午前零時のサンドリヨン (創元推理文庫)

著者 :
  • 東京創元社
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感想 : 125
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  • Amazon.co.jp ・本 (386ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488423117

感想・レビュー・書評

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  • ミステリが好きな人間は,多かれ少なかれ手品・マジックが好きだろう。伏線,ミスディレクション,驚き,ミステリの面白さと手品の面白さには多くの共通点がある。泡坂妻夫の「11枚のトランプ」など,手品をテーマとしたミステリは,手品に関するうんちくを楽しみつつ,ミステリも楽しめる。「午前零時のサンドリヨン」は,主人公が不思議な雰囲気をまとう凄腕のマジシャンであるという設定であり,手品をテーマとした作品という意味で,期待して読み始めた。期待どおり,主人公が披露する手品の描写だけでも十分楽しめたが,それ以外の理由から期待していた以上に心に残る作品になった。その理由は,この作品のテーマが「いじめ」であったからである。この作品には,ヒロインも含め,いじめられた人,つらい思いをしている人が出てくる。学生時代にいじめられたことがあるので,こういった描写にはそういった体験がない人以上に共感してしまう。「まやかしで,偽物の,嘘っぱちでしかないの。私と同じよ!」,「ずっとずっと,嘘をついて生きてきて,だから,なにが本当で,なにが嘘なのか,わからなくって…」と悩むヒロインの姿にも共感できる部分があった。米澤帆信の「ボトルネック」なんかを読んだときも思ったことだが,「午前零時のサンドリヨン」を,実際にいじめられ辛い思いをしていた学生時代に読んでしまっていたら,目を背けたくなってしまい,とても心に残る作品にはならなかっただろう。社会人になって,自分の学生時代を第三者的な目線で,客観的に振り返れるようになっているからこそ,登場人物の共感しつつ読むことができた。あんなに辛かったはずなのに,過ぎ去ってしまうと妙に懐かしく感じてしまう学生時代。今だからこそ,こういう作品を共感して読むことができ,心に残る作品になっている。ミステリとしても上質な短編揃いであり,ヒロインの酉野初のキャラクターの魅力も抜群。正直,主人公にはほとんど共感できないのだが,それを割り引いても,好みの作風であった。心に残る作品でもあり,総合的に見て,十二分に楽しむことができた。久しぶりに文句なしの★5つを付けたい。

  • ミステリー/日常の謎/青春/連作短編集
    "日常の謎"のような軽めのミステリーは、それほど好きではないのですが、この作品は大ヒット!!
    小さな謎を解く過程で、学生たちの悩みをリアルに描いた"青春小説"でした。
    「胸中カード・スタッブ」が、ベタなテーマながら心に響く。大好き。

  • 日常の謎を扱った青春ミステリー系の連作短編集。
    謎自体はとても小粒であまり魅力を感じないものの、連作短編集ならではの仕掛けが綺麗に決まっていてかなりこなれている印象。
    また、ポチの内向的な性格と酉乃初のどこか掴めない性格に好感が持てないのは残念なところですが、高校生らしい青臭さがリアルで青春小説として読み応えがあります。
    作中に披露されるマジックのネタ割り厳禁は分かりますが、やはりどこかでタネ明かしして欲しいです。不満が残ります。

  • A Boy meets a Magician. マジックで学園青春で日常ミステリで、実に欲張った作品。泡坂妻夫の深み・洗練までにはまだまだ距離があるにせよ、届き得る領域に達していると見た。7.5

  • 学校では無愛想な女子・酉乃さんに一目ぼれした男子・須川くん。
    放課後、バーでにこやかにマジックを披露する酉乃さんのギャップに翻弄されつつ、身の回りで起こった謎をもちかけては親しくなろうとする須川くんが微笑ましい。
    シンデレラのように「マジック」というドレスを着ていれば社交的になれる酉乃さんが、ドレスがなくても前を向ける勇気を持てるかどうか――というのもテーマの一つ。
    謎解きひとつで一歩前進、みたいな印象。脇役の個性が強すぎず、さっぱり読める。

  • シンプルに"面白かった"というのが総評です。
     日常の謎を絡めた主人公と酉乃さんのやり取りや、
    二人の心の変化、周囲の人間関係等がうまく表現されていました。
    ミステリものとしても序盤から細かい伏線を張り
    解決フェーズでに畳み掛けるように真実を
    明らかにさせていくことで、
    引っ掛かりを感じていた部分が外されていくような、
    ミステリ特有の爽快感を感じました。
     一方で若干の不満点としましては、
    登場人物の行動に論理的にすっきりしない部分がいくつかあり
    無理やり謎を演出していると感じた点と、
    酉乃さんが披露する(正確には酉乃さんだけではないのですが)マジックが
    物理的に実施不可である点です。
    (理由の両方が私の理解力不足に起因する可能性は否めませんが・・・)
    どちらの理由も若干違和感を感じた程度であり、大きな不満というわけではありませんでした。
    特に後者に関してはそんなことを考えるだけ野暮ということでしょうかね・・・
     総合的な評価としては大きな不満もなく面白いと感じる作品でした。
    しかし、特に突出して面白いといった印象も受けなかったため評価は★3です。

  • トランプのネタの描写はよくわからないけれど、「ポチ」くんの気持ちが切ない。。。
    ミステリーとしてはまとまりすぎている感じもあるけど。。。

  • 以前から気になっていて、古本屋さんで見つけたので購入。
    表紙がとてもかわいいのと、タイトルが素敵なので惹かれました。
    あらすじは、マジックが得意な女の子が学校での謎を解いていくというもので、私が個人的に大好きなドラマである『TRICK』を連想しました(女性マジシャン探偵というところが)。

    結構期待して読んでしまったので、物足りない感が否めませんでした。
    私はミステリーが大好きなんですが、ハラハラドキドキスリリングな謎が好きなので(殺人事件ものとか)、この小説のような日常の謎的なものはやっぱりあまりハマれませんでした。
    高校生ということで爽やかできゅんとするような恋愛エピソードも期待したんですが、それもあまりありませんでした。
    続編はもうちょっと発展してるんでしょうか?

    全体的に、もうちょっと内容が濃くてもいいんじゃないかなという印象でした。
    キャラクターの魅力もあまり感じなかったです。
    マジシャンという設定は私的に好きなんですけどね。

  • 鮎川賞受賞作。高校生の日時用を舞台にした日常の謎る
    探偵役はレストランパブでトランプマジックをやる女の子。

  • 20140622

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著者プロフィール

1983年埼玉県生まれ。2009年『午前零時のサンドリヨン』で第19回鮎川哲也賞を受賞しデビュー。繊細な筆致で、登場人物たちの心情を描き、ミステリ、青春小説、ライトノベルなど、ジャンルをまたいだ活躍を見せている。『小説の神様』(講談社タイガ)は、読書家たちの心を震わせる青春小説として絶大な支持を受け、実写映画化された。本作で第20回本格ミステリ大賞受賞、「このミステリーがすごい!」2020年版国内編第1位、「本格ミステリ・ベスト10」2020年版国内ランキング第1位、「2019年ベストブック」(Apple Books)2019ベストミステリー、2019年「SRの会ミステリーベスト10」第1位、の5冠を獲得。さらに2020年本屋大賞ノミネート、第41回吉川英治文学新人賞候補となった。本作の続編となる『invert 城塚翡翠倒叙集』(講談社)も発売中。

「2022年 『medium 霊媒探偵城塚翡翠(1)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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