切れない糸 (創元推理文庫) (創元推理文庫 M さ 3-4)

著者 :
  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488457044

感想・レビュー・書評

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  • 思いがけず商店街のクリーニング屋さんを継ぐことになった、大学生の新井和也クン。その周囲には、新井クリーニング店のアイロン職人シゲさん、母親、3人のパートのおばちゃん(その一人、梅本さんは「和菓子のアン」ちゃんの母親)、喫茶店ロッキーで働く沢田くん、幼なじみの糸村麻由子(不動産屋の娘)など、商店街の面々が。忘れないようにここに書いておきたい、愛すべき商店街の人たち。
    クリーニング屋は個人情報が集まってくる、そこから謎が生まれる。その個人情報を、その人のためだけに使う優しさ、と解説にあるとおり、主に沢田君の推理で解決していく、人情あふれる商店街のお話。
    文庫本解説の大矢博子さんがおっしゃるとおり、続編あってもいいですよね。まだまだ読みたい商店街物語です。

  • 坂木作品の主人公はいつも普通のカテゴリに属しているように最初は思える。
    だけど、話が進むにつれて、アライ君の温かくて人が良いところ、分別が備わっているところ、人の忠告を聞く素直な面があるところ、一つ一つ彼が好青年であると伝えてくる。

    クリーニング店はセレブとか専門性といったイメージが持たれにくい印象だけど、こんなに化学や流行に密接に関係する職業だと、初めて知って驚いた。そんなに考えてくれてるんだ、と。

    どんな職業にだってプロはいて、極めればとってもカッコいい。
    自分が只面倒だと適当にやった仕事がどんな結末を生むか、想像できるだろうか。
    ライター1つチェックがもれただけで工場が爆発する。まさかそんなことになるなんて知らなかった、では済まない。
    シゲさんの忠告一つ一つに説得力あり、やはり職人が言う最もな理由というのはとても大事だとおもった。

    仕事に手を抜いてしまう理由なんていくらでもあるけど、その理由に、どうなるか想像できてなかった。ということがあるんじゃないかと思った。

    医療関係だと手を抜けば命が失われるという最大のリスクを分かりやすくしょっている。そんな明確なリスクがあることを自分で想像できれば良いのになぁ、なんてことを真面目に考えてしまった。とても心暖まるお話だった。

  • 和菓子のアンが面白かったので、借りてみた。
    和菓子のアンちゃんが住んでいる商店街のクリーニング屋さん(アンちゃんのお母さんのパート先)のお話。

    クリーニングの工程なんて考えたことなかったけど、面白い。
    沢田の印象の方が強いせいか、主人公の印象薄い気がする。
    何で主人公のところにわけありな人が集まってくるのか、もう少し丁寧に描いてほしかった、、、


    (図書館)

  • 就職先も決まらず将来が見えない最中、父親の突然の死によって、家業のクリーニング屋で働くことになった和也。

    アルバイト気分で始めた仕事を通じて、様々な人のもつ痛みを友達の沢田と共に解決しながら、人と人の切っても切れない繋がりを味わって、成長していく。

    相変わらず、この人の話は、誰をも優しく包み込むなあ。悪い人なんていなくて、誰もが抱えてる痛みを優しく解きほぐしていく。見方を変えれば、世界はいつでも優しいんじゃないかと思えてくる。きれいごとかも知れないけど、キレイなほうがいい。救いに溢れた物語。

  • 商店街のクリーニング店が舞台。主人公の友人・沢田が探偵役になり次々と起こる事件(?)を解決していく。坂木氏の作品は温かく、優しい。ジャンルはミステリーなんだろうけど、眉根を寄せるような展開にはならないのがいい。また、漫画にでもなりそうな強烈で愛すべきキャラクターが何人も出てくるのも素晴らしい。「和菓子のアン」のようにその道の職人に魅力があるのも、職人好きの私にとって今回も楽しめる内容だった。主人公と一緒に商店街を歩いている感覚、ロッキーでお茶を飲みたいという感覚が自然と湧き上がってくる素敵な本だった。

  • 坂木司さんの作品は2冊目だけど、あまりミステリを読まない自分でも割とスラスラ読めた。身近にある謎だからいいのかもしれない。

  • ほんわかしました~。
    なんだろう。坂木氏の小説の題名って、ぱっと見て読んだだけじゃ内容までピンとくることは少ないですよね。
    (5分で集中力がアップする方法、君が教えてくれたこと、等とは違うという意味)

    これまでに読んだ『ひきこもり探偵シリーズ』然りですが、こう、読み終わった後に、気持ちがタイトルに戻ってくる感じが、そこがいいなぁって思います。
    伝わるかな。
    本って、やっぱり最初に題名を見ますよね。そこから何かしら感じとるものがあるんですよ。
    個々人で感じとるものは様々ですが、自分なりのイメージを抱きつつ文章に進んでいると思うんです。
    そうして最後まで読み進めていって、本をぱたんと閉じる。
    表紙を見る。タイトルを読む。
    「・・・あぁ、『切れない糸』か・・。」

    ここまでいって、“読んだ”って気持ちになるんですよね。
    自分のなかで「切れない糸」という物語が完結して、自分のなかに取り込まれた感じがするんです、私は。
    いろんな題名の本を読んでいますが、この作品はそれを一番強く感じました。

    いいなぁ。絶対に糸の切れない凧になってみたいなぁ。いいなぁ。

  • 坂木司と言えば、生活ミステリー作家として有名。
    その異名がいちばんしっくり来るのは、この作品のような気がする。

    舞台は都内下町、昔ながらの商店街。
    突然死した父の後を仕方無く継いだ、若きクリーニング屋と、
    その友人の喫茶店アルバイト(ただし名探偵)の2人を中心に進む物語。
    環境に即した生活ミステリーが4篇。あっというまに読破。

    感心するのは、クリーニング屋という誰もが知っている職業に対する、
    細かな突っ込み振り。とにかくクリーニング屋のディテールが深く、
    読み込めば読み込むほど唸ってしまう。
    こういう下調べが生きているタイプの物語、本当に好感が持てます。

    女史(性別不明ということだけど、僕はもう絶対女性だと思う^^;)の作品
    の中では、いちばん好きかも。
    こういうジ~ンと来るタイプのお話であれば、いくらでも読みたい。
    良作です♪

  • 突然、家業のクリーニング店を継ぐことになった主人公、
    喫茶店でバイトをしている友人と、よろず相談を引き受けてしまいます。
    毎回持ち込まれる「やっかいごと」、問題を解決していく2人&周りの人達が人間くさくて良いです。
    ミステリーのはずなんだけど、ホロッとする場面もあり・・続編が読みたくなりました。
    あるのかな?!

  • 少年、いや青年か、2人の関係性にほっとさせられます。友情以上の関係だよ! と読みながら思っていた。沢田君は、和也君に救われていたわけだけど、和也君はそれに気づいていない。その関係性が大好きです。孤独気質な沢田君が、ひとはいつかどこかに帰る、その帰る場所がお前ならいいのに、みたいなことを言った時点で、きゅんきゅんです。告白だよ、いきなりだよ! でも和也君、特に気にしてないし……。和也君気付いてやれよ、と思ったが私が期待するような展開になるはずもなく(当たり前だ)。坂木さんの作品は、読んでて安心します。ほっ。

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著者プロフィール

一九六九年、東京都生まれ。二〇〇二年『青空の卵』で〈覆面作家〉としてデビュー。一三年『和菓子のアン』で第二回静岡書店大賞・映像化したい文庫部門大賞を受賞。主な著書に『ワーキング・ホリデー』『ホテルジューシー』『大きな音が聞こえるか』『肉小説集』『鶏小説集』『女子的生活』など。

「2022年 『おいしい旅 初めて編』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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