- Amazon.co.jp ・本 (269ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488580025
作品紹介・あらすじ
ぼくはトム、7番目の息子の7番目の息子。ぼくが弟子入りしたのは、ボガートや魔女から人々を守る魔使いだ。映画「セブンス・サン」原作、〈魔使いシリーズ〉第1弾文庫化。
感想・レビュー・書評
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ちょっと渋めの児童向けファンタジーといった趣。
主人公のトムは7番目の息子であるということで、半ば強制的に魔法使いに弟子入りすることになる。この世界では魔法使いは忌むべき存在として周りからは冷たく扱われ、かつ魔女やボガードといった存在と命のやり取りをしなくてはいけないという中々ハードな職業。イギリス的な皮肉の効いた文章でグイグイ読めるのでファンタジー好きならおすすめの一冊。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
けっこうダークなファンタジー。魔力を持つ者や悪さをする妖精の力を塩や鉄で削ぐ、というのはわりとよく見かける話だし、一見さほど目新しい要素はないんだけど、なんというか合わせ技?で、けっこうぐいぐい読ませる。でもな~。こわいんだよな~。こわいのが苦手だから、ちょっとむりかも。
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魔法使いじゃなくて、魔使い? 魔使いって何だ?から始まる魔使いシリーズ。魔使いの原題はSpook(幽霊とかスパイの意味らしい)。
7番目の息子の7番目の息子には、普通の人には見えないものが見える。
そんなトムが魔使いの弟子になるのがシリーズ第1作のコレである。
ガーストや魔女などの人ならざるものを封じるのだが、さすが魔使いだけあり、魔法は使わない。知識とだけでなんとかするしかないのである。圧倒的に不利だ。
主人公のトムが知らない状態から、魔使いの世界に足を踏み入れるのだが……この世界の影の濃さというか、中世の不自由さや閉塞感が、実に豊かに描かれている。
魔女の娘アリスのキャッチーさも実に見事である。
小悪魔め!って言いたくなる。 -
必要とされながらも忌避される「魔使い」の、住宅環境がなかなか面白かった。災難がなかなか去らない展開に息がつけない。主人公が一人前への一歩を踏み出し、同時に家族の間に隔たりができてしまうシーンが印象的。
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(2014/11/25購入)(2014/12/14読了)
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「魔法使い」ではなく「魔使い」の弟子。
謎の職業、魔使いとは?の1巻目。 -
映画化もされたシリーズが文庫になって、ようやく読むことができたよ。設定からして、私が飛びつかないわけがないシリーズ。
想像よりオカルト色が強かったけど、十分に面白かった。
魔使いになるということの意味を、13歳の身で全て知るには時間がかかるわけで。それでも本来の彼の賢さと本能で、その道を一歩一歩進むトム。
誰かがやらなきゃいけないことだから。子供の身でそう唱えるトムが切なくて愛しい。
続刊も少しずつ手に入れて読んでいく予定。 -
・ジョセフ・ディレイニー「魔使いの弟子」(創元推理文庫)の シリーズ、文庫既刊分3冊を読んだ。もしかしたら他の方々同様にかもしれない、私はこの書名を「魔法使ひの弟子」と信じて読み始めた。しばらく読んだところで、本文に魔法使ひではなく魔使ひと書かれてゐるのに気がついた。さうしてやつと書名が「魔使ひの」であることにも気がついた。魔法使ひはそれほどなじみがあるのに、この魔使ひは全くなじみがない語であつた。原題にはspookとあるが、この語のこの物語にふさはしい訳として最終的に採用されたのが魔使ひであつた(「魔使いの秘密」訳者あとがき372頁)といふ。では魔使ひとは何か。「感覚を頼りに悪を封じる一種の職人」(同前370頁)で、その感覚は 「七番目の息子の七番目の息子」(同前371頁)が持ち、目に見えない存在を感じることができるものである。つまり、魔法使ひとは似て非なるもので、その出自が問題となる。また、魔女や魔法使ひとは敵対関係になることの方が多さうである。この物語の話し手はトムと呼ばれてゐる魔使ひの弟子たる13歳の少年 である。弟子入りするところから物語は始まり、以下、基本的に師匠の危難を弟子が救ふといふ展開が続く。そこにトムの家族や師匠の兄弟が絡み、更にヒロイン的な存在としてアリスといふ13歳の少女も絡む。巻3まで読んだ限りでは、これがこの物語のほとんどすべてと思はれる。その様々な変奏がトムの物語を長々と続けさせたのであるらしい。
・実は、この物語で私が書かうと考へたのはトムを中心とする3人についてであつた。ところが、先の巻3のあとがきにそれが書かれてをり、しかもその内容は私が感じてゐることとほとんど違はらないのであつた。トムはかうである。「修行が始まってからも、怖いものは怖いし、孤独な暮らしや単調な修行に不安と不満が隠せない。(中略)だが、トムの真っ直ぐな性格が、意外にも強力な武器になってこの職業に活かされていく。」(同前)更に言へば優柔不断でもあり、それがしばしば更なる危機を招く結果になるつてゐる。だから、物語のヒーローにはあまりふさはしくないタイプである。ただ、「真っ直ぐな性格」 が最後にそれらを補つてくれるのである。これをご都合主義とは言ふまい。それをしなければ物語にならないのだから当然の処理である。そんなトムに対するアリスは、ごく大雑把に言つてトムの恋人の役割を担ひつつあるのであらう。13歳といふ年齢もあつて、そのあたりはまだはつきりしないが、トムがアリスにひ かれていることはまちがひない。「とんがった靴をはいたかわいい女の子」(同前373頁)で、「敵か味方かよくわからない」(同前)。それはアリス自身が「善と悪の間を揺れ動いている。」(同前)からでもある。魔女の一族の生まれだからしかたがないのであらう。師匠に信用されないながらも2人とともに行動する。その言動はトムと違つて押しが強いといふか、はつきりして曖昧なところがあまりない。ずけずけとトムに言ふのである。トムはたじたじとなり、結局は 言ひ負かされる。さうして危機を迎へる……などといふことになると、ヒロインとはいひながらろくな女ではないといふことになる。しかし、さうでもないのであらう。「物語の中心にいる三人が、みな不完全で揺れている。その三人がぶつかりあったり、助けあったりしながら、危うい関係を保っているところがまた、 この作品の読みどころとなっている。」(同前)かういふことである。この変奏を楽しむのがこのシリ-ズである。三人がよく書かれてゐるからこそ楽しむことができるのである。次なる物語を待ちたい。