猫の本棚

著者 :
  • 平凡社
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本棚登録 : 142
感想 : 18
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  • Amazon.co.jp ・本 (181ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582835120

作品紹介・あらすじ

武田百合子から谷崎、浅生ハルミンまで、数々の「猫文学」に登場する猫たちの尽きない魅力を、一冊一冊、丁寧に読み解いてゆく。猫と本をこよなく愛する人へ贈る、名作「猫文学」ブックガイド。

感想・レビュー・書評

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  • 古今東西、猫を見つめる作家たちの小説やエッセイの紹介本なのだけど、おや??なんか一味違うのは、木村さん自身の持つ猫への距離感のせい? 私は一時期、行きつけの(*^_^*)図書館で「じゅんさん、猫の新しい本が入りましたよ」と司書さんから声をかけられるほど、猫本を借りていたことがあります。
    ただ、司書さんの言う“猫の新しい本”には猫が主人公のファンタジーとか、猫の写真集とかも含まれていて、申し訳ないけどそれは私が読みたいものではなかったんですよね。私が読みたいのは、ひたすら人間が猫を愛するエピソード、猫にやられちゃった人々のお話なのでした。

    私自身、うちに今いる15歳と1歳の二匹の猫たちがただただ可愛くて、猫と一緒に住めるという幸福に感謝、そしてまた、去年15歳で身罷った猫には特別の思いがあるという、結局、同類の話が読みたいということから、なんですね。

    でも、この「猫の本棚」で木村さんの取り上げた人間たちは、猫と人間との間の線引きが時にかなりのクールさであれれ???と思わせられてしまった。もちろん、猫を愛する人々のお話、ではあるのだけど、そっか、そういう角度からの猫大好き物語集もありだよね、と新鮮な思いで読みました。

    たとえば、私の猫本コレクションで一番好きだと思っている金井美恵子「遊興一匹 迷い猫あずかっています」も、木村さんにかかると

    金井美恵子がいくらトラーを甘やかしたとて、そのトラーの可愛らしさを綴る文章は決して甘ったるいものにはならない。徹底した甘やかしをシニカルにクールに描く。・・・それに金井美恵子が、猫を冗談めかした喩え方でしか擬人化せず、あくまでも愛玩動物として見ていることも、その甘やかさを引き締めている。


    となり、

    なるほどね・・、私はここまで猫を甘やかしはしないから、まだ私は大丈夫、なんて思っていたのが、う~~ん、やっぱり私の方がアブナイだろうか、なんて、初めて思ったり、
    先般、トラーが息を引き取った時には、金井さんとお姉さんはどうされているだろう、と心配していたら、金井さんのエッセイで「トラーがいないとつまらない」と姉を言い合っている、とあり、
    悲しい、ではなく、つまらない、と言われる金井さんに敬服したりしていたのだけど、その根本のお気持ちがここにあったのか、とまで思い当たったり。

    また、内田百聞「ノラや」は、読みたびに大泣きしてしまう本なのだけど、そんな百聞にさえ、木村さんは、


    彼は元来の猫好きではない。(これは確かに百聞自身も繰り返し言ってるけど)ノラが特別だったわけ、それはなんだろう。百聞はそのわけを自分ではわかっているにちがいないのだけど、はっきりとわかるように書きはしない。ノラは百聞の胸中の何かを開く鍵だったのだと思う。

    と。

    木村さんは、猫好きである自分が好き、という人がとてもお嫌いのようで、(そのお気持ちは私にもよくわかります。)そんな目線からの猫本紹介だから、なんでしょうね。

    う~~ん、私はまだまだ修行が足りないなぁ、なんて、頷けるところも多かっただけに猫好き道(*^_^*)の奥深さを感じさせられた一冊でした。

    • 長老みさわさん
      あ~。そんなじゅんさんには新井素子さんの「銀婚式物語」読んで欲しいかも。素子さんちの「ファージ」は確かに世界最高の猫(素子さんち比)です。
      あ~。そんなじゅんさんには新井素子さんの「銀婚式物語」読んで欲しいかも。素子さんちの「ファージ」は確かに世界最高の猫(素子さんち比)です。
      2011/11/05
    • じゅんさん
      おぉ、それはぜひ読みたい!
      私は、猫にやられてしまって(*^_^*)いて、かつ、冷静な部分も少しは持っている、という人の話が読みたい、よう...
      おぉ、それはぜひ読みたい!
      私は、猫にやられてしまって(*^_^*)いて、かつ、冷静な部分も少しは持っている、という人の話が読みたい、ようでございます。
      2011/11/05
  • 紀伊國屋でチェックし、後日購入。
    いろいろな作家さんの猫ストーリー紹介です。
    いくつか読んでみようと思う本ありでした。こういう切り口で本をchoiceするのもいいなあ~☆

  • 【紙の本】金城学院大学図書館の検索はこちら↓
    https://opc.kinjo-u.ac.jp/

  • 著者は、猫が好きな自分が好きという人がひどく嫌いらしい。
    猫がかわいくてたまらなくて、メロメロになっている人もあまり好きではないようだ。

    だから、選ばれている本も、猫に対する眼差しがクールなものが多い。
    そして古い本が多いからか猫の飼い方が現在と違い、放し飼いや私からするといい加減で適当に思えることが多くて、猫に対する考え方も昔と今とで随分変わったものだと思った。
    著者はそういう、現代の室内に閉じ込めて甘々に甘やかして猫っ可愛がりすることが嫌なのだろう。

    正直私は猫が好きで、猫を好きな自分も好きだ。
    猫が好きという部分も含めて自分だからだ。自分を好きだから本当は猫のことは見ていないと、どうして断言できるだろう。
    猫も自分も好きに決まっているではないか。
    そのため、初っ端の前書きの時点で著者とは気が合わなかったし、読み終わっても同意できない。

    ただ、迷い猫を探しているポスターに対する気持ちは痛いほどわかるし、全く同じだった。
    結局、猫に対するスタンスは人それぞれ全く違うということなのだろうな。

  • 木村衣有子さんの「猫の本棚」、2011.7発行です。安房直子、内田百閒、長田弘、鴨居洋子、幸田文、笙野頼子、谷崎潤一郎、夏目漱石、野澤延行、吉行理恵ら28人の作家の猫の文学作品が紹介されています。作品名を予想してみて下さいw。ーーー「猫の結婚式」「ノラや」「ねこに未来はない」「のら猫トラトラ」「ふたつボン」「愛別外猫雑記」「猫と庄造と二人の女」「吾輩は猫である」「のらネコ、町をゆく」「小さな貴婦人」ーーー

  • 紹介されている猫本は近代~現代の日本文学が多い。
    (恥ずかしながら私があんまり読まない分野だ。)
    日本文学の中にはこんなにたくさん猫本があるんだ。
    小林一茶も猫の句を沢山読んでいて、そう言う本がありますね。

    こちらの本の紹介で読みたくなった猫本
    ・ポール・ギャリコ『猫語の教科書』
    ・庄治薫『ぼくが猫語を話せるわけ』
    後は流れで。

  • 猫が出てくる文学作品をたくさん紹介している本。読んだことのある作品については、こんな捉え方があるのかという新しい発見があるし、読んだことのある作品については、読んでみたいなと思わせてくれます。

    個人的には、後半の「猫を知る」のコーナーに出てくる作品の方が気になります。猫を取り巻く環境や状況の時代による変化は興味深いものです。

  • 猫文学の案内書。
    猫について書かれた小説・エッセイなどが
    紹介されている。
    『猫語の教科書』『吾輩は猫である』はもちろんのこと
    『猫にかまけて』『富士日記』『ノラや』他多数
    わりと有名どころばかりかな

  • 通して読むといささか飽きる。

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著者プロフィール

随筆家。1975年栃木生まれ。東京・浅草に暮らしながら、盛岡通いを続ける。生活哲学を映したエッセイに定評がある。著書に『京都カフェ案内』『猫の本棚』(平凡社)、『あのとき食べた、海老の尻尾』(大和出版)、『味見はるあき』(木村半次郎商店)などがある。

「2018年 『味見したい本』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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