新書689コミュニティを再考する (平凡社新書 689)

  • 平凡社
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感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (203ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582856897

感想・レビュー・書評

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  • 斎藤純一先生が鼎談者になっていたので。農村コミュニティ論もこの位の大きな射程で議論できればいいのにねえ。農村計画学会とかで、このレベルの議論が避けられるのは、かつての学生運動ノリへの嫌悪感だろうか。
    【読後】
     まあ、、3人とも「新自由主義への対抗軸」という部分と、ナショナル・コミュニティへの吸収を恐れる点では一致している感じ。伊豫谷先生はコミュニティ形成のプロセスに興味がある感じだけど、個人的にそこはあまり関心が寄らず。吉原先生の議論はいまいち意味が解らない。「あったけど、なかった」論。はあ、そうですか・・・。で、結局”聞きなれた”齋藤先生の話がしっくりきました、というオチ。
     それでも、コミュニティ論の思想史的な位置づけと日本における独自性が整理できる点はこの本の良さかもしれない。ただ、いかにも抽象論という感じが拭えず、直接支払制度などへの言及もあるんだけど、唐突の感否めず。抽象的な思想史的整理を”段階論論”とするなら、事例集的な実践論との間にはもう一つ原理論の挟まる余地がありそうですね。って宇野派みたいですけど。

    【まとめ】

    市場がグローバル化し、国家が国民の統合・調整機能を失いつつあるなかで、自己負担の限界と相互配慮への期待や、伝統的な反近代的言説としての非道具的で持続的な関係への欲求、脱近代主義的生活への願望から、コミュニティへの関心が拡大している。コミュニティに参加する人の特徴として、多元的関与を前提とし、持続的関係と感情的な相互承認を求めることが多い。
    また、日本で意識されるコミュニティは、「価値観の共有」よりも「問題意識の共有」に特徴づけられる。そのコミュニティは、経済成長に依存しないこと、空間的距離があるものの、相互性・持続性のある関係(distanced community)の維持、継続的な対話の関係を与件として(再)構築されなければならない。
    コミュニティは、完全に国家から自立できない。しかし、国家の下請けを脱した自律性をもつオートノミ―として存在する必要がある。そのためには、コミュニティの存立視点を、生産よりも持続を目標とする社会的協働に置くこと、そして、それを理由とした再分配を承認する政治的共同体を構築する必要性がある。

  • 悪い本とは思いませんが、抽象的で自分のような門外漢にはイメージが湧きづらいところもありました。もちろん、有る程度専門の人にとってはサクッとコミュニティ論を整理できる本なのでしょう。新書向きではないですね、良くも悪くも。

    蛇足ですが、抽象的=分かり辛い、という誤った言説はこうして生まれるのですね。

  • 自分の理解力が低いのだろうか。
    どうしてここまで分かりずらい内容の
    文章になるのだろうか。

    じっくりと学問として勉強をする人には
    向いている本なのかも知れませんが。

    自分がしっくりこなかったのは、あまりにも
    実例が少ないこと。
    身近に感じる事象が書かれていないと、
    イメージには落としこまれてこないと思うのだが。
    新書だから、そこはもっとハードル低くしても
    良いと思いました。

  • コミュニティという言葉が、ある種のノスタルジーな感覚を含んだ、淡い希望に沿った形で使われ始めている。ポスト3.11の時代を、その「コミュニティ」を切り口にして考えている本です。3人の教授、それぞれの立場からの章と、3人の対話の章で構成されています。

    こちらを購入する前にAmazo●レビューをみたら、なんだか酷評してる人がいたけれど、その酷評は的を外してるような…。

    3.11以降乱用される絆という言葉に辟易してる人も多いだろうし、ネオリベラリズムと新保守主義が奇妙に手を取り合っているのに危機感を感じている人も多いと思う。
    その言葉を代弁し、問題を分析し、思考の助けをしてくれる1冊です。

    Aug, 2013

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著者プロフィール

1947年、京都府生まれ。京都大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。博士(経済学)。東京外国語大学外国語学部教授、一橋大学大学院社会学研究科教授、順天堂大学国際教養学部特任教授などを歴任。一橋大学名誉教授。専門は、グローバリゼーション研究、移民研究。著書に『変貌する世界都市』(有斐閣)、『グローバリゼーションと移民』(有信堂)、『グローバリゼーションとは何か』(平凡社新書)などが、訳書にサスキア・サッセン『グローバル・シティ』(監訳、ちくま学芸文庫)などがある。

「2021年 『グローバリゼーション』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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