ヨルガオ殺人事件 下 (創元推理文庫)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488265120

感想・レビュー・書評

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  • 面白いが、ややこしい。
    前作同様に入れ子構造で、今回は丸ごと1冊が中に入っている
    真ん中部分の推理小説(女優が殺される)を読んだ女性が過去の実際の事件の真相に気がついた、と両親に電話したあとで失踪する。
    推理小説部分は半分くらい分かる
    前後の現在編の部分はナルホド、読み終えてから(一応)納得。やっぱりややこし過ぎるのでは?

  • 「カササギ殺人事件」の続編。上・下の全2巻。カササギ事件の主人公が2年後、新たな事件の真相を探ることになる…という話。景色の表現が好き。現代人の一人称視点なのに難解な言葉で書かれてるのをけっこう見るけど、あれって不自然だよね…。普通の言葉で、でもちゃんと景色が目に浮かんでくるように書かれてる。作中作も本編もきっちりミステリーで、イヤミスとかじゃないけど、最後の方まで読まないと犯人が当てられなかったりするのもすごい。ただ、作中作の編集者という作中作作者の作品傾向をよく知ってる主人公が、序盤から「こいつこんなふうによく文章中にしかけしてるよな」って思い起こしてるのに、事件解決して後日談に入ってからやっと最大の仕掛けに気付いてるのが不思議。あと、作中作に出てるくる犬、チャウチャウ違うよね。さんざん小さい犬って書いてるし。

  • 巻末の解説にあるように、本作は実にたくさんの関係者への「インタビュー」形式によって成り立っている。確かにそのような形式では、解説者の指摘のとおり、著者の力量が試されるように思うが、著者はほかの作品でも共通して、端役と思われる人物をも印象深く書くことができているように感じる。
    作中作も含めて、上下巻の中にたくさんの登場人物、土地などがちりばめられて展開されていて、情報がたくさんあって混とんとしているのに、最後には1つの「真実」に集約されるのは鮮やかで、そして上巻の感想(?)でも触れたが、何より、事件そのものは陰惨なものなはずなのだけれど、不思議な安心感がある。
    謎解きの面でも、少しづつ真実が明らかになってくる過程が丁寧に書かれていると感じたが、語り手のスーザン・ライランド個人の物語という意味でも、彼女と家族との関係がやはり丁寧に描かれていると感じた。
    また、解説には作中作の謎解きが秀逸であるとしていたように思うが、私はどちらかというと本筋の物語の方が面白く読めた。作中作は、本筋の「ヨルガオ殺人事件」を引き立てるためのもので、どこかにそのヒントがないかという、最初からそういう観点で読んでしまったからかもしれない。
    構成の面では前作と似ていて、また、そもそもホロヴィッツ氏の他の作品もそうなのだと思うが、奇をてらった展開というよりは王道、正統派、といった印象を受ける読者が多いのではないだろうか。それはしかし、ありきたりさを感じるということではなく、順当な、正統派のミステリの風格があって、個人的にはとても好みであった。正直なところ、各種ミステリランキングは信用しすぎない方が良い時もあるが、この著者に関しては、安心して読めるし、逆に言えば、安心したいときにこそ読みたくなる著者のように思う。

  • アラン・コンウェイは本当に嫌な奴だなー。
    アティカス・ピュントは魅力的な探偵なのになー。
    アンドレアスかっこいい!
    最後、スーザンとアンドレアスが、元に戻ってよかった。
    この二人の行く末も結構気になる。

  • 面白すぎる。

    ヨルガオ殺人事件と、作中作の愚行の代償も、どちらも完成度が高すぎて、一冊で二つ楽しめるお得感!笑

    ミステリ好き、特に海外作家好きの人にとっては、たまらない作品なのではないか?
    僕は自身はよく知らない人の名前も出てきたので所々のめり込めない部分もあったけどまったく問題なかった

  • ❶2008年。あるホテルに投宿した作家アラン・コンウェイは、つい6週間前にそのホテルで実際に起こったという殺人事件に触発され一篇のミステリーを創作した。それがアティカス・ピュントシリーズ第三弾『愚行の代償』だ。しかも、アランはたまたま実際の殺人事件における真犯人を知ることとなり(すでに有罪判決を宣言され収監されている別の男は冤罪と言うことになる)、『愚行の代償』本編の随所にこっそりとそのヒントを潜ませておいた。しかしアランは個人的な事情からそのことを公にせず、そのまま2014年に死没した。
    ❷2016年。該ホテルのオーナーの次女セシリーは、『愚行の代償』を読んでいて突如アラン・コンウェイの隠された意図に気付く。しかし彼女はオーナーの両親に『愚行の代償』の中で真犯人の名前が明らかにされていると告げただけで失踪してしまう。彼女の身を案じる両親は、生前のアラン・コンウェイとその作品に最も近しかった元編集者スーザン・ライランドを訪ね、スーザンに『愚行の代償』の隠された意味を明らかにしてセシリーを見つけ出してくれるよう嘆願する。多額の報酬に魅かれたスーザンはさっそく現地に飛び、関係者から証言をとり、また『愚行の代償』を読み返して、問題の解決にあたろうとするのだが……。
    ❸202X年。我々読者はまず作中作『愚行の代償』の全文を読むことになる。続いて本編、『愚行の代償』を読みながら謎を解き明かそうとするスーザンの活躍を、読みながら謎を解き明かそうとすることになる。
    う~ん、入れ子細工のたまて箱やぁ……。

    全体のテイストやスピード感がとってもクリスティっぽくて素晴らしい。さすがはパスティーシュの名手アンソニー・ホロヴィッツだ。
    作家・アラン・コンウェイの生前の作品が意図せず現在の殺人事件におおきく関わってくるというのは、綾辻行人”館シリーズ”の建築家・中村青司みたいでおもしろい。こちらはさすがにホロヴィッツは知らないだろうが。

    ただし、セシリーが『愚行の代償』を読んだだけで”真犯人がわかった!”というのは……ちょっとムリがある。また、セシリーが両親に「すぐ前にあってわたしをまっすぐ見つめかえしていたの」とだけ思わせぶりに告げて失踪するのもいかにもといったベタな感じがした。

  • 数々のミステリー関連ランキングでトップを走りつづけるアンソニー・ホロビッツ。

    今作もこれでもかの満腹感がある。

    一つのミステリー作品の中に別のミステリー作品を織り込み、しかも後者は一回読んだだけでも面白い上に、前者との関連でさらに深い謎を提示するという超絶技巧。

    最近はサスペンス寄りの作品が多い中謎解きに振り切った本格推理物なので、お酒でも片手にじっくり楽しみたい一作。

  • いまから数年後に、”ムササビ”だか”アサガオ”だかが出て、すっかり本作の内容も忘れてしまっているだろう未来の自分に向け書いとくと、上巻まではほんと面白かった。
    本好きの人間にとって、現実の殺人事件の謎の解明に、過去のあるベストセラー推理小説がヒントを与えてくれていると聞いたら、一も二もなく読んでみたくなる。
    しかも、舞台が違えば、凶器や犯行もまったく異なり、その本の編集者でさえ事件との関連性に気づかないほどなのに、読む人が読んだらたちどころに犯人がわかってしまうというのだから俄然興味が湧いてしまうではないか。

    下巻の途中までの、ピュントシリーズの作中作を読んでいる時は楽しかった。
    作者もよっぽど自信家なのか、『愚行の代償』を読み終えた主人公に、「満足の吐息をつかずにいられない」とか、「生き生きと胸のうちに湧き上がる」などと感慨にふけらせ、自分で自分の作品を公然と褒めているのだが、確かにまぁ面白いんだよな、前半までは。
    おまけに巻頭の絶賛レビューなんかも、何をわざわざとか、そこまでしなくてもなんて思ってたら、きっちりそれも後で振りになっているという小憎らしさ。

    ただ、なんでホロヴィッツの作品は作中作の方が面白いと感じるんだろうかという、上巻で抱いた疑問は解けた気がする。
    クリスティへのオマージュとして捧げられたピュント物のほうが、変態的な性的志向やら、現実の暗い側面やドギツイほうに向かわない安心感があるのもさることながら、やっぱり主人公が正真正銘の探偵だというのが大きい。
    現場に行ってピュントがフンフンと頷いているだけでも、”わぁ、なんだろう"って妙に高揚感に満ちてくるが、スーの行き当たりばったりで目算もない、聞き取りなんだが喧嘩を売りに行っているんだがわからないような道中記を読まされても、彼女の偏見に満ちた(かなりイギリス人らしいシニカルな)予断や印象に付き合わされているだけで、ひたすら我慢しながらページをくるしかないのだ。

    延々と付き合わされた挙げ句、実は『愚行の代償』の中身ではなく、1ページ目の献辞に、一番の謎が隠されていたとわかった時には、椅子から転げ落ちそうになった。
    いやさぁ、なんかこう、もっと深いところで関連付けておいてくれよと。
    それで星座がどうとか知らんわ、もう。
    ピュント物でも、事件現場で見せる秘書のわざとらしい小芝居も何なんだろうね。
    頭にでっかいフラグが立ったまま、その後でピュントが一人「この事件に関わるべきでなかった」なんて独白させたら、もう答え見えてんじゃん。

    “それまで砂糖だと思っていたものを塩に変える”など訳はない作者のこと、それこそクライマックス近くで真相や犯人でさえ突然と差し替えることもお手の物であろう作者のこと、もう少し”えぇ!!”とビックリさせる大団円を迎えられなかったものか。
    「犯人はヤス」と言われても、「うん、知ってた」と言う他ないし、思わせぶりな容疑者も、あとで振り返ってみれば雑な賑やかし程度の脇役にしかすぎなかったわけで、読んですぐ忘れるレベル。
    カササギ読んだのに、スーって誰だっけだったし、アンドレアスに至っては読み終えてなお、記憶にない。

  • いやいや!すごい構造ですな!
    「カササギ殺人事件」でちょっとだけ残念だった対比もしっかり捉えられていて、昔の作品が現実を揺さぶっている。実際ここまで書いたら訴えられそうだ笑
    本編のミステリー以外に、ケイティの件、マーティンの件、アンドレアスの件と色々出てきて飽きさせない。必読。

  • アンドレアスーーーー!!
    カッコよかった。
    それは差し引いて考えても、ギリシャに住みたくなった。午前中ホテルの仕事して、午後は海風にあたりながらのんびり編集の仕事。最高だな。
    結局誰が犯人だかわからないまま終盤まで読み進めることになった。個人的には一作目より面白かった。アラン・コンウェイ、相変わらず気持ち悪いな。清々しいくらい気持ち悪い。
    でもアンドレアス、メールは不調で受け取れなかったにしても電話の着信無視はどう言うことなのか。

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著者プロフィール

Anthony Horowitz
イギリスの作家。1979年、冒険小説『Enter Frederick K. Bower』でデビューし、YA(ヤングアダルト)作品「女王陛下の少年スパイ!アレックス」シリーズ(集英社)がベストセラーとなる。ドラマ『刑事フォイル』の脚本、コナン・ドイル財団公認の「シャーロック・ホームズ」シリーズの新作『シャーロック・ホームズ 絹の家』(KADOKAWA)なども手掛ける。アガサ・クリスティへのオマージュ作『カササギ殺人事件』は、日本でも「このミステリーがすごい!」「本屋大賞〈翻訳小説部門〉」の1位に選ばれるなど、史上初の7冠に輝く。続く『メインテーマは殺人』『その裁きは死』『ヨルガオ殺人事件』(以上、東京創元社)も主要ミステリランキングで首位を取り、4年連続制覇を達成した。


「2022年 『ホロヴィッツ ホラー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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