- Amazon.co.jp ・本 (466ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488291075
感想・レビュー・書評
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自分にとってイギリスの正統派ミステリはなじみが薄いが、この作品は別格で世界を代表する警察小説の金字塔だと勝手に思っている。
主人公のフロスト警部は風采が上がらない、行き当たりばったりのいい加減なオヤジ。
更にセクハラたっぷりの下品なトークの連発となれば、ユーモアを通り越して引いてしまう場面も多い。
しかし、知らないうちにこの人物の魅力にぐいぐい引き込まれてしまうのが不思議だ。
気づいたときには上下巻1000頁を一気に読まされてしまうのだ。
本国イギリスでは1984年の『クリスマスのフロスト』からシリーズが始まり、現在2008年に発表された『A Killing Frost』までが出ている。
シリーズは『A Killing Frost』で完結となる。その理由は著者のウィングフィールドが2007年に亡くなっているからだ。邦訳は2020年以降となるという情報もあり、いつの日か原書版のペーパーバックに挑戦してみようかとひそかに思っている。
ともあれ、パワフルで、下品で、やさしくて、人情味があって…そして哀愁が漂うフロスト警部。
猛烈に忙しい主人公の魅力に、どっぷりとはまらせてもらった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
微妙に全部のフラグを回収しきれていないのでは?と思う気もするけど、まぁ細かいことを気にするのはやめにしよう。
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何よりもフロスト警部の手口は被疑者の人権尊重の点で問題がある。逮捕者を負傷させながら、本人が勝手に転んで怪我をしたと責任逃れをする始末である。フロスト警部は誤認逮捕もしており、決して褒められたものではない。以下の暴言まで口にする。「犯人なんか適当に見つくろえばいいけど、そいつを証明するとなると、くそがつくほど面倒くさくて、くそがつくほど難儀だもんな」(下巻167頁)。
一方で日本の警察の救い難さを描いた『ポチの告白』と異なり、イギリスの警察には警察犯罪を抑制する仕組みがある。取り調べは全て録音されている。「取り調べの際のやりとりが逐一、録音されている」(上巻336頁)。被疑者には弁護士を呼ぶ権利が保証されている。また、フロストの強引な取り調べを同僚警官が注意するなど、健全な人権感覚がある。
さらに『冬のフロスト』と『ポチの告白』を分かつものはフロスト警部が上司のマレット署長に反抗的なところである。媚びへつらうだけのヒラメばかりの日本の警官を描いた『ポチの告白』とは異なる。フロスト警部はマレット署長の陰口を叩くだけでなく、署長の面前でも反抗的である。これは清々しい。 -
相変わらず最高。
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ある論文によると、落ち込んだとき気分転換に最適な余暇の過ごし方は、何よりも読書だそうです。個人的には納得の感。このフロスト警部シリーズは、ラヴゼイのダイアモンド警視シリーズと並んで、お気に入り。純粋な推理ものではなく、フロストの武器はあくまでヤマカン。推理小説としては変化球だけど、これが面白い。今回は事件がてんこ盛り過ぎて、正直、完全解決にはほど遠い。周りの警官も無能過ぎ、科学捜査のカの字もない。それでもやっぱり面白い。よい読書の時間でした。
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1つ1つの事件を見ていけば、結構解決してるんだけど、あまりにもいろいろと事件が起こりすぎてて、全部解決してめでたしめでたしで物語が終わるまでにはほど遠いと言った状況です。
しかも、モーガン刑事の無能ぶりが凄まじすぎて。
いや、いいの? こんなで。
しかもミスした後、一応口では謝るけど、全然反省していないというか、懲りてないというか。
上司の眼からしたらフロストさんも大概なのかもしれないけど、そういうのとは違った、ホントに本気の、どこにいても使えない人だ。
キャラとして、マレットさんの性格も大概だけど、モーガンさんはその何百倍もヒドイね! -
フロスト警部シリーズ。忙しすぎるのは変わりない。児童誘拐殺人事件、娼婦殺人事件、白骨死体事件、、といくつも同時に事件を抱え、どたばた捜査しながら解決していく話。署長にいらつき、無能な部下にあきれながら読み進めた。フロスト警部の会話や冗談のおもしろさは半端ない。誰にも聞かれてなくても一人でつぶやくところもいい。明るく楽しく読める警察小説。