夕凪の街 桜の国 (アクションコミックス)

著者 :
  • 双葉社
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感想 : 609
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  • Amazon.co.jp ・マンガ (103ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575297447

感想・レビュー・書評

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  • あああ。一人称の死。衝撃だった。ほんとうに真っ正面から取り組んだ作品。
    でも、その命が受けつがれ、でもでもずっと冷ややかなまなざしが注がれ続けるさまも描かれる。
    この上ない被害者なのに、差別にまで苦しまなければならない理不尽さ。今の福島もそういう状況に置かれている。

  • 絵はしたしみやすく、資料もよく調べてあると思う
    時と共に風化されてしまうのか

  • 広島の被爆者を描いた短編漫画。ずっと前から知っていたが、これまで手に取らずにいたものを、Amazonでセールになっていたので購入した。ー 名作だと思う。

    被爆者はヒバクシャというスティグマを背負って生きている。「おまえの住む世界はここではないと誰かの声がする」のだ。そして、「桜の国」の章にもあるように、外部の者はそのことに対してあからさまに無遠慮でもあるのだ。

    「わかっているのは「死ねばいい」と誰かに思われたということ。
    思われたのに生き延びているということ。
    そしていちばん怖いのはあれ以来本当にそう思われても仕方がない人間に自分がなってしまったことに自分で時々気づいてしまうことだ。」

    ... 圧倒的な暴力の下において、当事者でないものが、そのことを分かったようにいう権利はないのだと言われているような気がする。そういった繊細なバランスの上でこの本の表現は成立しているように思う。

    「夕凪の街」の章の最後、生き延びたと思った主人公の皆実が十年後に死んでいくときに語る言葉が重く響く。
    「十年経ったけど原爆を落とした人はわたしを見て「やった!またひとり殺せた」とちゃんと思うてくれとる?」

    人は理不尽な事件に逢った当事者の気持ちを想像することはできるけれども、当事者の気持ちを分かることは当事者になるまでできない、という事実を痛感する。



    明白なことは、放射能の危険性ということで、広島と福島とを同列の文脈で語ることは決してしてはならないということだ。

    そして、もちろんフクシマが「桜の国」で描かれるようなことがあってはならない、ということだ。

  • マンガで初めて詩を感じました。これ以上 言葉を付け加えられない。

  •  原爆の後遺症で1955年に亡くなった少女、その母親、弟、姪のその後を描いた作品。当地の日本語補習校の図書室の蔵書は3、4年前まで僕の担当だったので、自分の好みで選んだ一冊。処分対象になってる本を何冊か読むので、ブクログもしばらく児童書が続きますw。
     世代を超えて長期に渡る後遺症、生き残った罪の意識、被爆者差別など、重い話ですが、カラッとした場面もあって、全体の読後感は「はだしのゲン」のような感じではないです。
     難を言えば、出だしの場面から人物の名前や、世代を越えた相関図がわかりにくいこと、でしょうか?
     でも、全体的には子どもに読んでほしい本なので、補習校で保存が決定されたことはうれしいですね。
     キンドル版もあるので、興味がある方は是非とも読んでみて下さい。

  • 広島の原爆と、その後10年の話。
    こうのさんの、やさしいタッチで描かれてますが、内容は苦しく切ないです。
    このタイミングで読めて良かった。

  • 原爆の投下を通して、戦争の影が音も立てずにそっと日常生活に入ってくる様を見た。声も発しなければノックもしない訪問者の気配を感じながら、これは何が起きているのだろうと、読んでいる最中も読み終わった後もずっと考えていた。
    反戦を声高に叫ぶより、平和の尊さを吹聴してまわるより、政治性やイデオロギーを漂白して、戦争のもつ暗い影を何気ない日常のとなりにそっと位置づける。
    多くの人々から支持を得るのはこういう理由だと思った。

  • 以前から話題になっていたので、読んでみたいなとは思っていた。
    でもそんなに絵柄も好きではないし、本も薄いので買うのをためらって、今日まで読まずにきた。

    図書館で見つけて、あ・・・ついでにこれも借りとこ。くらいの気持ちで手にとった。

    じっくり読んで言葉がでなくなった。
    これは購入して自宅に置いておき、娘が大きくなったときに読ませなくてはいけない本だと思った。
    戦争って、こんなものなんだ。
    深く深く心に突き刺さった。
    素朴な絵柄に、ほのぼのと進む話し。
    なのに心がこんなにも痛むなんて。

  •  そういえば「この世界の片隅に」は買ったけど、こちらは買ってなかったなと思い購入。戦争と原爆の恐ろしさはなんだったのか伝える作品。

     終わらない話。世界で唯一核攻撃を受けた国、日本。原爆は命を奪い取るだけでなく、人間としての当たり前の行動すら奪うものだった。夕凪の街では自分の血が汚れたことに思いは縛られ、世界から外れてしまったと思う主人公が描かれていました。すべてを失った日に連れ戻される感覚を味わいながら息絶えていく、その一連の流れは見ていて怖かった。その後に続く桜の国のように風は吹き続けることが示されています。これは原爆に限らず、福島原発事故だってそうじゃないかとこれから永遠に続くであろう風をどう受け止めるか。いつも考えることをやめたらいけない話なんでしょう。

     しょせん僕は原爆に関しては日本国民だけど当事者ではないし、福島に関しても直接的な関係者じゃないから結局は外側の人間かもしれないけど、外側の人間だからこそのやり方もあるのではないかと考えを止めてはいけないなーと読み終わって思いました。

  • 「その〈週間ポスト〉に北野武の(東日本大震災についての)インタビューが載っていた。
    “「二万人が死んだ一つの事件」じゃなくて、「一人が死んだ事件が二万件あった」”」
    (桜庭一樹『本のおかわりもう一冊』より)

    この漫画は、まさにその、死んでしまった“一人”の視点からヒロシマを描いている。
    原爆投下は戦争という、国と国、体制と体制、思想と思想の対立の末の大きな犠牲であるけれども、それはすなわち、遠い異国の名も知らぬ人間に、訳の分からぬ理由である日突然だれかが殺されたという「事件」がたくさん在ったということである。

    たくさんの人が死んでしまったという表現では生温い。“一人”の人が死んだ事件が、事実が、その日、たくさん在った。その“一人”はたまたま隣にいた人だったかもしれないし、もしかしたら私だったかもしれないという恐ろしい事実が。


    嬉しい?
    十年経ったけど
    原爆を落とした人はわたしを見て
    「やった! またひとり殺せた」
    とちゃんと思うてくれとる?
    (p.33)

    2013.05.13

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「訳の分からぬ理由である日突然」
      惨状を目の当たりにし、生きているコトが死んでいった人間に対して申し訳なく思えてしまう。。。言葉に出来ないト...
      「訳の分からぬ理由である日突然」
      惨状を目の当たりにし、生きているコトが死んでいった人間に対して申し訳なく思えてしまう。。。言葉に出来ないトラウマを絞り出すように表現した稀有の作品だと思います。
      ヒロシマで原爆被害に遭ったコトで、放射能による子孫への影響から、同胞である日本人からも忌避されてしまう。。。悲しい。
      2013/05/29
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著者プロフィール

こうの史代:1995年デビュー。広島市生まれ。代表作は「さんさん録」や、文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞作「夕凪の街 桜の国」、アニメーション映画のヒットも記憶に新しい「この世界の片隅に」など。

「2022年 『ぴっぴら帳【新装版】』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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