夕凪の街 桜の国 (アクションコミックス)

著者 :
  • 双葉社
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  • Amazon.co.jp ・マンガ (103ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575297447

感想・レビュー・書評

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  • この時期になると、よく読み返す。

    原爆だけでなく、全ての兵器に対して同じ疑問を持ち続けたい。

  • 実際の体験者でないにも関わらず被爆者の苦悩をとてもよく描いている。おそらく多くの被爆者が受けたあからさまな悪意などは見せず、一見何てことのない人生の流れに影をさすやり方が露骨すぎずいっそう切ない。

  • 昭和30年、原爆が落とされてから10年後の広島、被爆した皆実の目線で描かれる葛藤と苦しみ。しあわせを感じるとき、死んでいった人たちのことを思い、死なずに生きている自分に引け目を感じてしまう皆実。恋をしても「お前の住む世界はそちら側ではない」と責める声に苛まれる姿が切ない。やっと生き残ったのに、どれほどの罪悪感に苛まれなければならないのか。
    そして、被爆から10年後の死。
    『原爆を落とした人はわたしを見て「やった!これでまた一人殺せた」とちゃんと思うてくれとる?』臨終のとき、消えゆく皆実の意識に浮かんだ言葉に胸が締め付けられる。

    皆実の50回忌の年、被爆2世の背負う悲しみが描かれる「桜の国」。まだ見ぬ後遺症への懸念から立ち消える縁談。生き残った者たちは何故死ななかったのかと罪の意識に苛まれ、彼らから生まれた者たちは、いつ死ぬかも知れぬと避けられる。戦争は終わっても、彼らの苦しみは続いている。

    この作品には、これまでとは違った戦争の姿が描かれている。広島に育ち、8月6日は毎年黙とうを捧げてきた私でさえ、被爆者や2世、3世の苦しみは理解できていなかったとしんとした気持ちになりました。
    頁数も少なく、あっという間に読めるコミックだけど、深くて、重くて、毎年読み返すことになるだろう作品です。

  •  夏に放映されていたドラマを観たのがきっかけで、購入して読んだ。
    『この世界の片隅に』とはまたちょっと違った、一人の女性の物語からはじまる、広島と原爆をめぐる家族のつながりを辿る旅のようなお話。
    何か大きな決断を迫られるとき、人は自分がいったいどんな存在なのか、確認したくなるのかもしれないな、と思った。様々な人の人生と思いの上に今がある。
    時々確認することで、自分を愛しく思える。
    その確認作業の大切さを、この本はそっと教えてくれる。

  • 「この世界の片隅で」が佳作だったのでこちらも手にとってみました。
    こちらも原爆絡みの作品ではあるんですが、戦中(後)、70~80年台、現代の3つの時間で書かれており、時代の継続性というのを改めて感じさせられました。
    重いテーマを扱いながらコメディを含ませて軽く仕上げているところはさすがこうの先生というところでしょうか。

  • 映画「この世界の片隅に」の原作者こうの史代が被爆者をテーマに描いた作品。

    こうの史代の絵柄は柔らかく優しいタッチであるが、人々の心の陰影も鋭く描き出されている。
    その為、登場人物達の苦しみや悲しみがより深く心に突き刺さってくる。
     
    夕凪の街
    この作品は、原爆が投下されてから10年が経過した広島で慎ましく懸命に生きている若い女性、皆実が主人公である。
    ほのぼのと優しい絵柄だけに、彼女が経験した壮絶な体験が語られるときその恐ろしさが際立つ。
    彼女は幸せを掴みかけるが、原爆の後遺症により亡くなってしまう。
    本当に悲しい物語であった。
    被爆した方々の癒すことのできない心の傷と、いつ発病するかわからない恐怖を抱えて生きていかなければない苦悩を感じた。

    桜の国
    夕凪の街の主人公の弟旭の娘七波が主人公である。
    舞台は現代で、家族に内緒で広島に向かう父を尾行する七波のお話。
    現代から過去の回想シーンへの移行が情緒豊かで本当に美しいと感じた。
    皆実と七波がよく似ているのが、この物語に何か特別な意味を与えている気がする。

  • 被爆二世の話。
    日常の中にごく自然に戦争や原爆が入り込む。

    ここには「HIROSHIMA」や「ヒロシマ」はなく、
    「広島」が描かれていてホッとした、という感想は変だろうか。

    「日本は」なんて大きな主語よりも
    「私は」という単位でしっかりと考えていきたい。

  • 広島の戦後はこういうものだったのだろうと思わされる。
    「黒い雨」より重かった。

  • 「この世界の片隅に」の著者。
    絵でわかるね。
    「この世界~」の4年前に出版されていたこと、知らなかった。

    ここから、著者の思いは「この世界~」へと流れていくのかな。
    物語の時間と逆だ。このお話は戦後だからね。

    「この世界~」を読んだ時も、正直言って「なんだこれ?」という感情が最初だったけど、「夕凪~」もそう。

    修学旅行で行った広島、見学した原爆ドーム、映画や絵本で見て、聞いて、
    知っているはずの戦争が、
    急に身近に迫って来るように感じられる。
    なんだか心をえぐられるんだ。
    それがあまりにも。
    平凡だから。
    いつもの日常だから。

    知らなかった、「戦争のこと」が書かれてある。
    想像できなかったことが。
    こんなふうに戦争を、自分のものとして感じられることは
    平和な日本においてはなかなかないと思う。

  • ★5.0
    映画が大好きだったのに原作を手に取る機会がなく、「この世界の片隅に」の公開で初めて同じ作者と知って遅ればせながら購入。やっぱり「夕凪の街」が切なくて辛い、でも優しくて愛おしい。映画に比べると淡白な構成だけれど、空間で見せる皆実を始めとする人物の心情に胸が締め付けられる。生きてほしかった、幸せになってほしかった、願うのはただそれだけ。そして、現代を舞台にした「桜の国」では、身内を被爆で亡くした家族、被爆二世への偏見が描かれる。が、悲観を前面に押し出すことなく、明るさ爽やかさもある1冊。素晴らしい!

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著者プロフィール

こうの史代:1995年デビュー。広島市生まれ。代表作は「さんさん録」や、文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞作「夕凪の街 桜の国」、アニメーション映画のヒットも記憶に新しい「この世界の片隅に」など。

「2022年 『ぴっぴら帳【新装版】』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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