誘拐ラプソディー

著者 :
  • 双葉社
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感想 : 51
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  • Amazon.co.jp ・本 (408ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575234244

感想・レビュー・書評

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  •  金もなく家族もなく、世話を焼いてくれていた親方を殴って職場も飛び出してしまい、まさに無い無い尽くしの伊達秀吉。もうこれは自殺するしかないと思案していた時、家出をしてきたという6歳の子供・伝助に偶然出会った。全く恐がるそぶりを見せないどころか、初めて会った秀吉とどこか遠くに旅に出たいと楽しそうに言う伝助。これは利用できると考えた秀吉は、伝助の家に身代金要求の電話をかけたのだが・・・。秀吉は知らなかった。伝助はなんと、暴力団組長の一人息子だったのだ。

     悪人になりきれない秀吉と、誘拐されているとは知らずに旅を楽しむ伝助。この2人のやりとりがとてもおもしろく、また、徐々にめばえてくる秀吉→伝助への愛情に各所でホロリとさせられる。最後のキャッチボールのシーンは逸品。伝助の父親=組長に最後、秀吉がどうされてしまうのかが心配だったが、なんとか助かったようで(しかも伝助の機転のおかげで!)一安心。警察官1人に対してヤクザが弱すぎないか?というのはあるが、それも喜んで目をつぶるほど、この話にはこのハッピーエンドしか似合わない。心温まるいい話だった。

  • 誘拐喜劇とでも言えばいいのだろうか。とても笑わせていただいた。賭け事好きで飽きっぽくてどうしようもないけど、名前だけは大層な主人公が、ちょっと間の抜けた子供をたまたま誘拐して・・・というストーリー。暴力団の組長も人の親というだけでなく、県警の刑事も人の親というくだりが一番面白かった。人情に厚い人もいる、世の中そんなに悪くないよで、この小説は結ばれる。本当にそうなのかどうかは、別として、呼んでいると桜吹雪の下を歩いていく主人公の姿が目に浮かぶようだった。最近こういう作品を読んでいないので、とても面白かった。

  • 伊達秀吉なんて立派な名前なのに、その実どうしようもなくダメな男が主人公。

    今年映画化されていたんですね。知りませんでした。
    映画のキャストを見てみたら、どれも私の思い描いていた感じの人とは違っていました。
    コミックを先に読んだので、その絵が基準となっているのでしょう。

    主人公は気が弱くて、自分にも弱くて、小心者で、計画性もなく、心の拠り所もなく、お金も帰る場所もない、という、どうしようもない前科3犯の男。
    たまたま奪ってきた工務店の車に、家出をしたくて塾をサボった6歳の伝助が乗り込んできたことから、誘拐を思いつきます。
    これは、自殺しようとしてなかなかできないでいたための発想転換で、行き当たりばったりの考えでしかありません。

    伝助は暴力団組長の一人息子。そんな組織にすれば、秀吉を追いつめることは簡単にできそうですが、さまざまな偶然が重なって、なかなか捕まえられません。
    途中でその事実に気づいた秀吉は、青くなって伝助と離れようとしますが、なかなかできず、どんどん伝助に情が移っていって、しまいには伝助の友人の刑事の息子まで車に乗り込んでくる始末。

    ヤクザと警察と、香港マフィアにまで追われ…と、本人にとってはこれ以上の不幸はないような状態に陥ります。
    要所要所で逃げおおせる秀吉は、アンラッキーでありながらもラッキーな男です。

    全ては自分がまいた種なんですが。
    いつも、面倒なものから逃げていた秀吉ですが、今回はそうもできず、気がつくと伝助を助けながらの逃避行。しまいには、父親として電話対応するようにまでなるのです。

    伝助のまっすぐ育った素直な性格が、ひねくれきった秀吉の心を動かしたのでしょう。
    伝助の目線からすれば、初めてのことだらけで、楽しい思い出になったと思います。
    秀吉にしても、ヘタレでしかなかった彼でしたが、守るものをもった強さで、気がつけば伝助に尊敬されるほどの大立ち回りまでこなせるようになっていました。

    最後の最後で、秀吉は命拾いできましたが、暴力団は彼を本当に許すのか、ちょっと気になりました。
    でも、はからずも誘拐犯に息子の寂しさを教えられた組長は、少し親子の関係を改めるかもしれませんね。
    それにしても、ヤクザとマフィアの組員たちをあれだけ引っかき回しておきながら、罪名は車の窃盗とは!秀吉は本当にラッキーマンです。

    そして、罪を清算した後に秀吉は、たとえまた彼を誘拐することになっても、伝助との約束を守ることでしょう。
    ダメ男が子供のために頑張る、というシチュエイションに、『ナイトミュージアム』を思い出しました。
    テンポよく読み通せました。ただ、少し長すぎて読んでいて疲れた感が。
    8割くらいの長さがちょうどよさそうに思います。

  • エンターテーメント小説としては上出来。映画やドラマの原作に十分に値する面白さである。この作者の作品と言えば「神様から一言」があったが、これはドラマ化されたことだし、いつかドラマ化は間違いないだろう。ストーリーやキャラクター設定、結末、ともに合格点。

  • 前半から中盤にかけて、面白かったけど・・・終盤が面白くない、残念です
    映画版も見るつもりですが、映画の方が、面白いかもしれないな~

  • 主人公のどうしょうもなさと子供も無邪気さがなんとも笑えて泣ける…
    パパの部下たちに視線は釘付け!

  • 前科のある伊達は、職場の親方を殴り、金と車を奪ってきた。死のうとしたところに子供を見つける。誘拐するが、その子供、伝助はヤクザの頭の息子だった。
    二人の逃走に、香港マフィアや刑事も絡む。

  • 抜けてるんだけど憎めなくて良い人なんだよな~

  • この主人公、不運なふりして実はしっかり運だけで生きてるな。とにかく読んで笑ってください、としか言えない作品。最後はちょこっといい話……でもある。

  • 本を読んでこんなに笑ったのは久しぶり。主人公も笑えたが、オヤッさんもいいキャラしてた^^愛すべき登場人物たちだった!

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著者プロフィール

1956年、埼玉県生まれ。成城大学経済学部卒業後、広告制作会社勤務を経て、フリーのコピーライターに。97年『オロロ畑でつかまえて』で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。2005年『明日の記憶』で山本周五郎賞。14年『二千七百の夏と冬』で山田風太郎賞。16年『海の見える理髪店』で直木賞。著作は多数。近著に『楽園の真下』『それでも空は青い』『海馬の尻尾』『ストロベリーライフ』『ギブ・ミー・ア・チャンス』『金魚姫』など。18年『人生がそんなにも美しいのなら』で漫画家デビュー。

「2022年 『ワンダーランド急行』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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