- Amazon.co.jp ・マンガ (103ページ)
- / ISBN・EAN: 9784575297447
感想・レビュー・書評
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100ページに満たない漫画です。でも、映画でも、小説でも、「長さ」じゃない。長くても短くても、何かを感じることができれば、見る価値。読む価値はある、というもの。
この本を手にしたのは、八月のお盆の時期。6日の広島平和記念日から15日の終戦記念日にかけて、テレビや新聞などで、戦争や平和に関する特集を目にします。
でも、もの心ついた頃には、高度経済成長期だったわたしの周囲には、戦争の話をする親戚・知人もなく、「戦争」はどこか昔の出来事、他国の出来事なのです。逆に言えば、だからこそ、戦争に関する文章も冷静に読める、ように思いますが。
戦後生まれの漫画家が書いた「ヒロシマ」という話題性につられて、手にしたのですが、...
戦争や「ヒロシマ」のことよりも
「生まれる前
そう
あの時 わたしは
ふたりを見ていた
そして確かに
このふたりを選んで
生まれてこようと
決めたのだ」(93~95ページ)
この文章にやられました。
自分の両親のことを、この両親のもとに生まれてきてよかったと思えることが、とても素敵なことだと思えてなりませんでした。
わたしは、お盆に、祖父母の位牌に手を合わせても、その時しか、祖父母のことを思うことはなく、
普段、同居している両親に感謝することもなく、
先祖とか過去とのつながりも感じられない日々をすごしているなあ、と思いました。
この家庭に生まれてよかった、とか、この家族でよかったとか、
自分の先祖、ルーツを自分で認めることができるとか、
そういうことがあるとないとでは、生きかたに違いがでるんじゃないだろうか。
自分は、いったいどうしてここに生きているのだろうか、ということを、も少し考えながら生きてみたらどうなのだろうか...なんてことに気づかされました。 -
家族が買ってきたので発売直後に読んだ。
絵柄も好きだし、物語として面白いと思ったが、
「核心」には腫れ物を触るような手つきでしか
触れられないものなのか……と、
期待が大きかっただけに、ちょっと不満を覚えた。
もっとも、この痒いところに届かない
遠回しな表現こそが美点なのかもしれないが。-
「この痒いところに届かない」
もっとドロドロでも、もっと突き放した感じでも、色々アリだと思うけど、これはコレで、すんなり受け入れられました。「この痒いところに届かない」
もっとドロドロでも、もっと突き放した感じでも、色々アリだと思うけど、これはコレで、すんなり受け入れられました。2012/04/17
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私の祖母は広島に生まれ、広島に育ちました。
祖母は被曝はしなかったけれど、
祖父も海軍出身ということもあり、
私は関東に生まれながら、幼いころから
教科書に書かれているよりももっと身近に
戦争のおそろしさ・哀しさを感じていました。
大きくなってから
作者のこうのさんが書かれているように、
そのことが
広島、長崎の出身の方以外の意識と随分違うことに私も気付いていました。
なんとかこの哀しみを繰り返さないために
伝えていかなければいけない、という想いはありながら
自分の「怖い」という気持ちを優先させ、
これまで避けてきた題材。
でも、この本はむやみに怖がらせたり
誇張するのではなく、特別扱いするのではなく、
あのヒロシマにいたひとたちも
その子孫も
わたしたちとおなじ、日常を営むひとりの人間であるというあたりまえのことを
ささやかに描き、気付かせてくれます。
あとがきを読んで、さらにこの物語の重要性を思いました。
友人の勧めで読んだのですが、多くの方に読まれてほしい物語だと心から思います。 -
1954年に公開された映画『ゴジラ』をいま見返して最も印象的なシーンは、ゴジラの襲撃を受けた少女に科学者がガイガーカウンターを当てて放射線量を図るシーンであろう。水爆実験により誕生した怪獣ゴジラは放射能を持っており、近づいた人間は被曝するという設定だったのだ。
やがてゴジラはシリーズを経るにつれて子供向けの娯楽作品へとシフトしていき、放射能にまつわる設定もいつの間にか忘れ去られていく。その過程を日本人が原爆の恐怖を忘れてきた過程と重ね合わせるのは容易だ。
そしてそのゴジラシリーズが一応の完結をみた2004年、こうの史代の手によるマンガ『夕凪の街桜の国』が刊行された。いま思うとまるで、原爆が投下された過去を忘れないで、原爆が投下された背後にどんな人のドラマがあったのかを忘れないで、と作者が訴えているようでもある。
1955年、終戦から10年、広島。原爆投下を生き残り、市内の建築会社に勤務する平野皆実は、離れて暮らす弟を気にかけつつ川べりの粗末な小屋に母親と暮らしている。暮らしは楽ではなかったが、持ち前の明るさで前向きに生きる皆実は周囲の人気者だ。しかし同僚の男性から好意を寄せられた時、その事に幸せを感じた時、皆実の脳裏には「あの日」の事が生々しく蘇るのだった。
前編「夕凪の街」は原爆の惨状を経験した若い女性を主人公に描かれる。一見元気に生きる彼女も、こめかみや左手にはヤケドのあとが残っており、それを隠して生きている。たくさんの見知らぬ人々の死体を乗り越えて生き延びてしまった自分を責める気持が彼女を苛む。
「しあわせだと思うたび美しいと思うたび/愛しかった都市のすべてを人のすべてを思い出し/すべて失った日に引きずり戻される/おまえの住む世界はここではないと誰かの声がする」
そして10年を経て彼女を襲う運命。終盤で描かれる彼女のその痛切な独白は読者の心に刻み込まれるだろう。
後編「桜の国」はさらに2部にわかれており、1987年の東京と2004年夏の広島などを舞台に、原爆を知らない世代の視点から皆実らのたどった生涯を捉えなおしていく。ここでは皆実の弟である旭の娘・七波の成長が中心に描かれ、現代に生きる人々の姿と戦争の記憶が浮き彫りになる。
そして3世代にわたる物語が収束していくラスト、大切な街の記憶の中に七波は何を見るのか。忘れ難い余韻を残す物語だ。
合計で100ページ足らず。最近のマンガ界の流れからするとずいぶん短めのストーリーだが、密度はかなり濃い。そしてその中で一貫して描写されるのは原爆投下そのものの悲惨さよりも、「その後」を生きていく人々の複雑な感情である。
作者の優しいタッチの絵のおかげで見た目の強烈なインパクトというのは押さえられているが(僕らの世代だとどうしても『はだしのゲン』のトラウマが…)、それがかえって悲劇を鮮烈に浮かび上がらせている。美しい夕陽を眺めながら鼻唄を口ずさむ帰り道……何てことのないそんな幸せな日々が無数の死者の魂の上に成り立っているという衝撃。
第8回文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞、第9回手塚治虫文化賞新生賞を受賞するなど、各方面で評価を得ており、海外にも紹介され高く評価されている。
福島第一原発事故が予断を許さない状況の中、あの戦争と原子爆弾の過去を見つめなおす事は今の日本人には辛い作業だろう。かつてこれだけ痛い思いをし、その後「唯一の被爆国」と世界に発信してきた我々がどのような事態に直面しているのか。もちろん原爆と原子力の平和利用は同レベルの話ではないが、しかし無関係な話でもない。つまり、あまりに恐ろしい目にあった過去を終わってしまったことだと忘れようとするのではなく、それがその時代に生きた人々の紛れもない現実であるという事を常に認識して我々は生きていかねばならないのだろう。
悲劇は一瞬で終わるわけではない。生き延びた人たちにとってその悲劇は一生続くのだから。 -
十年経ったけど
原爆を落とした人はわたしを見て
「やった!またひとり殺せた」
とちゃんと思うてくれとる?
柔らかく可愛らしい絵で描かれる、原爆後の広島・その周辺の人達の様子を描いた漫画。どこかでお勧めレビューを見て、ずっと読みたかったのだけれど、先日購入。
登場人物は、「戦争反対」とか「核反対」とか具体的に戦争を否定するようなことをするわけではない。ただ、生活しているだけ。でも、その生活の中からは、「原爆」がいかに自分の生活や人生や、家族や街を変えてしまったのかが、静かに伝わって、切ない気持になる。
『はだしのゲン』のような攻撃的なまでの「戦争反対」ではなくて、静かに、「こんなことやめようよ」と訴えかける漫画だった。-
「静かに、「こんなことやめようよ」と訴えかける」
子どものために、と思って放射能汚染の心配のある食べ物を遠ざける。子孫にどんな影響があるか判...「静かに、「こんなことやめようよ」と訴えかける」
子どものために、と思って放射能汚染の心配のある食べ物を遠ざける。子孫にどんな影響があるか判らないので原爆被害に遭った人との結婚を躊躇する。これって同じ発想なのかと思うと辛くて何も言えない。。。2012/04/13
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静かに、戦争の悲惨さを訴えかけてくる本。
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ぜひ、みんなに読んでもらいたい本です。優しい絵柄からは想像できない、心が切り裂かれるような描写から、戦争の悲惨さを、語ってくれている気がします。
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名作。