秋の花 (創元推理文庫) (創元推理文庫 M き 3-3)

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  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (268ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488413033

感想・レビュー・書評

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  • これこそ北村薫の真骨頂か。胸が締め付けられるような思いになる。最後にしか出てこなかったが、円紫さんの判断は本当に素晴らしい。

  • 正直なところ、昔読んだときは他の話と比べてあまり好きではなかった、そのあまりの重さゆえに。
    今になってしっくるくるのは、少し大人になったということなのかもしれない。

  • 最後の最後に円紫さん登場。ほんとに、かみさまみたいな人だ。
    河川敷に降りる天使の梯子と、手を差し伸べる円紫さんと、見つめる私。死んだ子の母親が生きている子を脱がしていく。そして最後の台詞が…これで締めるか!という…。断腸の救い。
    私の文学論も、彼女たちの言葉も思い出も、ラストへの導きなんだなあ。

  • 学園祭前夜に起こってしまった悲劇。
    双子のようにいつも一緒にいた一人が転落死してしまったら、残された者は...。私が一生懸命に添いながらも、悲劇の原因を探ぐり始める。
    残された友人、残された母親...残されたものたちの想いにも触れながら、事件を探り、円紫さんと真相にたどり着く先で、「私」自身が、生と死に向き合い苦悶することで、成長していく姿がとても愛しく思えました。

  • 二冊目が姉をテーマにしたもの、であればこれは母がテーマのようだ。文化祭ー目前にさて屋上から一人の女子高生が転落した。果たして事故なのか?自殺なのか?それとも…
    いつもながら円紫さんの推理には脱帽。切なすぎる結末は衝撃的でもあった。

  • 解説もすばらしい。主人公たちの会話に出てくる『野菊の墓』にそんな意味があるとは考えもしなかった。
    こうしたミステリーは謎を追うのに急ぐあまり、こういったディテールに隠された作者の想いに気づきにくい。”作者は無駄なことは書かない”ということをもっと気にかけて読まなければ。

  • シリーズ3冊目。再読。長編1篇収録。ここまで読んできて、テーマが明確な2冊目「姉」と3冊目「母(親)」だと思いました。どちらも好きですが、私の琴線に触れる言葉や場面の多かったのはこちら。謎自体は、非常に辛いものですが、だからこその「母(親)」なのかもしれません。
    2冊目にある何気ない布石が、繋がり、話が始まります。津田さんの母親の素晴らしさが、この本の一番の魅力だと思います。出てくる場面は少ないですし、それほど話す言葉が出てくるわけでもありませんが、彼女の強さ、優しさ、清廉さがなければこの話は、成り立たないだろうし救われないだろうと思いました。円紫さんも、謎解きが始まった当たりから、親の立場で大切なことを沢山伝えようとしており(作者の言葉なんでしょうけれど)それも、とても好きです。ですが、一つだけ、同意できないところがありました。「もろさ」は、肯定と同時に否定してほしかったです(p.244のくだり)。続きの「生きた」ことがどう残るのかのところは、好きです。)

    少し、好きなところ、気になった所を書き出します。
    p.139-140。正ちゃんによる展開。特に「馬鹿だなあ。本当に悪い奴が相手だったら、動けなくなったらおしまいだよ」の科白のところ。「私」のそれに対する考え「・・・芥子粒ほどの救いもない・・・」のところも。一箇所には絞れませんが、この会話の展開が、宮部みゆき氏の話の一場面を思い出させます。車にはねられた女性の話のところです。

    p.182。葛飾の娘、手児奈。無学な私は、葛飾が地名と知りませんでした。「手児奈=下総国勝鹿(葛飾)の真間(現在の千葉県市川市)に奈良時代以前に住んでいたとされる女性の名前。(Wikiより)」だそうです。

    p.193。ムクロジ。ソープナッツ(soapnut)。無患子(むくろじ)の実の中の黒い種は、「羽根突きの羽根」の先の黒い玉に使われるそうです。

    p.193。ヨウシュヤマゴボウ。別名、アメリカヤマゴボウ。American Pokeweed (Phytolacca americana)。納得。よく見かけるはずです。

    p.221。人は生まれるところを選ぶことは出来ない。・・・どのような人間として生まれるかも選べない。気が付いた時には否応無しに存在する《自分》というものを育てるのは、ある時からは自分自身であろう。それは大きな、不安な仕事である。

    p.223。面長の顔の形は・・・。どれを与えるかを選ぶことは出来ないが、親は子に、さまざまなものを伝える。・・・・四十を越した時、津田さんの顔に現れる筈のものだったのかもしれない。

    p(251からの流れを受けて)255-p.256。「・・・しかし、僕だったら、・・・《許す》ことは出来そうにありません。ただ-」「救うことは出来る。そして、救わねばならないと、思います。・・・」

    p.256。「-眠りました」

  • 長編で正直途中で少し退屈した。
    ただ、最終盤の悲しい話は本当に心に来ました。

    一点だけ、この話に探偵はいらないのでは。

  • 衝撃的。
    こんな辛い出来事があったら
    立ち直ることができるか分からない。

    私は人が亡くなる物語が怖いので
    なかなかこの本を開けなかったのだけど
    このシリーズが好きだし読みたかったので
    やっと読み終わることができた。
    真相が分かるまで、出来事に謎が多くて
    悪意のある殺人だったらと怖くなってしまったけれど
    そんなこともなく、読み終わってホッとすることができた。

    だけども、
    悪意がないからこそ
    本当に恐ろしい。
    なにが起こるか分からないから
    しっかりと生きて行かなければならない。
    140531

  • 円紫さんと私シリーズ3作目
    連作短編かと思いきや、ここにきて長編になった

    今回は人が死んでるので、日常の謎にしては結構重い
    ただ、その事件の真相に関しては日常の謎系統

    女子高生が屋上から落ちて死んでしまった
    自殺か事故か他殺か?
    そしてその子の親友の様子がおかしい
    そりゃぁ何か関係はあるわな~

    途中はちょっと中だるみしたけど、最後のところでかなりぐっときた
    遺族は「許す」のではなく「救う」事ができるんだねぇ
    もし自分が同じ立場になったら救えるかなぁ・・・
    などと、ちょっと考えてしまった

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著者プロフィール

1949年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。大学時代はミステリ・クラブに所属。母校埼玉県立春日部高校で国語を教えるかたわら、89年、「覆面作家」として『空飛ぶ馬』でデビュー。91年『夜の蝉』で日本推理作家協会賞を受賞。著作に『ニッポン硬貨の謎』(本格ミステリ大賞評論・研究部門受賞)『鷺と雪』(直木三十五賞受賞)などがある。読書家として知られ、評論やエッセイ、アンソロジーなど幅広い分野で活躍を続けている。2016年日本ミステリー文学大賞受賞。

「2021年 『盤上の敵 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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