おしょりん

著者 :
  • ポプラ社
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  • Amazon.co.jp ・本 (335ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591147962

作品紹介・あらすじ

曽祖父母や増永一期生の人々が眼鏡枠作りに取り組む中で抱えていた思いや悩みは、今の私達と共通したものであり、とても励まされました。
                                                         --増永眼鏡株式会社 増永宗大郎

めがねで世界を変えた、兄弟の魂の物語。日本のものづくりの真髄が、ここに。

明治三十八年、福井県麻生津村。増永五左衛門は、この地に農業以外の産業を根づかせるべく苦闘していた。そんな時、大阪へ出稼ぎに出ていた弟の幸八が、
当時はほとんど普及していなかっためがねに着目、村でのめがね製造を提案する。村人たちの猛反対の中、輝く地平を求めて、二人は困難な道を歩み始めるのだった--。「トライアウト」「手のひらの音符」などで注目を集める作家・藤岡陽子の新たなる代表作の誕生!

感想・レビュー・書評

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  • めがねの生産量日本一の福井。
    なぜ福井が日本一なのか、今まで不思議に思っていたけれど、今作のお陰でその理由が分かった。

    「これから日本に教育が普及し、読者する人口が増える。そうすればめがねはなくてはならぬものになる」
    雪に閉ざされた田舎の農村で、農閑期にできる産業を興して村の生き残りに繋げよう、と奮闘する増永兄弟。見事に兄弟のよみが当たって本当に良かった。
    私も中学生の頃からめがねをかけている。いつもはぼんやりと見ていたものが、めがねをかけるだけでくっきり見えるなんて。初めてめがねを掛けた時の驚きは格別。その人のそれから先の人生も変えてくれるアイテムの一つと言っても過言ではない。

    現代では当たり前のように子供から大人まで掛けているめがねが、どうやって日本に普及したのか分かって面白かった。先人たちの苦労のお陰。
    地域産業ってこうやって生まれるものなんだ、という点も興味深い物語だった。

  • めがねで世界を変えた、兄弟の魂の物語。日本のものづくりの真髄が、ここに。

    明治三十八年、福井県麻生津村。
    増永五左衛門は、この地に農業以外の産業を根づかせるべく苦闘していた。
    そんな時、大阪へ出稼ぎに出ていた弟の幸八が、
    当時はほとんど普及していなかっためがねに着目、村でのめがね製造を提案する。
    村人たちの猛反対の中、輝く地平を求めて、二人は困難な道を歩み始めるのだった--。


    福井の眼鏡。鯖江の眼鏡。
    日本での眼鏡の産地と言えば福井。
    今でこそ、誰もが知る事ですよね。
    何故、日本一の地場産業となったのかをこの本で知る事となりました。
    私は近視で子供の頃から眼鏡のお世話になっています。
    眼鏡なんてあって当たり前、何の疑問も不思議もなくかけていましたが、
    明治の時代、都会のほんの一部の人しかかけていなかった。
    視力という概念すら田舎の人にはなかった。
    眼鏡が普及するなんて思いもしなかった時代に、
    冬になると深い雪に覆われ、農業しかすることのない
    小さな小さな村で、眼鏡に着目し、地場産業を根付かせたいと
    奮闘した兄弟。
    物作りに対する情熱・試行錯誤・挫折・組織としての在り方
    技術面も読ませてくれますが、兄弟の絆や夫婦の絆
    職人たちの絆…胸が熱くなりました。
    家族や仲間や地元を思う心に心が温かくなりました。

    「おしょりん」とは福井の言葉で、
    田んぼも畑も川も農道も全てが雪で覆われ、その雪が硬く凍り付き
    けっして割れたりしない状態を呼ぶそうです。
    目的地まで最短距離を、脇目も振らずに行ける事です。
    そんな風にこの増永兄弟は進んでいったのですね。

    この本を読んで鯖江の眼鏡を買いたくなりました(〃ω〃)

  • 愛する村を救いたい!
    明治38年福井県麻生津村の増永五左衛門、幸八
    兄弟の熱い闘いが始まった‼︎

    小学生の頃からメガネ女子のわたし(O_O)
    メガネといえば福井そして鯖江!

    なぜ福井なのか?不思議でした。
    雪深い福井でメガネ作りに私財を投じて工場を作る
    兄・五左衛門、メガネを作る技術、人、販路を大阪からひたすら村の兄に持ち帰る弟・幸八
    ただただ凄いとしか言えません(*_*)

    おしょりんの中を走る幼い頃の2人に胸が熱くなりました(/ _ ; )

    日本の技術って凄いわ。
    わたしのメガネをよく見たらhand made Japan
    国内シェア95%の鯖江…
    もしや鯖江メガネ(o_o)?

    次は増永眼鏡店でメガネ作ろっと\(//∇//)\


  • 弟の提案しためがね製造に大反対だった兄が少しずつめがねに惚れ込み最後には全てをかけていく。そこには誰よりも弟を信じる兄と誰よりも兄を誇りに思う弟の熱い絆があった。増永兄弟の思いに胸を打たれた村人達もいつしかめがね作りに没頭していく。小さな村のめがねは世界を人生を変える事が出来るのだろうか…

    おしょりんの朝、二人の兄弟が目を輝かせ道なき道をぐんぐん歩いて行く姿が目に浮かぶ。脇目も振らずに目的地まで。それはめがね作りの険しい道を歩く二人に似ている気がした。私もおしょりん見てみたい。

    激動の明治時代、親の決めた許嫁、秘めた恋心、新しい何かを始める事の厳しさ難しさ、女の学問、朝ドラを見終わったような達成感と満足感と久しぶりのキュンを味わえた1冊だった。

    終わりの方で東京には女子のための大学もあると出てきて、ひとりニヤニヤしてしまった。「朝がきた」が好きだった私にはとても面白い本でした。

  • 素晴らしかった。

    地元、福井から日本の中心へ
    世界へ発信し続ける産業を育てたいという
    兄弟の強い思いが伝わった。

    藤岡さんの優しい文章の中に
    きちんと力強さもあると感じた。

    福井で眼鏡が作られているということは
    なんとなく知っていたのだけれど、
    こんなに地元を愛する力が生んだことなんだと思うと胸が熱くなる。

    地元への愛、
    職人への愛、
    職人の愛。
    兄弟の互いを思う愛、
    妻への愛、
    夫への愛、
    かなわぬ相手への愛。

    どの愛も自分よりも相手を想うことで
    成り立つ愛だった。

    特に兄の嫁むめの決心と弟、幸八のむめを想う気持ち、これは
    究極の恋愛と言える、と思う。

    愛することは相手の幸せを願うことで
    困らせたり、ややこしくしたりすることではない。
    そしてその愛はとても強くて、
    その愛し方は難易度が高い。

    弟、幸八ぃ、めっちゃよかった。
    兄ちゃんの五佐衛門もめっちゃよかった。
    しぶかったよぉ。

    映像化、してほしいなぁ。

  • 福井の田舎を舞台に明治当時まだ珍しい「眼鏡」作りに挑む兄弟の奮闘を描いた作品。
    西洋文化の影響をうけ社会が変わりゆくなか、先見の明で兄・五左衛門に眼鏡作りの可能性を説く弟・幸八。
    後戻りの出来ない状況での試行錯誤。
    五左衛門の妻・むめに対する兄弟が抱く複雑な気持ちからも目が離せない。

    『まだ暗闇にある未来を、手を伸ばせば届くことのように語れる男』

    素敵。夢物語で終わらせないところがまた格好いい…。
    読書を通して「先人の歩み」に触れ、その長い道のりを思うと尊敬の念を抱かずにいられない。
    未来に何の保証もない不安。手探りの日々。一蓮托生の重い責任。出会いと別れ。
    それらを全て乗り越えた結末に胸がいっぱいになった。
    五左衛門の想い。幸八の想い。むめの想い。末吉の想い。一人一人の気持ちを思うと胸に込み上げてくるものがある。
    じわりと染みる良作でした。

  • おしょりんの中を兄弟が歩く。
    弟が行きたいと言った方に兄が連れて歩く。
    この関係は大人になっても変わらなかった。
    行きつく先は地場産業の発展=眼鏡の製造。
    文明開化の音がする。と言われた明治。
    都会と地方の産業の差は大きく開くばかり。
    地場産業の弱い地方は土地も人もやせ細るばかり。
    その中で増永兄弟は眼鏡の製造を立ち上げる。
    0からの出発。
    失敗、挫折等々…。その都度乗り越えて行く2人の強さと脆さ。その関係に兄嫁であるむめ、従業員たち、それぞれの葛藤も書かれている。
    読み終わった後とてもお腹いっぱいになった。

  • 福井県の田舎で眼鏡作りを始める兄弟の奮闘記。福井県が眼鏡生産量日本一ってことは知ってたけどその過程が知れて良かった。未知のことに挑戦する兄弟や職人さんの凄さや価値観をアップデートしていく様が大変良い。ものづくりの原点がここにある。

  • 藤岡さんらしい良い話でした。福井県の人は必読の本ですね。初版本でしたが、238頁の暖簾を手で払い上げて店に入ったのは豊島さんではなくて橋本さんでは?

  • 福井県鯖江市で眼鏡産業の礎を築いた増永兄弟の熱い物語。素晴らしかった。ものづくりに対する情熱、試行錯誤、組織としての在り方、などなど読みどころはたくさんあるが、弟・幸八の心情が何よりいい。兄・五左衛門の妻、むめに対する秘めた愛、尊敬する兄への想い、ラストのセリフに涙が出た。「おしょりん」というタイトル(福井の方言)と、兄弟の生きた人生が重なり合った最終章に、深い感動と勇気をもらった。ぜひ映像化してほしいと思う。

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著者プロフィール

藤岡 陽子(ふじおか ようこ)
1971年、京都市生まれの小説家。同志社大学文学部卒業後、報知新聞社にスポーツ記者としての勤務を経て、タンザニア・ダルエスサラーム大学に留学。帰国後に塾講師や法律事務所勤務をしつつ、大阪文学学校に通い、小説を書き始める。この時期、慈恵看護専門学校を卒業し、看護師資格も取得している。
2006年「結い言」で第40回北日本文学賞選奨を受賞。2009年『いつまでも白い羽根』でデビュー。看護学校を舞台にした代表作、『いつまでも白い羽根』は2018年にテレビドラマ化された。

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