさに4作合わせての作品でした。

     昔々若かりし頃、評判の高い「Yの悲劇」だけを読み、訳が気に入らなくて他の作品を読んでいませんでした。近年国名シリーズを読み始めたのをきっかけに、レーンものもあらためて読み出したのですが、どこかで読んだ「すべては4作目への伏線」との言葉を物語の最後に思い出しました。

     あるべくしてある起承転結の4作。3作目にレーンではなく、サム警部の娘の活躍ばかりが目立ってきて「?」と不満を抱いた方も、是非「最後の事件」まで手に取って見てください。

全41件中 11 - 20件を表示

著者プロフィール

エラリー・クイーン。フレデリック・ダネイとマンフレッド・B・リーの合作ペンネーム。従兄弟同士で、ともにニューヨーク、ブルックリン生まれ。1929年『ローマ帽子の謎』で作家としてデビュー。ラジオドラマの脚本家やアンソロジストとしても活躍。主な代表作に『ギリシア館の謎(32)、『エジプト十字架の謎』(32)の〈国名シリーズ〉や、『Xの悲劇』(32)に始まる〈レーン四部作〉などがある。また編集者として「エラリー・クイーンズ・ミステリ・マガジン」を編集、刊行した。

「2021年 『消える魔術師の冒険 聴取者への挑戦Ⅳ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

エラリー・クイーンの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
エラリー クイー...
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×