秋の花 (創元推理文庫) (創元推理文庫 M き 3-3)

著者 :
  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (268ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488413033

感想・レビュー・書評

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  • 円紫さんと私シリーズ3。
    和泉さんの気持ちを思うと本当に苦しくなりました。
    ところどころ出てくる小説のことや詩、そして落語は毎回楽しみです。
    今回はかなり長い期間『私』は苦しんだようです。
    さぁ4巻はどんな話か今から気になっています。

  • 時として残酷に振る舞う「運命」、それに翻弄される人の命のはかなさ。読み終わった後、あまりのやるせなさに、しばらくぼうっとしてしまった。
    『空飛ぶ馬』『夜の蝉』と同じく、本筋がすばらしいのはもちろん、文章からあふれ出る「私」の本への愛がまた良い。

  • シリーズ3作目

    記憶に残る一冊になりそう。。。
    1つの物語で、人が亡くなる事件が起こったのだが
    その真相が 本当に日常の一コマからなるもので。。。
    切ない。。

    許すことは出来なくとも、救う事は出来る。
    そうなれる人はどの位いるのだろう。。。

    「私達って、そんなにもろいんでしょうか」の答え、
    「百年生きようと千年生きようと、結局持つのは今という一つの時の連続です。もろさを知るからこそ…今をつかまえて、何かをしようと思い、何者でありたいと願い、また何かを残せるのでしょう。」

    秋海棠も忘れられない花になりそう。。
    (別作家さんの別作品のイメージにも重なる。。)

    でもそんな中にも
    「雑念のない子供の頃の読書には、今となっては到底味わえないような没我の楽しみがあった。」とか
    耳食=耳で食べてはいけません とか
    生まれた町につれてきたとき、≪この道はどこの道よりも素敵だ≫と思う誰かについて とか

    なるほどなぁ。。という素敵な考え方が散りばめられていて


    冒頭久世光彦氏
    解説北村暁子氏

  • 円紫さんと私シリーズは人の死なないミステリだったのでは??
    それなのにあぁ...なんと切ない...。

    もしかしたら、いつかどこかで自分も和泉さんと同じような
    立場に立たされてしまうことがあるかもしれない...と、人一人の命をも
    奪ってしまうこんな運命のいたずらは、紙一重で日常のいつものどこかに
    潜んでいそうなことのように感じられてなりませんでした。

    落語の「御神酒徳利」
    古典文学の「野菊の墓」
    秋に咲く花・「秋海棠(断腸花)」に絡ませて描く
    北村さんのセンスの素晴らしさに感嘆しきりです。

    断腸花はこぼれた涙で咲く花ということを初めて知りました。

    私と正ちゃんと江美ちゃんは、絶妙な会話の掛け合いと価値観の合意が
    うらやましいほどに素敵な友情を持つ三人。

  • 『私と円紫さんシリーズ』長編。
    せつない物語である。
    やはり、円紫さんの演目と絡んで語られる。
    “お神酒徳利”の片方が欠ける不自然さ。
    しかし、学生という、文化祭前夜という特別な舞台、限られた時間の持つ輝きのようなものも感じられる作品。
    人が亡くなって、そんな事を言うのも不謹慎ではあるけれど、取り戻せない特別な時間を切り取った話に思えるのだ。
    「私」にとっても、長じて後にそう思われるのではないか。
    『野菊の墓』の、残された政夫の感慨とはそういうことだろう。
    それを、21歳の若さで理解できてしまう江美ちゃんは、やはり、一歩先を行くオトナだなあと思う。

  • 「円紫さんと私」シリーズを遡ってきている。
    初読の時には「死」というテーマが重すぎて切なすぎてきっとその時の自分はあえて記憶の淵、すれすれのところにこの「秋の花」を手向けてしまったのだ。
    高校で起きた死亡事故(事件?)それに関わる謎と残された少女の痛み、あたかも始めてページを捲るが如く取り込まれてしまって逃げ切れない時間をまた過ごしてしまった。『日常の謎・人の死なないミステリー』と勝手に看板を揚げてしまっているこのシリーズだが作者の冷静な、それでいて逃げることを許さない眼が登場する人たちの真摯さと共に胸を打つ。

  • シリーズ3作目。本作は長編で、なんと殺人事件。
    でも、やはり大学生の<私>の日常の中で、語られていく文章に変わりはない。探偵役の円紫さんの登場と謎の解決は、終盤。
    「許すことは出来そうにありません。ただ、救うことは出来る。そして、救わねばならない、と思います。」悲しさの中に光を見たような終わりだった。
    三輪車をこいでいる頃に互いに引かれるように出会った二人の少女。そのシーンの鮮やかさが心に沁みていった。

    真理子には著者の「スキップ」で出会える、と解説にある。読まなきゃいけないだろうね。

  • ずっと前に読んだが、再度買った。円紫さんシリーズだが、円紫さんは最後まであまり介入しない。
    どんな恐ろしい殺人ミステリーも、この物語の真相の「おそろしさ」には勝てない、と思っている。
    あまりの悲しい謎解きに、ほんとうに、ふるえた。

  • 噺家の円紫さんシリーズの第三作。
    第一作を読み、第二作をスキップしてしまいました。

    主人公の女子大生が卒業した高校で起きた女子高生の飛び降りにまつわる謎を解明していくというもの。

    物語の前半は主人公の女子大生が、当時の関係者に話を聞いて回り、後半になってようやく、円紫さんの出番と言う流れです。
    事件自体はそれほど、複雑ではありませんが、若いころの過ちは人に相談しにくく、閉じられた空間として存在する場合、決して一過性のものではないと言う事。

    人は生まれるところは選ぶことができない。どのような人間として生まれるかも選べない。気が付いた時には否応なしに存在する自分というものを育てるのは、あるときからは自分自身であろう

    と円紫さんは言います。外部の要因が働くこともあるかもしれないけど、最後にどのような人間になるかを決める権利は大方、自分にあるということか。

  • 青春のきらきらした瞬間があっけなく、いつ終わってしまってもおかしくないというもろさと切なさ。だからこそ今、この瞬間がより一層大切で輝くという円紫さんのお言葉、ぐっと胸にきました。
    あいかわらずの主人公の文学少女ぶりにはなかなかついていけないけれど、情景の丁寧な描写は心が洗われるよう。

    • mao2catさん
      まろんさん、はじめまして。ありがとうございます。
      私も北村薫さん大好きです。
      猫も大好きで、1匹まおまおという名前の猫を飼ってたんですが...
      まろんさん、はじめまして。ありがとうございます。
      私も北村薫さん大好きです。
      猫も大好きで、1匹まおまおという名前の猫を飼ってたんですが、先日亡くなってしまいました。淋しいです。
      あの温かさが恋しくてしかたないです。

      こちらこそよろしくお願いします。
      2012/12/20
    • まろんさん
      天国に旅立ったまおまおちゃん、
      こんなに素直に「淋しい」「恋しくてしかたない」と綴ってくれる飼い主さんと一緒に過ごせて
      きっととてもしあわせ...
      天国に旅立ったまおまおちゃん、
      こんなに素直に「淋しい」「恋しくてしかたない」と綴ってくれる飼い主さんと一緒に過ごせて
      きっととてもしあわせな一生だったのだと思います。

      つらいことを書かせてしまってごめんなさい。
      まおまおちゃんとの楽しかった思い出が、mao2catさんの淋しさを少しずつあたためてくれますように。
      2012/12/21
    • mao2catさん
      まろんさん、ありがとうございます。

      実家にも友だちんちにも猫がいます。
      なぜか猫好きは集まりますね。

      まろんさんが読まれてる猫...
      まろんさん、ありがとうございます。

      実家にも友だちんちにも猫がいます。
      なぜか猫好きは集まりますね。

      まろんさんが読まれてる猫が出てくる本、どれも面白そうですね。
      読みたいです。
      2012/12/21
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著者プロフィール

1949年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。大学時代はミステリ・クラブに所属。母校埼玉県立春日部高校で国語を教えるかたわら、89年、「覆面作家」として『空飛ぶ馬』でデビュー。91年『夜の蝉』で日本推理作家協会賞を受賞。著作に『ニッポン硬貨の謎』(本格ミステリ大賞評論・研究部門受賞)『鷺と雪』(直木三十五賞受賞)などがある。読書家として知られ、評論やエッセイ、アンソロジーなど幅広い分野で活躍を続けている。2016年日本ミステリー文学大賞受賞。

「2021年 『盤上の敵 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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