あずかりやさん (一般書)

著者 :
  • ポプラ社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591134672

感想・レビュー・書評

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  • 商店街にある小さな店、そこは‥
    何でも預かってくれる「あずかりやさん」の物語。
    ほのぼのと切ない、心休まる空間での出来事です。

    明日町こんぺいとう商店街の西のはじにある目立たない店。
    藍染めのシンプルなのれんに、やさしい「さとう」の文字が抜かれているだけ。
    空っぽのガラスケースの向こうの薄暗い部屋で、本を読んでいるのは店主の桐島透。
    目が見えない青年の物静かなたたずまい。

    一日百円で、何でも預かってくれる。
    料金は前払いで、取りに来なければ店のものとなり、使えるものは使う、売れるものは売る、処分するしかないものは処分するという。
    どうするか決めかねるものや、家において置けない事情があるものを預けに来る人たち。

    点字の本を届けてくれる相沢さん。
    紙を預けていく小学生の女の子。
    何年も前に、事件を起こした危険なものを預けていった男。
    人に託されたかばんを持ってきた少年。
    大事な書類を預けていく執事。
    高性能な自転車とお古のあずき色のママチャリを交互に預けていく男の子。
    自転車の気持ちが泣ける‥!

    視点がほとんど人間でなく、のれんに自転車、ガラスケース、猫と変わっていき、これが過不足なく描かれているところは上手いですね。
    そのために店主の家庭の事情もなかなかはっきりはしないのですが、物と人との関わり方に感じるものがありました。
    一人暮らしの静謐さと、おだやかな彼の淡々とした寛大さ、心がまれに揺れ動く様子、瀕死の子猫を育てた懸命さも、しんみりと心に入ってきます。

    店主の手のひらで息を吹き返し、そのとき生まれたと思っている白い猫。
    「社長」という名前を貰うが、ポーチドエッグがいいと思っている可愛さ。
    猫の語りは一番わかるところで、そうねえ、そうだよねえ‥と陽だまりにいる猫ちゃんに、微笑みかけたい気持ちに。

    テイストとしては「コンビニたそがれ堂」が近いかな? 「薬指の標本」というよりは。
    もっと言葉少なく抑えた筆致ですが、ほのぼのと心温まります。

  • 最初は暖簾視点。次に自転車。それからガラスケース。最後に猫。それぞれの視点から店主の身の回りに起こる様々な出来事を描いている。
    何とも不思議なファンタジーです。初めて大山淳子さんの本を読みました。素敵な物語を書かれる方ですね。他の作品も読みたくなりました。

  • 2年ほど前に読んだ本。どなたかが、ブクログ本棚に続編をアップされていたのを見て「あー!そういえば一作目を読んだなぁ」と思い出して登録。
    全盲の店主桐島君が静かな日々を送りながら、訳あって預かって欲しい物がある人から、一日100円でその品物を預かるという「あずかりやさん」。
    設定だけみると、なんか面白いのかなぁ…って思ってしまうのだが、話の語り手が人間以上に人間味のあるモノや猫なので、その暖かいノスタルジックな世界にすぅっと引き込まれるのだ。
    雑然とした日々に疲れた人は、是非手に取って心の休息を。

  • 盲目の青年が営む、一日百円でどんな物でも預かる「あずかりやさん」。第一話はアンソロジー「明日町こんぺいとう商店街」で読み、その作品世界にすっかり夢中になったので、一冊まるまる「あずかりやさん」ワールドを堪能できるのが嬉しくて!
    預かるものは実に様々。店主はあえて、どうして預けるのかといった理由を一切詮索しない。
    「あずかりやさんを訪れる人間は、大なり小なりなんらかの問題をかかえており、それを棚上げにするために来るわけですから、好奇心を封印した店主のやり方は正解であり、これこそが誠意あふれるサービスといえます」
    だからこそ生まれるいくつものドラマはしんみりするけどほのかにあたたかい。語り手が物や動物というのも、店主の真摯さを際立たせているように感じる。
    一話完結ものかと思いきや、意外な形で登場人物やエピソードがリンクしていてびっくりする(思わずページを遡って読み返したり)。一方で、もっと膨らませて欲しかったエピソードもあり…あえて読者の想像に委ねてるのかなとも思うけど、自分の解釈に自信のない部分もあり、若干物足りなさを感じたかな。
    一番好きなのは「ミスター・クリスティ」。素敵な自転車が出てくるのだけれど、この自転車を巡るストーリーが何とも切なくって…。高校の入学祝に、離婚した父に買ってもらった自転車を誇らしく思いながらも、そのことを母に言い出せない男子高校生。それぞれが大切な相手の幸せを願っているはずなのに、うまくかみ合わなくて…悩んだ末であろう結論に胸がぎゅっと締め付けられました。
    スピンオフでいいから、また「あずかりやさん」シリーズが読みたいな。店主の透さん、佇まいが素敵で、静かなあたたかさが印象的なキャラクターです。

  • 誰しも身の回りの物にまつわる思い出は、一つ二つはあるでしょう。
    若いころ、恋人に買ってもらった宝石なんかは、その場面とともに
    忘れ得ぬ記憶として残ります。
    引き出しの奥を探ると、長い間眠っていた記憶とともに、何でもない
    物が出てくることってありますよね。

    明日街こんぺいとう商店街の外れにたつお店、古い「さとう」ののれん
    を営業の合図に、今日も様々な人が思いの詰まった物を預けていき
    ます。あずかり料は1日百円、受け取りに来ない物はお店の物に。
    目の見えない店長は、見えないが故に預かる物も、預ける人の秘密も、
    大切に保管していきます。

    お話しの最初に出てくる少女。学校へ行く途中に預けた1枚の紙。はて
    何か?と思いましたが、お話しの後半で大人になった少女がお店を再
    び訪れるとき、なるほどと理解しました。
    心の底にいつも引っ掛かっている想い、前に進もうとするときに何かを
    変えたい。そんな気持ちが預け物に託されていきます。

    物語全体の雰囲気もほんわりとしています。時々個性を持った”物”が
    物語ったり、のれんをサラリと吹き抜ける風のようにお話が進んでいき
    ます。

    さて、自分の周りを見渡すとどうだろう。何度も思い出す過去の失敗、
    苦い思い出、物ではないが預けっぱなしにして流してくれたら少しは
    楽になるでしょうか。

  • 秋深まって肌寒い日にほっこり温かくなる本だった♪ こんぺいとう商店街の端っこにある元は和菓子屋だった店で何でも預かる「あずかりや」を営む目の不自由な青年が主人公、でも語り手は店の暖簾だったりガラスケースだったり自転車だったり飼い猫だったり。6話のすべてが繋がりを持ちながらエピローグでは前章で少し悲しくさせられた読者も再度ほっとして終わることが出来るメルヘンですね。優しい気持ちになれます。

  • 1日100円で物を預かる「あずかりやさん」、和菓子屋だったお店はゆっくりと時間が流れて行く。ものたちによる視点で物語で進むので、なんだか温かい雰囲気。みんないろんな事情を持って物を預ける。石鹸さんの話は泣いた。星の王子さまは、前に読んだことあるけどまた読んでみようかな。

  • 私だったら何をあずけるだろう…

  • 読書初心者です。
    スラスラ読め、読みやすく2日で読みました。少し時間を空けながら読んでいたので1日でも全然読めると思います。

  • とってもすてきな、心温まる本だった。

著者プロフィール

東京都出身。2006年、『三日月夜話』で城戸賞入選。2008年、『通夜女』で函館港イルミナシオン映画祭シナリオ大賞グランプリ。2011年、『猫弁~死体の身代金~』にて第三回TBS・講談社ドラマ原作大賞を受賞しデビュー、TBSでドラマ化もされた。著書に『赤い靴』、『通夜女』などがあり、「猫弁」「あずかりやさん」など発行部数が数十万部を超える人気シリーズを持つ。

「2022年 『犬小屋アットホーム!』 で使われていた紹介文から引用しています。」

大山淳子の作品

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