嘘つきの恋は高くつく (扶桑社ミステリー ヘ 6-3)

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  • Amazon.co.jp ・本 (513ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784594040062

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  • 気楽に読めるロマンチック・ミステリです。

    ニューヨークのとあるアパート。
    幼児教室の教師ナンシー・スターンは、人に反感を抱かせないタイプの感じのいい女性。
    ところが、同姓同名のナンシー・スターンが同じアパートに越してきた。
    金髪でスタイル抜群、セレブをインタビューするジャーナリストで、男性関係も派手。

    間違い電話や誤配に困ったナンシーは、つい電話でもう一人のナンシーになりすまし、紹介されて電話したという男性ビル・ハリスとデートまでしてしまう。
    宝石店に勤めるビルは、運命を感じるほどの素敵な男性で、うっとりしたのはいいが、嘘を重ねていく羽目に。

    幼児教室では、言うことを聞かない男児フィッシャーに皆が手を焼いていた。
    両親の寄付金が高いので、園長はフィッシャーが問題児だという事実を知らせようともしない。
    忙しい両親にほとんどかまってもらえない様子に胸を痛めたナンシーは、家庭訪問をしたり、何とかいい方向へしつけようと奮闘する。

    もう一人のナンシーが事件に遭遇、これが自分と間違えられたらしいと気づいたナンシーは‥?
    絡み合う出来事がテンポよく展開し、数ページごとにハラハラさせられます。
    根は真面目でいい娘なナンシーが、とんでもない事件に翻弄されつつ、少し大胆に人生を切り開いていくことに。
    面白く読めましたよ!

  • アパートに同姓同名のセレブ女性が引っ越してきてからというもの、幼児教室の教師ナンシーのところには手紙や電話、配達ものの間違いが絶えない。
    そんなある日、自分と間違われてもう一人のナンシーが殺されてしまい…。

    自分の同姓同名のセレブのふりをして出かけたブラインド・デートで恋に落ちる。
    あらやだ。どうしましょ?
    という始まりのロマンスと、殺人事件とそこに附随する事件のあれこれが上手く絡んだドメスティック・ミステリ。
    話の展開は予想の範疇をはみ出ることがないので、ある意味安心して読める。犯人だってバレバレ。
    それでも十分面白い。
    話の筋とはあまり関わりがないのだけれど、ナンシーが親に放置されている受け持ちの園児の心を開いていく過程がいい。この作品をロマンスとミステリだけじゃないものにしている。
    いやー、やっぱりジェイン・ヘラーは読んでいて楽しいなぁ。

  • お金持ちな家庭の子どもが通う幼児教室の先生をやってるナンシー・スターン(主人公)が住むアパートに、上流社会に属する同姓同名のナンシー・スターンが越してきて、セレブ界からいろいろ招待状や手紙や電話が間違って主人公のナンシーのところに連日舞い込むようになる。
    ゴージャスナンシーにブラインドデートを申し込む電話を間違ってかけてきた男の人に、つい主人公ナンシーがゴージャスナンシーのふりをして実際にデートしちゃって、ふたりは「運命の恋」に落ちちゃう。
    だけど、ゴージャスナンシーが殺されちゃって、デート彼氏が報道映像を見てウソつきナンシーのなりすましに気づいて激怒。
    ところが、本当は命を狙われてたのは主人公のナンシーのほうで、ゴージャスナンシーは間違って殺されちゃったことが判明。
    犯人は?
    なりすましデートした相手の彼氏との恋は?

    ……っていうラブロマンス仕立てなミステリ。


    この小説、プロット的にすごいおもしろかった。
    ミステリとしては、犯人はすぐにだれか想像できちゃうし、事件的に大した仕掛けもないから、「殺人事件」そのものはそんなにハラハラもしないんだけど。

    この小説のポイントは「なりすまし」と「誠実」。
    矛盾するこのふたつを同時に持つキャラクター性が、この物語をおもしろくさせてるんだとおもう。

    主人公のナンシーは、幼児教室でじぶんの受け持ってる男の子の「ウソ」をどうにかやめさせたいとおもってる。
    そのナンシー自身、じぶんの私生活では同姓同名の別人になりすます「ウソ」をさいしょは楽しんでしまう。
    そんなナンシーのデート相手の彼氏は、妻の浮気が原因で結婚生活を終わらせたバツイチの子持ちで、じぶんのパートナーが誠実でなかったことに傷を負ってる。
    だけど、その彼も実はナンシーをいろいろと騙してて……。

    基本的に「善人」な主人公が、同姓同名のナンシーのゴージャスな生活を羨むようになってから、じぶんを取りまく人たちの「裏面」を炙りだしていくようなストーリーになってる。
    ブリジット・ジョーンズみたいな「自立するオンナ」視点の軽いタッチの文体で、ものすごい読みやすいし、この小説の中にいつまでも入り込んでいたくなる。

    プロットがどんなふうにおもしろかったかっていうと、どんでん返し的な展開が連続するとこ。
    これは最後の最後まで続いてるから、ぜんぜん物語が「着地」しなくて飽きさせない。
    映画でいうと、これでエンドロール、っていうラストシーン的なとこで、「え、まだ続きあるのー」ってびっくりするかんじ。

    ナンシーのデート相手の彼氏は、わりとさいしょのほうから「なんか裏がありそう」な伏線があるから、それを疑いながら読んではいたんだけど。
    この彼が、実は悪者なのか、それともナンシーの味方になる人なのか、これがある段階まではぜんぜん読めなくてハラハラした。

    ナンシーのブローチを預かったまま壊しちゃったとこから「あれ?」ってかんじになって、この彼氏は悪い人じゃないのー、って一気にハラハラ感加速。
    殺人事件のほうは犯人がわりとすぐに読者にはわかっちゃうから(作品的に事件解決は終盤だけど)、このミステリ作品で「ハラハラ」するのは「殺人」じゃなくて、ナンシーの彼氏の正体のぶぶんだよねー。
    この彼氏の正体がはっきりしないことには、ナンシーのロマンスの行方もわかんないし。

    でも、この「ハラハラ」はある段階で彼氏のナゾが解明されちゃうとかんぜんに消えちゃって、あとはただのブリジット・ジョーンズ的な主人公ナンシーのプライベートストーリーになっちゃう。

    それでもこの小説を少しもつまらなくさせないのは、「ミステリ」と「ロマンス」だけじゃなくて、もうひとつ、ナンシーが受け持ってる男の子のエピソードがいちばん感動的だから。

    パパは勝ち組成功者のお金持ち。
    ママはパパのお金をつかいまくるだけの人。
    そんな両親に放置されて私生活すべてを外国人の子守りに面倒みてもらってる「ウソつき乱暴男子」のフィッシャー。
    「パパは海賊」ってウソをついて、ほかの園児にはすぐに暴力をふるうフィッシャーの問題はすべて両親のネグレクトのせい、ってナンシーは見抜いて、なんとか親と話し合いをしようとがんばるんだけど。
    フィッシャーのパパは園に多大の寄付をする「だいじなお得意様」になってるせいで、園長はナンシーに両親面談をぜったいにゆるさないし、親にはフィッシャーは「いい子」だとウソの報告をしてる。

    ナンシーはクビにならない程度に園長とやりあいながら、フィッシャーには愛が必要だとおもって、たくさんの「愛」をこの男の子に「示す」。
    それで、だんだんとフィッシャーがナンシーの愛情でかわってくのね。

    ナンシーやナンシーの親友、ナンシーの彼氏、ゴージャスナンシー、それぞれのオトナはじぶんの性愛パートナーとなる相手の「愛」を欲して、恋愛やセックスへの欲望を肯定してる。
    幼稚園にはいるまえのちいさな子どもがいちばん欲しい「愛」は、親の愛、なんだよね。

    ナンシーはネグレクトの両親の代わりに、フィッシャーの存在を肯定する「愛」を一生懸命注ぐことで、愛に飢えたフィッシャーを救ったの。

    それと、ミステリのプロットとしておもしろいのは、このウソつきフィッシャーのいろんなウソのうち、ひとつだけ「ほんとの話」があって、これがミステリの解明の鍵になるとこ。

    この物語を読み終わると、いちばんの「不幸」と「幸福」を知ったのは、まだ幼稚園年齢にも達してないフィッシャーだってわかって切なくなる。
    そして、読み終わったあと、ナンシーのこと、ブリジット・ジョーンズみたいに好きになって、彼女の「私生活」の日記をこれからも読みたくなる。

    ここからネタバレになるかも。




    この物語、読み終えていちばんホッとしたのはねー。
    フィッシャーがパパからなにも暴力的なことをされなかったこと。
    あのパパは、息子を「放置」はしてたけど、「じぶんの都合」で傷つけようとはしなかったよね。
    フィッシャーになんの危害もくわえなかったのは、父性愛なのかな、って。
    だとしたら、フィッシャーの両親の「愛」は、ものすごい身勝手な頑強な殻に包まれてるけど、「不器用」な形で存在はしてたのかな、って。
    それが、この小説を読んだあと、じんわりとあたたかいなにかをこころに残した。


    この小説は、ブリジット・ジョーンズが好きな人にはオススメ。

  • 幼稚園の先生ナンシーの住むマンションに、同性同名の女性が引っ越してきた。
    平凡な暮らしのナンシーと違い、華やかな生活を送る彼女を羨み、
    彼女になりすまし、たった一度のブラインドデートを楽しむはずが・・・。

    最初の設定がおもしろそうと思い読んだはいいものの、全体的に話が長い!!
    ミステリとラブロマンスとアクションなど詰め込みたかったのはわかるけど、三部構成にするほど面白くなかった。
    華やかな生活のナンシーについても第一部で殺されてからは消化不良が残るまま。
    ミステリの謎解きに当たる部分も魅せ方が悪く、あっさりしすぎ。
    完全にメインはナンシーの恋愛ドラマのみです。

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