- Amazon.co.jp ・本 (560ページ)
- / ISBN・EAN: 9784596541314
感想・レビュー・書評
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カリン・スローター『開かれた瞳孔』ハーパーBOOKS。
カリン・スローター幻のデビュー作と帯に書いてあるが、2002年にハヤカワ文庫から刊行された同名作の復刊である。ハヤカワ文庫で既読であったが、再読してみた。
カリン・スローターの全邦訳作品を読み、彼女がロマンス系ミステリーではなく本格派ミステリーの書き手なのだという頭で、改めてこのデビュー作を読んでみるとなかなか面白いではないか。北上次郎の絶賛も今なら頷ける。
小さな町の簡易レストランのトイレで検死官サラ・リントンは偶然、瀕死状態の女性大学教授を発見する。薬を投与され、切り刻まれ、レイプされた女性はサラの腕の中で事切れる。さらに、第二の事件が起こり、サラは忌まわしき過去と対峙する……
解説は以前からカリン・スローターを猛プッシュしている北上次郎。
本体価格1,000円
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2017年から2018年の間
面白そうなのに
「シリーズモノだから…」と
敬遠していた作品があり、そのシリーズを
遡ると途中で合流するのが本作の主人公サラで、それなら発行順からしてこちらから読むのが良さそう。と、思ったらハヤカワ版は絶版…
そこまで調べ、諦めていた。
前情報なしで、書店で見かけた時
「うえっ!」と声に出して、咄嗟に手に取っていた(何故かその書店では最後の一冊だった)
まさかの復活
小さな町のレストランのトイレで、大学教授の女性が腹部を十字に切り裂かれて殺害された。
偶然にも第一発見者となった検死官サラは、迷いのない切創と異様な暴行の痕に戦慄を覚える。
しかも犯人は被害者の習慣を熟知した人物――
この町に暮らす顔見知りに違いない。捜査が難航するなか、第二の事件が発生。
犯人の影はサラに忍び寄っていた……。
MWA賞受賞作家の原点、震撼サスペンス!
と言うあらすじと、表紙のイメージから
パトリシア・コーンウェルの「検屍官」を想像していた。
だけど、別れた元夫(野警察署長)への
断ち切れていない想いなど、ちょいロマンスよりの要素があり、比較的ピリピリしてない。
ただ、事件の凄惨さや
心理描写の濃厚さが在る。
(検屍官はどちらかと言うとイライラか?)
やはり「震撼」と謳うだけあり
どんどん物語に引き込まれていった。
途中まで、被害者の姉妹であり警察官のレナが主役なのではないか?と思うくらい動き回るのだが、やはり主人公はサラであり。
途中で読んできた全ての会話の印象が変わる。
結果:このシリーズどころか
カリン・スローター作品をほぼ本棚に登録
そして、今手元には「三連の殺意」がある。
(ニヤニヤしています)
余談:古本で「ジャック・リーチャー」シリーズを入手していたのだが
まさか…「ザ・ゴールド」で
コラボすることになるとは…
線がつながり、点になるのが
楽しみで仕方がない。 -
パトリシア コーンウェルの検死官シリーズ‥‥みたいなものを
想像して読んだのですが、
生々しく、
その描写が少し苦手でした。
後半から一気に読めました。 -
凄い書き手であるなとは思いつつ、順不同でここ一年で三冊を読み終えたばかりの、まだまだスローター・ワールド初心者で、正直言えば、怖々読んでいる感覚が否めない。
カリン・スローターのブームを日本で作っているのは、ハーパー・コリンズ・ジャパンという現在翻訳ミステリの救世主的存在の出版社である。今世紀になってからの新顔でありながら、今やMWA賞受賞のベストセラー作家として、邦訳新作が年間2~3作ペースで書店に並ぶというビッグネームとなっているのは注目に値する。
『検屍官』シリーズでミステリ門外にまで新たな読者層を産み出したパトリシア・コーンウェル以来の女流ベストセラー作家であろうか。帯に作者のカラー写真が入っている辺りまでP・コーンウェルを連想させてしまう。
二人の新旧売れっ子女流作家に共通するのは、男性作家顔負けの残酷な犯罪とスケール。捜査陣側の人間関係そのものが生み出す情念のドラマではないだろうか? ともにシリーズ作家ゆえに単作では描き切れないほどのキャラクター間の駆け引きに、サブストーリーとしてのページを割いている辺り、男性作家にはない女流作家的な<言い分>のようなものを多く感じ取ることができそうだ。
本書は、現在<ウィル・トレント・シリーズ>に合流しているスケールアップしているサラ・リントンを軸とした一部の主要人物たちにとっての前身作品群となる<グラント郡シリーズ>をスタートさせる重要な作品なのである。早川書房より2002年出版された作品がハーパーBOOKSで蘇ったものだという。
近作では『ブラック&ホワイト』で印象的な女性警察官を演じたレナ・アダムスが、その印象そのままに男顔負けの独立心の強いキャラクターを見せつける。そしてウィル・シリーズのヒロインともいえるサラ・リントンは<グラント群シリーズ>の正規ヒロインであるらしいから、今のところ不遇をかこっている続編たちもリバイバルの機会を得そうな気配濃厚である。
本書はサラとレナ、サラの当時の元夫である警察署長ジェフリー・トリヴァーの三人の主人公によるトライアングル・バイオレンス・ミステリーである。バイオレンスなのはこの作家のもはや持ち味と言っていい。食事時にはこの本を遠ざけておいたほうが良いほど、少々過激な犯罪現場は。犯罪者の側の心の病巣の深度、空虚な精神性にずる賢さを装備した辺り、寒々とした心象風景も怖ろしい。身も心もなぜか痛い小説なのである。
人間関係のもつれは第一作から既に始まっている。アメリカンな女性たちの激しい性格と、許容力のなさと独立精神は、男性が読むには少し恐ろし過ぎるかもしれない。それはパトリシア・コーンウェルの時代よりもさらに研ぎ澄まされているかに見える。
怖々と呼んでいる感覚が否めない。最初にそう書いた理由がいくらかおわかり頂けたであろうか? それでも怖いもの見たさで次の作品も手に取ってしまうであろう自分が見える。 -
グラント郡シリーズ。ウィル・トレントシリーズにも登場しているサラが主人公。残酷な手口の殺人とそれに対する怒り。その大きさ、強さが一貫してある。女性の怒り、悲しみ、憎しみ、そういうものがたくさんあって重い。サラの過去や被害者の姉レナの感情、どこをとっても圧倒されてしまう。ウィルシリーズで現在のサラを知っているというのはあるけれどそれでも面白いし元夫ジェフリーとの関係も興味深い。熱量がすごくて一気読み。ここからウィルシリーズに繋がっていくわけだし続刊もぜひ刊行していただきたい。
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登場人物の心理描写、先が気になる展開など評判以上に面白かったです、すっかりカリン・スローターにハマりました。このはじまりの作品から読み始めてよかったです。
本作の登場人物が別シリーズに登場とするということなのでそちらも読むのが楽しみです。 -
女性陣が壮絶な背景もあり、なかなかに感情の起伏が激烈で、ジェフリーがエエ人に見えてくる。ジェフリー頑張れって読んでました。
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ジョージア州の小さな町の地元の食堂。この町である日残忍に切り刻まれた若い大学教授が発見され一気に町中がパニックになります。町の小児科医であり検死官でもあるサラ・リントンが検死を行い、サラの元夫である警察署長のジェフリー・トリバーが捜査を指揮し始めたところ、数日後に地元の女性が磔担っている姿が見つかります。
本書は町の検死官で小児科医のサラ、サラの当時の元夫である警察署長ジェフリー・トリヴァー、そして警察の副官で被害者の妹のレナの三人の主人公によるトライアングル・バイオレンス・ミステリー、3つの大きな視点で物語は移り変わり、やがて連続して被害者が発見されることで一層サスペンスは深まっていきます。いわゆるフーダニットの把握は一筋縄ではいきませんが、全体的な楽しみを損なうほどではないと思います。
全体を通して登場人物の間には大きなドラマを感じました。私は小説の中の過剰なロマンスが苦手で、過度に物語が感情的になると面食らってしまうんですね。その意味で本書は、警察の階級間の偏見や不服従が重なり合うなど、様々な角度から描かれており、この点では一線を画す内容でした。個人的には、事件に関わる人たちが皆こぞって才能を持ちながらも、私生活に大きな問題を抱えており、これら個人的な問題が捜査の過程で再浮上してくる・・・というところが気に入っています。 -
1作めから残虐なのは、その名故か?