欲望の資本主義3: 偽りの個人主義を越えて

  • 東洋経済新報社
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492371237

作品紹介・あらすじ

最高の知性が問う未来!

巨大化するGAFAへの懸念、
そして仮想通貨への期待と不安が交錯する今、
資本主義の行きつく先はどこなのか?

「市場」「自由」「個人主義」をキーワードに、
多角的な視点から社会のあり方を再考する。

大反響! 異色のNHK経済教養ドキュメント 待望の書籍化!
未放送部分も多数収録

「今回お届けするのは、次の5人の言葉だ。
GAFAに対して舌鋒鋭く、巨大プラットフォーマーの功罪を、独自の視点から生々しく語る、異色の起業家にして大学教授、スコット・ギャロウェイ。
ビットコインに続く仮想通貨の開発者にして、天才数学者、仮想通貨が世界にフェアな競争をもたらす夢を語る、チャールズ・ホスキンソン。
精緻な分析で経済学の可能性を広げ、GAFA、仮想通貨をはじめ資本主義の今を冷静に分析する、ノーベル経済学賞受賞のフランスの理性、ジャン・ティロール。
『サピエンス全史』以来、文明論的な視点から歴史を読み解き、科学技術と資本主義の親和性から現代の危機、行く末を読む、ユヴァル・ノア・ハラリ。
「新実在論」ブームを日本にも巻き起こし、社会制度の根本の概念を解きほぐすことから、資本主義、民主主義の混乱、迷走を斬る、若き天才哲学者、マルクス・ガブリエル。

番組では、彼らの発言も敢えてフラグメントとして構成していく中で、多角的な視点を提示していったわけだが、ここでたっぷり、それぞれの言葉を味わっていただきたい。行間からにじみ出るものも含め、想像力とともに読んでいただければ、また新たな現代の経済現象、世界、社会へのアプローチの可能性が浮かび上がることだろう。
では、資本主義を巡る知の冒険へ。どうぞ、ご一緒に。
――「はじめに」より」

感想・レビュー・書評

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  • 今の資本主義がいい意味で機能していないという方に結論が傾いているだろう。そして、今の資本主義というシステムが、これからも同じように存在し続けることもない。今ままではなく、変化したシステムになる。なる必要があると。
    例えば、GAFAは市場を独占的に覆い尽くしている。これから何年もGAFAによって、「新たな(イノベーションの)芽が摘まれてしまう」「市場による自由な競争が成立しない」状況や影響力を持ってしまうことにになれば、政府から規制をかけなければならない。しかし、ビッグデータ、AI、ブロックチェーン、などのテクノロジーは世界を救済する手段にも、脅威をもたらすものにもなり得るなかで、歴史は浅く、どう規制をかけるべきか、正解も最適解も導くことが難しい状況なのは確かである。

    経済学だけでなく、社会学、心理学、生物学、法学、歴史など、さまざまな分野の知恵を結集し、今は資本主義の行く末を考え、再構築しなければならない段階に来ている。
    この状況は、哲学者や経済学者だけが問題意識を持つものではない。一般消費者としても、ビジネスパーソンとしてでもある私たちも、これからが変わり続ける世の中で生きていくために、本当の個人主義を理解して、考えていこう。

  • 個人的にハラリさんもさとガブリエルさんのパートが熱い!!

  • 資本主義を考える月間4冊目。見えざる手による競走で最適化するはずの市場だが、GAFAの支配に警鐘を鳴らすギャロウェイは、GAFAによりイノベーションが起こらない時代になっていると主張する。将来有望なスタートアップを買収することで将来の競合を潰す。インスタ、YouTube、WhatsAppなど。適切に納税もしない。会社を分割して、競争させることが社会に利益につながると説く。ノーベル経済学賞受賞のティロールは、資本主義は統治の形態、市場経済は企業の競争であり、いずれもルールと規制が必要と主張する。確かに大企業や大富豪に有利なルールでは、正しい統治も競争も起こらない。そしてガブリエルは、ポストトゥルースを「真実やまやかしが存在しないかのようにふるまうこと」「知識よりも意見が尊重されること」と見抜く。事実よりインフルエンサーの意見に振り回されることがあることを思いだす。

  • GAFAと現代市場経済の是非という、2よりも分かりやすいお題だったので自分みたいなもんにも読み進めやすかった…

    共通して、GAFAの企業倫理と市場独占方針には大批判的
    健全な競争原理を回復すべく、政治・経済からルールの改善・徹底を強化するべきという感じ。

    ホスキンソン氏とティロール氏が、仮想通貨が公益に寄与するか否かについて真逆の意見だったり
    世界最高の頭脳の最高の倫理感を持ってしても、方向性って定まらんのやなあ…と切ない気持ちになったり。

    良い特集なだけに、文末の丸山氏のナルシスティック(故に不必要に冗長で難解)な文章はもうちょっと控えめになると良いな…

    引き続き、資本主義に参加しながらも、それに全BETするような生き方をしないようスタンスを考え続けたい、等思う。

  • ギャラウェィのGAFA批判は、興味深かった。利用者が増えることでより多くのデータが集まるネットワーク効果は、確かに莫大な利益を産むと思いました。

  • 五人の対談が特集される中、ほぼ皆が仮想通貨とトランプ大統領について語っているのが印象的。

    特に仮想通貨を開発者であるホスキンソンの話は理解しやすい。何のこっちゃわからない状態だったが、仮想通貨が作られた背景や目指すもの、またブロックチェーン技術の一端の一端は理解できた。それだけでも価値があるかな。
    続いて、仮想通貨に対して懐疑的な意見を持つティロールの対談が載せられているのも良い。
    政府の介入がない自由な通貨の可能性と、自由すぎるが故に危険性があり制約すべきだと言う意見それぞれが聞けるので面白い。

    一方、GAFAについて語るギャロウェイの話は余りピンとこない…
    the fourも読んだけどなんだか当たり前の事をそれらしく言ってるだけに感じて。考察に深みが無いと思ってしまう。苦笑

    後、ガブリエルはこのシリーズで知ったけど相変わらず主張が難しい…
    この話についていくには自分の脳味噌だと、後3回は読み直さないといけなさそうです、ハイ…

  • このシリーズは知識欲を刺激したいときに丁度いい読み物だと思う。経済学者、哲学者が考える現在の問題と解決案は新しい視点を与えてくれる。生活の質は確実に向上している。だけど人は幸せを感じない。過去に起きたことと現代の問題では性質が違う。全人類が今より多少マシになるにはどうすればいいのか、興味が尽きない。

    だからこそ、このシリーズに出てくるスピーカーにもっと多様性があればもっと優れた本になるのにとおもう。

    言い方が悪いが、研究する環境に恵まれた人たちの集まりという偏りがあるように見える。確かにそれぞれの生い立ちを見れば様々なバックボーンがあるだろうが、実際この世に生きてる人たちはもっと多様だ。知識を持った人間だけで経済の話が完結するとは思えない。

    人は自分が経験していない出来事を知ることは出来ても自分の事として理解することはできない。だから多様性が必要だと思っている。男性、女性、富裕層、貧困層、健常者、障害者、難民、権力者、老人、青年、子供…それらのミクロな経済の視点を知らずにマクロが語れるのか。たしかにそれら全てを網羅することは不可能に近い。だからこそ偉大なる知識人たちにはその不可能に挑んでほしい。

  • ギャロウェイ

    ・GAFAは、人間の本能を代替している。
     googleは、祈り。
     appleは、セックス。
     amazonは消費、facebookは愛。

    ・企業が崇高な価値を持つというのは幻想である。

    ・経済の目的は、中流階級をつくることだ。(ドラッカー)

    ・日本は、巨大IT企業が日本の利益となるような仕組みを。政治で。



    ホスキンソン

    ・仮想通貨やトークンの価値は、アイデアと競争力を持っているすべての人が市場に参入できる機会を与えること。

    ・ユーザーに、「忘れられる権利」を取り戻せ。


    ティロール

    ・市場経済は企業間の競争の話。資本主義は統治の話。

    ・無知のヴェールという思考実験。

    ・投票行動に足りないのは「嗜好」の表明。主義だけでは乗り越えられない。

    ・情報の重要性を重視した市場経済は勝利している。


    ハラリ

    ・自分のためにスマホを使っているのか、スマホに使われているのか。

    ・AI時代。人生にどんな意義を見出すか。

    ・人々を支配しているのは、機械の後ろにいる誰か。


    ガブリエル

    ・SNSは、世界で最も不平等なカジノ。

    ・身近な人とのコミュニケーションとして普及したSNSが、身近な人とのコミュニケーションを破壊している。遠くを重視。

    ・ポスト・トゥルースは、知識よりも意見が重視される時代。
    でも、それは美化されていなかったか。
    twitterは万人の万人に対する戦い。

    人文学的な知よりも自然科学的な知が重視される時代

    ??意見、は人文学では?


    ・アメリカは進化論を否定。
     自然科学的な知と宗教の体現者がトランプ


    ・自然科学的な考えが人間らしさを破壊する。
    ex)データだけで作られたコンテンツ
    偶発性がない


    あとがき
    ・有機的な分業と連帯

    ・カント「自己の欲望や他社の命令に依存せず、自らの意志で客観的な道徳法則を立ててこれに従うこと」が自律

    ・大脳の情報処理に過剰に寄りかかった「脳化社会」をどう超えるか。

    ・部分最適の総和は全体最適にはならない

  • GAFAが一種の宗教だと看過したあたりは面白かった。
    データが資産価値を持つようになる、ビックデータ解析は中央集権の方が効率的であるとか考えるとディストピアだな。

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著者プロフィール

丸山 俊一(マルヤマ シュンイチ)
NHKエンタープライズ エグゼクティブ・プロデューサー
1962年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、NHK入局。「欲望の資本主義」「欲望の時代の哲学」などの「欲望」シリーズをはじめ「世界サブカルチャー史 欲望の系譜」「人間ってナンだ?超AI入門」「ネコメンタリー 猫も、杓子も。」「地球タクシー」他、異色の教養番組を企画・制作。
著書『14歳からの資本主義』『14歳からの個人主義』『結論は出さなくていい』他。制作班などとの共著に『欲望の資本主義』『欲望の資本主義2~5』『岩井克人「欲望の貨幣論」を語る』『欲望の民主主義』『マルクス・ガブリエル 欲望の時代を哲学する』『マルクス・ガブリエル 欲望の時代を哲学するⅡ』『マルクス・ガブリエル 危機の時代を語る』『マルクス・ガブリエル 新時代に生きる「道徳哲学」』『AI以後』『世界サブカルチャー史 欲望の系譜 アメリカ70~90s「超大国」の憂鬱』他。東京藝術大学客員教授を兼務。

「2022年 『脱成長と欲望の資本主義』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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