ざわめく傷痕 (ハーパーBOOKS)

  • ハーパーコリンズ・ ジャパン
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  • Amazon.co.jp ・本 (584ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784596541475

感想・レビュー・書評

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  • カリン・スローターのデビュー2作目。
    2001年のデビュー作はほどなく翻訳されたのですが、このシリーズはその後なぜかすっ飛ばされ、ウィル・トレントのシリーズはじめ他の作品が何作も翻訳されていました。
    人気が確実になったので、こちらも発行することになったのなら嬉しい。

    医師サラ・リントンが主人公のグラント郡シリーズで、6作あるのです。
    サラは診療所で働く小児科医で、郡の検死官も兼ねている。
    優秀な女性で長身の赤毛、かなりの美人ですが、まじめさが勝ってそれほど目立たない、というか自分では目立たないと思っている。
    警察署長のジェフリー・トリヴァーと結婚したが1作目では離婚していて、2作目では復縁しかかってます。
    ジェフリーは、勉強もスポーツも出来て、顔も体格もいい学園のヒーロータイプ。2作目では意外と育ちには恵まれていなかったことが明かされます。
    などと書いていると、けっこう平和にも思えそうだけど‥

    カリン・スローターの名前には前から気づいていたけど、読み始めたのは最近のこと。
    残酷な事件の凄惨な描写に定評があるから(笑)
    ミステリに慣れていない人にはお勧めできません…が、ただの残酷趣味とかセンセーショナリズムで描かれているわけじゃないですよ。
    実際にこれほどの事件も起きていないとは言えない現実があり、そういう被害者(主に女性)の苦しみがどれほどのものかということや、極限で発揮される勇気や真実に迫りたい意図もある印象です。

    サラとジェフリーがデートしていた日、ジェニーという少女が少年を銃で狙う事件が起きます。
    説得に応じないため、やむなくジェフリーが銃を向けることに。
    ジェニーはサラの患者の一人だったので、サラは衝撃を受けます。しかも、ジェニーの遺体には思いもよらない傷痕が‥!
    当初想像されたのとは違う方向へ、事件は複雑化していきます。

    ジェフリーの部下のレナ・アダムズも重要な登場人物。
    1作目の事件で過酷な体験をしたレナはまだ不安定。この時点では、傍迷惑な乱れっぷりでも、まったく責められない。よく頑張りぬいたという状況なのだが‥
    シリーズ通して癖が強いトラブルメーカーなため、今一つ同情できないものがあったりして。
    しかし、水と油なサラとレナの葛藤は、リアリティがあります。
    サラは優しい女性で、すでに2回事件で被害に遭っているけど、まだまだ若く感情的、回復力はありますね。
    ずっと後まで描かれている他の作品を読んでいるので、ミッシング・リンクが繋がることに期待!しています。

  • グラント郡シリーズ第二作
    事件の凄惨さはいつもながら…読むのに力がいるしんどさ…

    現在続いてる別のウィル・トレントシリーズでは、三作目からヒロインとして登場するサラ・リントンが主人公です。

    あとがきでも書かれてましたが、現在の話ではサラは落ち着いた印象ですが、今作では感情で動く若々しいサラにちょっと戸惑いますね。(今の落ちつき具合は、うっすらと察してますが、この後色々とあったんでしょう…)

    いや、ほんと前作で被害にあったレナの苦悩具合とか…
    レナはウィルのシリーズ(現在)の方でも色々とあって…もうどう捉えたら良いのか…戸惑うことばかり

    ロマンスとサスペンスで、扱う事件が重いので「コレ面白いよ!」って勧める類の本では無いのです。

    複雑な関係、それぞれが抱えてる問題があってその上でぶつかり合う。
    疲れる。答えがない。でも引き込まれる。現実は救いがなくて、予定調和で解決しないし当然なんだけど…どうも自分の体調と合わなかったのか中々「何読んでるんだっけ」と内容があまりにも辛すぎて、上滑りした感じで読んでしまう時があった。

    どうも自分の場合、ウィル・トレントシリーズで展開される現在の視点「サラの過去にはどんなことがあったのか?」に重点を置いてしまいがちで"ジェフリーのこと"を気にして読んでしまうのが良くないのかも…

    ジェフリーは陽気で軽い警察犬、ウィルは傷だらけだが賢く生きる捨てられた仔犬のような印象を受けた。

    なんか、なんとなく犬。

  • カリン・スローター『ざわめく傷痕』ハーパーBOOKS。

    グラント郡シリーズ第2弾。

    とても美人女性作家が書いたとは思えないくらい吐き気を催すような残虐な描写の多い作品。ミステリーというジャンルを遥かに超越した最悪のストーリーが展開し、面白いとか、面白くないとかの次元を超えた後味の悪さ。他の人には読むことをお薦め出来ない。

    週末のスケート場で13歳の少女が少年に銃を突き付け、現場に居合わせた警官に射殺される。現場近くのトイレからは未熟児の死体が発見され、少女の産んだ赤ん坊と推測されるが……若者たちの性の暴走は一体何が原因なのか。

    本体価格1,360円
    ★★★

  •  本書はグラント郡シリーズ『開かれた瞳孔』に続く第二作である。現在の人気シリーズであり今も続くウィル・トレントのシリーズに、三作目から登場しレギュラーとなっている医師サラ・リントンの過去の、それも二十年前ほども前の過去シリーズなのである。このグラント郡シリーズは、第一作『開かれた瞳孔』が先年改めて再登場したということで、過去シリーズも改めて翻訳されるようになった珍しい運命を持つシリーズなのである。

     年間、二、三作品の勢いで、過去作と新しい作品が邦訳出版されている海外作家は、あまり思い当たらない。翻訳作品は、売れる見込みがなければ打ち切られることの多い現在、一作限りで過去に打ち切られたこのグラント郡シリーズが改めて見直され、商品価値を上げ、こうして市場に再登場、二作目以降も新訳されて新たにお目見えするとは、甚だ頼もしい限り。

     他社が打ち切ったシリーズの翻訳権を、新たに入手しては邦訳し、文庫化してくれるハーパー・コリンズ・ジャパンという世界レベルの出版社の日本進出は幸運であった。価格も既存の出版社に比べ非常にリーズナブルである。心強い限り。

     さてニ十年近く前の本書、サラ・リントンとその妹、そして前夫であるジェフリー・トリヴァーのアメリカ南部トレント郡という、アメリカの片田舎を思わせるローカルな場所で展開される、見た目には地味めの事件、ある少年に銃口を向けて引き金を絞ろうとしている少女を、ジェフリーがやむを得ず撃つ、というシーンで幕を開ける。

     なのでミステリー要素は、フーダニットではなく、むしろホワイダニットに近いミステリー。しかし少女の亡骸には悲劇的な忌むべき傷痕が残されていた。ショッキングな導入部である。

     本書はミステリーであると同時に、サラ・リントンや、被害者(or加害者)少年少女など、それぞれの家庭環境を描くシリアスなホームドラマであるかにも見える。いくつもの家族の物語であるかに。

     同時に、前作でサイコパスに囚われの身となり、過酷な運命を強いられた女刑事レナ・アダムスは、本書では再生の物語を歩まねばならない。己れを取り戻すために傷だらけの道を歩みつつ、育ての親であもる叔父ハンクとの疑似父娘愛ともいうべき愛情を、苦しすぎる葛藤と共に徐々に取り戻してゆかねばならないゆれに、レナは本書ではもう一人の主人公なのだ。

     壊れてしまうものと、繋がり続けるもの。それらのありさまを、家族というかたちで様々になぞらえて、苦しみ・信頼・裏切りといった過酷な渦に投げ込んでみると、こんなにも冷たく残酷、あるいは熱く苦しい、様々な人間模様ができるのだ、と提示されてみたかのような、見た目は地味でありながら相当な力作なのである。

     冒頭で撃たれ死んだ少女が辿った悲惨な家族環境や、レナ・アダムスを襲った過酷な事件からの苦しすぎる再生、別れた夫婦であるサラ&ジェフリーの今も続くデリケートな距離感と迷い。見えない未来。おぼろげ過ぎる希望。そして壊れた家族がもたらす、あまりにも残酷な、見えざる犯罪への彼らの怒り。

     家族という不透明な防壁を破壊し、白日の下に曝け出す。そんな地道で辛抱強い捜査の中での人と人のぶつかり合いを、いつも通り描き切るスローター節。ミステリーというだけでは収まらない、人間たち葛藤のぶつけ合いが本領発揮される本書。人間はここまで獣になれるのか、という残酷なまでの真相に唖然とさせられる作品。それでいてなぜかページをめくる手が止まらない。作者の怒りの叫びのような血まみれの作品。さすがの迫力、一流の語り口である。

  • 猟奇的な残忍さ、子どもがからむ犯罪の凄惨さ、恐ろしさ、気味悪さはシリーズ最悪かもって気もして、読んでいて具合悪くなりそうなくらいだった。しかもすっきりした解決にもならずに後味も悪かったんだけど、読み終わったとたん次の巻を読みたいと思うのは、海外のシリーズドラマを見るような感じだからかも。ひとつの事件は終わっても、レギュラー登場人物がこのあとどうなるのかどうするのか知りたい。こんなひどい事件を経て、そのあとどうやって日々を過ごすのかを知りたいというような。まあ小説なので、次の巻ではまた普通に別の事件に取り組むんだとわかってはいるけれど。
    シリーズの主人公はサラだけど、レナの存在感がすごかった。レナ、ほんとにこのあと、次の巻ではどうなっているんだろう…。
    このシリーズ、事件がどう解決されるかとか謎解きを読むんじゃなくて、その事件に対処する人々がなにをどう感じるかってことを読むほうが大きくて、そこがわたしは好きなんだと思う。

  • スケート場で、13歳の少女が16歳の少年マークに銃を向ける事件。近くにいたジェフリー署長は少女ジェニーを射殺する。近くのトイレに遺棄された赤ん坊は、彼女が出産したのか。ジェフリーの元妻サラ・リントンが検死すると、ジェニーはひどく虐待され、出産できない体にされているのが分かった。虐待したのは誰か、ジェニーはなぜマークを殺そうとしたのか。

    傑作だらけのカリン・スローターにしては、中盤がかなり冗長。真相が、少しずつしかわからない。

    ただ、おぞましい事実が分かると、そこは流石。

    ズバリテーマは、性暴力。犯人には怒りしか感じない。

  • 読みやすい文章だが、内容が猟奇的で「そこはさらっと」でなくかさぶたを剥くようにねちねちと陰湿に表現してきて、物語の内容というよりも、そのやり口が精神的に疲れた作品だった。
    十代の体の成長が著しいアングロサクソン系の人種は、心の成長が伴わないうちに体つきが大人になってしまい、その時期(幼くかわいらしい)が短い分、神聖化されていて、アジア人なんかよりは闇が泥濘化しているように思う。

  • スケートリンク前でマークに銃をむける少女ジェニー(サラの患者)のシーンからはじまる。あー、レナを好きになれない。この巻ではサラもジェフリーもいまいちピンとこなかった。やっぱりウィルトレントを呼んできて欲しい。それにしてもカリンスローターの翻訳は誤植が多くて落ち着かない。そういえばジェニーはなんで射撃がうまかったんだろう。見逃したかな。終わり方もモヤモヤ…。でも読めてよかったです。

  • グラント郡シリーズ第二作。一作目に劣らず衝撃的な事件で幕が開かれ、サラ、ジェフリー、レナ3人の主役の精神が傷んでいくのも無理からぬ展開の中さらなる凄惨な真相が次第に明らかになってくる。

  • 前作の記憶がなくて、トラウマが判らないのは、我ながら困ったもの。人物に寄り添えないのだが、読ませるのは確か。

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