乱れからくり (創元推理文庫) (創元推理文庫 M あ 1-2)

著者 :
  • 東京創元社
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感想 : 84
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  • Amazon.co.jp ・本 (378ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488402129

作品紹介・あらすじ

玩具会社の部長馬割朋浩は降ってきた隕石に当たり命を落としてしまう。その葬儀も終わらぬうちに彼の幼児が誤って睡眠薬を飲んで死亡する。さらに死に神に魅入られたように馬割家の人々に連続する不可解な死。一族の秘められた謎と、ねじ屋敷と呼ばれる同家の庭に造られた巨大迷路に隠された秘密を巡って、男まさりの女流探偵と新米助手の捜査が始まる。日本推理作家協会賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 序盤の隕石の墜落で、だ、だいじょうぶか?となったが、ラストの一分の隙もない見事な種明かしに一瞬でも不安を感じて申し訳ございません。となった。ミステリー好きなら絶対に外せない一冊。

  • 初泡坂妻夫。いつか読みたいと思ってた。

    タイトル通りに乱れ飛ぶからくりの数々。
    からくり作りから始まったおもちゃ会社の一族の次々の変死、元警官の女流探偵に事件当日雇われた新米助手…。テンポよくどんどん起こる事件に、からくりにまつわる大量の蘊蓄の面白さ、新社会人の助手君のなんとも言えない焦ったさと美しい人妻への恋慕と盛りだくさんで楽しかった。そしてトリック!面白かった。さすが奇術師。

  • 初の泡坂妻夫作品。
    いぶし銀のミステリという印象。とてつもなく大胆で無謀とも言える自動殺人計画や喋りすぎじゃないかと思うほどのからくりに対する蘊蓄など、作品全体に自動人形、からくりに対する執念を感じる。
    機械仕掛け、自動殺人は下手をすればミステリとしての興を削いでしまう要素だと思うが、この作品では犯人の死によってその後の殺人の不可解さが増すという仕掛けが面白い。
    またとんでもない殺人計画を描きつつ伏線は至る所に散りばめられており、ミステリとして完成している。

  •  泡坂妻夫の代表作の1つ。玩具会社の部長、馬割朋浩が、降ってきた隕石に当たるという交通事故により死亡する。
     そこから始まる連続殺人事件。まずは、朋浩と真棹の子どもである2歳半の馬割透一が睡眠薬を飲んで死亡。続いて、朋浩の従妹に当たる馬割香尾里が、迷路で頭を打たれて死亡。さらに、朋浩の従妹である宗児が、人形に仕込まれた毒の針により死亡。続いて、朋浩の叔父にあたる鉄馬が毒を飲んで死亡する。
     殺害可能なのは、真棹だと思われ、主人公である宇内探偵社の梶敏夫が、真棹を連れて逃走するという展開。
     乱れからくりというタイトルにふさわしいトリックで、犯人は、なんと最初に隕石に当たって死亡した朋浩。分類としてはプロバビリティの殺人になるのか、朋浩が仕込んで置いた連続殺人のからくりが動き出すというプロット
     透一は、熊んべという人形に入っている電池に模した睡眠薬の瓶を利用したトリック。「電池がない」という言葉のダブルミーニングを利用したトリック。熊んべというに人形には、文字通り電池が入っていなかった。しかし、本当は電池に模した睡眠薬入りの瓶が入っていた。電池に模したものが入っていても、電力がないと電池は動かない。中に、電力がない電池が入っていたと読者にも、登場人物にも誤信させるが、実際は電池があったというトリック
     香尾里殺しは、「枯れ井戸」という言葉を残して死亡。真相は、カレイドスコープ。万華鏡に仕込んだ火薬により殺害。これはうまい、
     宗児殺しは、まさにプロバビリティの犯罪。人形に仕込んでいた毒針により殺害。
     鉄馬殺しは、全てに毒を入れていたが、解けるカプセルは1個だけだったというトリック。疑いが真棹に向くが、毒殺され、ほかのカプセルにも毒が入っていることが分かれば、解けるかどうかまでは確認しないという点は説得力はある。プラスチック製のカプセルを使うためのカモフラージュとしてマドージョというデキの悪い人形を作っていた。
     伏線、伏線、伏線と手品師の泡坂妻夫らしい、無駄のない構成。最後に隠し財産が見つかるが、それは天保銭に模されていた。天保銭を集めていたという伏線がいきる。
     朋浩と真棹がボストンに行っている2週間の間に、連続殺人を終わらせるというプロバビリティの犯罪の計画。それが隕石が降ってくるという事件で朋浩が死に、真棹に容疑が向くという皮肉
     宇内舞子が警察を辞める原因となった、収賄事件の真相だけは語られず。この点だけはちょっと気になる。ミスディレクションなのだろうが。
     古典落語のように、よくできたミステリ。今となっては、もっととんでもない意外性のミステリはあるが、最初の被害者が犯人という仕掛けは面白い。ダイイングメッセージ、迷路の暗号、隠し財産など、本格ミステリ的ガジェットも豊富。キャラクターもまぁ、魅力的である。欠点らしい欠点がない、よくできた本格ミステリ。★5としたい。

    ● メモ
    勝敏夫→元プロボクサー
    宇内舞子→経済研究会という経済関係の興信所の社長。元警察官
    かたかた鳥→砂の重さを利用したおもちゃ
    ひまわり工芸→玩具会社。レーシングカートのおもちゃの失敗で倒産寸前
    馬割朋浩→ひまわり工芸の制作部長
    馬割真棹→朋浩の妻。宗児と不倫している。
    馬割鉄馬→ひまわり工芸の社長
    馬割宗児→ひまわり工芸の事実上の経営者。営業部長
    香尾里→宗児の妹。左の目を撃たれて死亡
    順吉→ひまわり工芸の社員。香尾里の婚約者
    馬割透一→幼児。睡眠薬を飲んで死亡する。
    ジュモウ→宗児がホテルから出てきて言った謎の言葉
    →ジュモウのビスクドールに宇内舞子が似ているから言った。
    マドージョ(魔童女)→気持ちの悪い玩具

    隕石が落ちてくるという交通事故。朋浩が死亡
    国際玩具見本市
    日本のおもちゃの歴史についてのうんちくあり
    宇内舞子が警察を辞めたきっかけの受賄事件に馬割朋浩の存在がある。

  • 泡坂さんの本を立て続けに読んでいたので、仄めかし方に慣れ、犯人はだいたい検討がついてたんだけど、複数名殺されたうちの2名ほどはなかなか思いつかなんだ。衒学的な要素もあり、カラクリやおもちゃに関するお話や金沢の歴史など、盛りだくさんで楽しめました!

  • とある本で紹介されてた。なんとなく想像ついたけど、流れがわかりやすくてスルスル読んだ。夢オチみたいなおはなし。

  • ミステリー小説初心者の私ですが、全く予期しない展開に、最後までワクワクしながら読み進めました。
    からくり人形にも興味が湧き、いつか博物館を巡ってみたいと思っています。

  • 米澤穂信さん推薦の本。探偵がさる男を尾行していると、その男に隕石がぶつかり死ぬ、という紹介。これは読まねばと思い読んでみた。たしかに殺人方法がおもしろく、ぐいぐい読んでしまった。が、昭和52年発表作品だが昭和30年あたりかと錯覚するような時代感覚だった。

    ボクサーになることをすっぱりあきらめた若者、勝は求人広告で「宇内経済研究会」の扉をたたくが、そこは探偵事務所だった。所長は豪快な女性、宇内舞子。すぐさま尾行がはじまり、件の事件に遭遇するのだ。

    続いて起こる連続殺人。玩具会社一族が都合4人死ぬ。その殺人方法がおもしろい。題名のごとく「乱れからくり」なのだった。

    しかし、探偵舞子の口調が「○○さ」「おう、こっちだ」と、昭和30年代前後の日本映画で出てくるはすっぱな女性の時の口調。男女の関係も昭和52年発表とは思えない古めかしさ。文体と人間関係が発表年の20年前の昭和30年前後と錯覚した。泡坂氏は昭和8年生まれとあるから、昭和52年だと44才だ。昭和52年あたりの中堅年令層の価値観はこういう感じだったのかなあ。


    1978第31回日本推理作家協会賞

    1977.12幻影城ノベルス 発表

    1988.2.25第1刷(双葉文庫) 図書館

  • 泡坂作品は『しあわせの書』『生者と死者』などの変わった仕掛けがある本ぐらいしか読んでいなかったが、本書は予想に反して意外と正統派な本格。

    からくり三昧といったところではあるが、殺害トリックに関してはなかなか現実味があるトリックを使っており、読者が理解できないような仕掛けはほとんど使っていないのは好印象。
    透一に睡眠薬を飲ませるトリック、鉄馬の毒殺のトリックなどは非常に面白い。
    "カレイド"もそうだが、特に"電池がない"のダブルミーニングにはやられた。
    だが少し犯人を朋治に断定する根拠は弱いように感じる。

    からくり人形の歴史、仕掛けなどが長々と説明されるところはややうんざりしたが、ハマれる人はハマれるだろう。
    不満点はあるが、なかなか面白い作品。

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著者プロフィール

泡坂妻夫(あわさか つまお)
1933~2009年。小説家・奇術師。代表作に「亜愛一郎シリーズ」など。『乱れからくり』で第31回日本推理作家協会賞。『折鶴』で第16回泉鏡花文学賞。『蔭桔梗』で第103回直木賞。

「2020年 『秘文字』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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