貧乏の神様 芥川賞作家困窮生活記

著者 :
  • 双葉社
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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575308679

感想・レビュー・書評

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  • 作家という稼業は、売れているのはほんの一握り、流行が去るのも速いし…とはいえ、柳さんは芥川賞まで取ったメジャーな作家さん。
    何故困窮生活?と思って読んだが、なるほどその行動力によるものが大きいのかも。
    しかし困窮しながらも、必ず手を差し伸べてくれる人がいて、その人徳も柳さんの行動力からくるものなのだなぁと思う。

  •  人に原稿を書かせておいて原稿料を払わないという、前代未聞のブラック雑誌『創』でのエッセイ(一部)と、泥棒編集長とのやりとりについて書いた著者のブログをまとめたもの。大変厳しい生活であることはわかったが、しかし最初に「400字3枚5万」の口約束が「1枚4千円」にまで下げられるのは納得いかない話だ。これじゃ作家も育たないわ。

  •  2部構成である。前半の「Ⅰ-日々是貧乏」は、雑誌『創』に連載された身辺雑記エッセイの中から、とくに困窮ぶりがあらわれた回をセレクトしたもの。
     いっぽう、後半の「Ⅱ-原稿料を払ってください」は、『創』の原稿料未払い騒動の顛末を、ブログの抜粋とインタビューでたどっている。

     「やはり、芥川賞まで受賞した著名な作家が食うや食わずであるはずがない、という先入観を持っている方が多いのです」と、「はじめに」にはある。「芥川賞作家困窮生活記」という副題は、そうした先入観を逆手にとったアイキャッチとして秀逸だ。

     まあ、芥川賞を受賞しながらホームレス同然の暮らしをしていた作家だっているわけで、「芥川賞を取れば生活は安泰」などというのは、業界を知らない人の幻想にすぎない。
     柳さんも書いているように、「小説家が、筆一本で食べていくのは奇跡みたいなもの」なのだ。

     もっとも、本書前半に収められたエッセイは、困窮をテーマにしたものばかりではなく、多彩な内容である。ただ、そのディテールに困窮ぶりがにじみ出ているのだ。たとえば――。

    《わたしは、相変わらず貧乏暇なしの日々を送っています。
     特に9月は史上何番目かの経済危機で、料金未払いのために固定電話とインターネットの回線を切られ、あと2日で携帯電話も切られるという段になって、わたしは10年近く集めていた記念切手を売ることにしました。》

     貧乏話ではあるものの、筆致には飄々としたユーモアがある。それに、不遇を嘆く暗さよりも、「武士は食わねど高楊枝」的な潔さが全編に満ちていて、読後感はむしろ爽快だ。

    《書くことを仕事に選んだ18歳の時から、金銭的や時間的には無理をしても、自分の性分や生き方には無理のない仕事をしよう、とわたしは決めたのです。(「はじめに」)》

     困窮ぶりの中から、著者の志の高さが伝わってくる一冊。

  • 谷崎潤一郎の恋文 - 松子・重子姉妹との書簡集に挫折したばかりなので、生活に根ざしたエッセイを読み切れるかなと自信がなかったのですが、1日で読了。「読まれることで自分を他人に託すことによってしか生きられない(168頁)」のとおり、著者の思いに入り込んでしまうエッセイでした。

  • 柳美里はほとんど読んだけど、大概私小説なので何を読んでもまたこれか…という…
    なのに、稿料の不払いの事件で、これでもかと同じ文章で掲載され、出版する側も側だけども、読んでる方もこれでお金がもらえるのか…と。まさに身を切り売りして、何を書いたかではなく柳美里が柳美里であるための行為なんだなぁと思う。
    小さい頃から子供のたけを登場させているけど、どんな大人になるのか心配でしょうがない。どんなになっても柳美里はそれをネタに書くのだろう。

  • この前に読んでいたのだ「一私小説書きの日乗 野性の章/西村賢太」で、似たようなニオイを感じますね。女西村賢太と言ってもいい。

    露悪的なまでの赤裸々な生活の描写。今回は貧乏がテーマで、ネットは切られ、国保は滞納し、美容院に行く金がないので財布を忘れたフリをする。

    攻撃的な性格。攻撃に値すると思うと徹底して攻撃する。今回は「創」の編集者。非は相手にあるとしか思えないが、双方の意見を聞かないとホントのところは分からない。非があったとしても普通であれば、本人に会って協議、請求し、それに応じなければ弁護士マターになるところを、一方からだけの意見をネットやこうした活字でドンドン出していく。腹がたつと甘いものが食べたくなると食べたものを列挙するところなど喜々としてやってるとしか思えない。その毒気たっぷりな性格が読んでるほうは面白い。

    それにしても、作家だけで食っていけるのはほんの一部の人だと聞いていたが、こんなに悲惨なものかと思う。特に書けない作家となると救いようがない。

    うつ病の症状や無謀な山登りなどセンセーショナルな方向に突き進んでいく。子どもの虐待の告白もこうした性癖から来てるんでしょう。この人のエッセイも必読アイテムですね。

  • 柳さん自身がすこし浪費癖がありさう
     山登りのはなしとかおもしろいものもそれなりにある。後半の創出版未払ひをめぐるやりとりも珍しかった。しかし金銭感覚について申し上げると、柳さんの感覚は私とはすこし離れてゐるやうだ。

  • お金がない時の切羽詰まった感は、若い頃何度も経験したので、とても共感。貧乏も神様になれば、こっちの味方ですね。

  • 興味はなくても著名人なのであれこれ宣伝やゴシップは勝手に入ってくる。それほど有名だと思う。でも読んだことなかった。いや、小説に関しては未だ読んだことはない。これはエッセイ。図書館で何気に手にとってみた。

    そうそう、原稿料未払いで何だか揉めてたことあったっけなー。その一連のことが後半部分に載っている。そういうことだったのね。
    若い頃に賞をとって稼いだはずなのにお金がない。カツカツの生活。金銭感覚がおかしいとかじゃない。元カレ(俗っぽい言い方)のガン治療代払ってた。(東京キッドブラザース、懐かしいな〜。)

    息子さんのことや同居人のことなど日々の生活が綴られている。

  • なんだか…
    この本を読む限り、出版社が完全に悪いと思うが、相手の言い分は聞いていないので、なんとも言えない。でも、ここまでになる前に、支払いを求めたら、良かったのでは?と思う。
    一緒に暮らしている男の子、息子へ及ぼす影響はかなり多大だと感じる。

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著者プロフィール

柳美里(ゆう・みり) 小説家・劇作家。1968年、神奈川県出身。高校中退後、劇団「東京キッドブラザース」に入団。女優、演出助手を経て、1987年、演劇ユニット「青春五月党」を結成。1993年、『魚の祭』で、第37回岸田國士戯曲賞を受賞。1994年、初の小説作品「石に泳ぐ魚」を「新潮」に発表。1996年、『フルハウス』で、第18回野間文芸新人賞、第24回泉鏡花文学賞を受賞。1997年、「家族シネマ」で、第116回芥川賞を受賞。著書多数。2015年から福島県南相馬市に居住。2018年4月、南相馬市小高区の自宅で本屋「フルハウス」をオープン。同年9月には、自宅敷地内の「La MaMa ODAKA」で「青春五月党」の復活公演を実施。

「2020年 『南相馬メドレー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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