犯罪 (創元推理文庫)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (277ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488186029

感想・レビュー・書評

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  • フェーナー氏は永遠の愛を誓った妻を殺してしまった。
    誓って以来数十年、愛蔵のレコードコレクションを捨てられた時も
    些細な事で怒鳴られた時も彼はただひたすら従順に妻を愛した。
    束縛や支配にすら他人には思えても、それはフェーナー氏だけがわかる愛なのだ。誓ったその時の妻の眼の奥に映った脅えや弱さを守ると決めた彼の愛なのだ。ならばなぜ彼は妻を殺したのか?
    彼女の愛を受け止める許容のコップが溢れてしまった?
    そんな単純ではないはずだ、もっと複雑な・・・・
    そう!お風呂のお湯が腰までしか残って無いのを注意したら
    「だったらお湯足せばいーじゃーん」
    カトゥーーーーーン!ぐらいの動機が!ねぇ!フェーナー同志よ!

  • "今年読んだ小説ベストワンに選んでおきたい。短編集だが、どれも読みごたえのある作品ばかり。人間の心理を丁寧に描写している。事件が起こるまでのストーリーの語り口、リズムがなんとも言えない。
    この人の他の作品も翻訳されているようなので、読んでみたい。"

  • ドラマチックな事件など一つも起こらない、しがない市井の人々の犯罪を弁護士である語り手の目線で綴った短編集。
    事件そのものと、人々が犯罪を犯すあるいは巻き込まれるに至る経緯が、簡潔で短いながらも時間と空間を自在に感じさせる文章でこれ以上ない程淡々と語られる。
    しかし読めばその人物たちそれぞれの「事情」になぜか得心してしまうのだ。
    最後の一編が「エチオピアの男」なのがまた良い。

  • 短編集です。
    これは犯罪?罰せられている人に本当は責任があるのか?という問いかけをする作品が多く掲載されています。
    簡単に読めるので暇なときにオススメです。

  • 刑事事件専門の弁護士である著者が描く11の犯罪。
    犯罪の態様は様々だけど、そこに共通してあるのは人間そのもの。「物事は込み入っていることが多い。罪もそういうもののひとつだ。」

    「棘」では、実直な警備員がちょっとしたきっかけで精神を壊し、犯罪を引き起こしたその過程に怖気をふるったが、「エチオピアの男」では結末に希望を見出しほっとする。
    犯罪と人間を描いた作品だけに全編モノクロームの印象が付きまとうが、その中にあって、どの作品にもさりげなく登場するりんごの赤色が印象的。

    犯罪を犯すものとそうでないもの、それらを取り巻く物語は本当は大差がないのかもしれないと思う。
    だとしたら、そこを分け隔てるのは、本の少しの幸運なのかもしれない。
    ーー私たちは生涯、薄氷の上で踊っているのです。氷の下は冷たく、ひとたび落ちれば、すぐに死んでしまいます。氷は多くの人を持ちこたえられず、割れてしまいます・・・幸運に恵まれれば、なにも怒らないでしょう。幸運に恵まれさえすればーーー

  • 弁護士がえがく、さまざまなかたちの犯罪。
    法をすり抜けるもの、我慢の限界に達しての犯罪など人間模様とともに一つ一つの事件を紹介している。

  • 弁護士の「私」が手がけた犯罪事件を描く、短編集。
    筆者自身も弁護士であり、事実を基にして書いたというだけあって、フィクションとは思えない内容だった。

    読み手を選ぶとは思うが、犯罪行為の悲惨さよりも、人間そのものへの愛しさや哀しさが胸に残る。

    犯罪は道を踏み外して起こるのではなく、人生の延長線上にあって、誰もが通り得るものなのだ。

    他の著作もぜひ読みたい。

  • 弁護士経験も豊富な作者による、短編集。ジャンルとしてはミステリーの領域なんだろうけど、謎解きというよりは犯罪心理を主題としたような掌編集。

    誤約が多かったらしいのだが、原文を知らない(知っていても読めない)身分としては、あまり気にならなかった。それはともかくも無駄を排した怜悧な文章がいかにもドイツ人らしいなと思えた。そういう文体でも暖かいドラマは表現できるし、余韻を残すのにも適している。下手に感情豊かに歌い上げる系の文体より、こっちの方が読んでいても心地よいなぁと思った。

    短い作品ばかりなので気軽に読めるが、短いながらも小説の醍醐味を味わえる。さすが本屋さん大賞受賞作だと思った。ヨーロッパのミステリーまだまだ奥が深いなぁ

  • フェーナー氏 ☆4 
    一生愛すると誓った妻を殺めた老医師 ドイツ人ならではの堅気を感じる

    タナタ氏の茶碗 ☆5 
    面白くて一気読み 映像で見てみたい ストーリーは単純だけどスピード良く読める ドイツ人から見た日本人ってどこか不気味(又はミステリアス)なんだろうか

    チェロ ☆4.5 
    姉が事故で障碍者になった弟にチェロを弾く

    ハリネズミ ☆1 
    かしこを隠している弟が兄の裁判で巧みに兄を助ける ただただつまらなかった

    幸運 ☆2 
    カレ&イリーナ イリーナの客で腹情死したデブの男をカレが始末するだけの話

    サマータイム ☆2 
    彼女が浮気していると勘違いした貧乏青年の話

    正当防衛 ☆1 
    殺し屋が不良青年二人に絡まれ殺害するが取り調べで一言も口を利かない だからなんやねんと言った話 
    ベルリンの治安の悪さと眼鏡が保険(プライベート保険)で買えるのはわかった

    緑 ☆2.5
    動物や人が、数字に見える青年 自分は「緑」なんだそうだ(数字ちゃうんかー!ww)

    刺 ☆5 グイグイ読んだ
    美術館の警備員 本来は6週間に一度のローテンションで持ち場交代するのだが事務員のミスで23年間配置転換されなかった 展示室内全部の長さを計測したり、来館する人たちを観察したりいろいろなことをして過ごすが彫刻「刺を抜く少年」の刺が気になってから少しづつ精神が崩壊していく 最後、警備員が破壊した残骸の修復作業をする女性 彼女の机上には京都で作られた古い仏陀の頭象が微笑んでいた… このほっこりした終わり方は好きだ 

    愛情 ☆2
    好きすぎて彼女の背中の肉を切っちゃった青年 悪気はないの…ただ好きだったから…って、痛いやろがー! パリ人肉事件(ウィキで読んだ 写真が…あかん、あの顔がまだ脳内にこびりついてる…マジキモイ)がちらっと出てくる

    エチオピアの男 ☆5 
    大河ドラマのようだった 

    面白いのとそうでないのとの落差が激しい でもその落差が面白かったりする

  • 著者は弁護士としても活躍するドイツ人。実際の事件に着想を得て、異様な犯罪の機微を描いた短編集。博物館の警備員として働く男が、「棘を抜く少年」という彫刻に魂を奪われ、棘が抜けたのかどうか気になって仕方がなくなる『棘』に、私も魅入られました。最終話の『エチオピアの男』には心を揺さぶられます。犯罪に走った人々の人生に触れる本作は全体的に暗く、えぐいシーンも結構ありますが、洗練された印象。

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