冷血(下)

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著者 : 高村薫
  • 毎日新聞社 (2012年11月29日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784620107905

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冷血(下)の感想・レビュー・書評

  • 下巻は犯人が逮捕されてからその後が語られる。
    警察の取り調べや実況見分の様子、供述調書、起訴状、そして判決文にいたるまで繰り返し繰り返し事件の様子が克明に描かれる様は、上巻のレビューでも書いたとおりまさにノンフィクションの様。
    その間に合田刑事の目線からの語りが挟まれることによって、やっと、ああこれは物語なんだなと我に帰る。

    この本のタイトルは「冷血」であるが、この小説の中で「冷血」と形容されるのは一度きり。それも犯人に対してではない。
    一体誰が冷血なのか、冷血とは何なのか。
    動機もないままに“なんとなく”一家惨殺をする犯人なのか、犯人を前にして職務を放棄した医者なのか、もしくは犯人を絞首台に送りこむ国家なのか・・・。
    読了してもなお自問自答せざるを得ない。

    被害者一家にまつわる記述は実に淡々としたもので、同情心を煽るようなものは一切ない。
    それに引き換え、犯人の一人の井上は人を引き付ける魅力を持った愛すべき人物として描かれている節がある。
    もう一人の犯人戸田についても、最後は壮絶な死様を呈し哀れを誘う。
    自分の気持ちの振り子を戻して公平にならないと思うが、なかなかそこを脱しきれないでいる。
    これは作者にしてやられているのか?

    何とも気持ちの収まりどころのない小説である。
    ただ読んで良かった言うのは間違いない。
    凄惨な事件が続く昨今だからこそ、この小説を読む価値があるのだと思う。

  • 下巻の読みどころは二つ。
    犯人二名の感情と行動。
    そして子供を二人も殺した犯人に対して、合田の心境の変化。

    それを総括するような箇所、「動機や犯意と呼べるものがあったとしても、ばらばらの断片であって、そんなものを一つ二つ拾い出してみたところでほとんど意味は無い。いったい自分たち警察も検察も社会も、この被疑者たちに何を求めているのだろう。欲しいのは、彼らをともかく刑場につるすための理由ではないだろうか」

    結局、ミステリー小説として読んでも、何も分からない状態で本書は終わります。”殺すつもり”はない。でも、”殴る”気持ちはある。これだけ殴れば死ぬかも知れないと思った、でも、何かよく分からない。
    ほぼこの繰り返しの内容、しかしこれが現実なんだろうな。

    この犯罪者に対しての合田刑事がどう向き合おうと決断したか、自分が変わったと思う瞬間、ここに本書のクライマックスがありました。

    自分なりの絶賛言葉でいえば、フィクションがノンフィクションについに追いついた、という感じでしょうか。
    高村文学の最高峰、に間違いないでしょう。

  • 動機はともかく殺人を犯したという事実は変わらない。被告人も犯行を認めている。検察と弁護人と裁判官が死刑に到る審理をただ粛々と進めていく…。
    ドラマはなく、虚しさだけが募ります。そこには誰にも顧みられない取るに足らない『死』があるだけ。
    でもそれにどうしても納得できない人間が。合田雄一郎です。
    同情ではない。
    たとえ殺人犯であっても、その生には何がしかの意味があったと感じたいのだと思います。
    他人の生死、自分の生死にさえも無関心な死刑囚井上。それでも。
    生の名残が熾火のように昏く燃えている…そんなラストでした。

  • いや~。地平が揺らぐ。

    あの不快な上巻は小説ですらなかったという訳か。
    この小説(下巻)を読むための事前資料。
    あれを我慢して読んだから、この小説を堪能できるんだね。

    「とまれ」=「ともあれ」の音変化を書き言葉に?
    「ものであった」…どこの地点からの回顧?
    の多用が気になったけど…。

    あと、井上の手紙も戸田の手紙も、どちらも高村薫の手紙だった…のも、
    勿体なかったけど。

    でもでも、それやこれやを差っ引いても、いやぁ~色んな意味で、色んな角度で、色んな深さで考えさせられる作品でした~。

  • 果たして井上と戸田は冷血だったのか否か。

    上巻ではあえて一家四人殺しの描写を避けた効果が下巻で生きている。
    取調べで徐々に明らかになる犯人ふたりの過去と犯罪の詳細。
    取調べ過程でこのふたりをなんとか理解しようと苦悩する刑事合田雄一郎。
    合田との手紙のやり取りは井上にとって僅かでも救いになったのだろうか。
    いろいろと考えさせられる結末だった。

    …で
    この作品で一番の冷血は友納検事でしょう。
    次点は戸田が搬送された病院の医師。
    井上の親族や高梨家の遺族もかなりのもんだ。
    結局人は自分に関係ない、あるいは関係したくない人間に対しては
    いくらでも冷血になれるということだよねー

    それにしても
    合田刑事モノを読む度に思うこと。
    雄ちゃんってばもうちょっと肩の力抜いて生きようよーっ!!

  • 「こいつはどうせこういうやつだ」、「こいつは何も考えていない」、そういうふうにハナから人を切り捨ててしまえる人物たちを著者は本作にたくさん登場させる。そして、回数を重ねるごとに変幻する供述書、自分の主張に都合よく事実を述べることが当然の論告と弁論という犯罪物にありふれた素材から著者が引き出して見せるのは「嘘ではないが真実とも違う≪おきかえられた真実≫」の姿。誰にでも通じることのできる言葉で説明できないからといって、都合のいい作文で代用したり、説明を放棄してしまってよいのか、という主人公の自問は、複雑な事象や心象は、かんたんに説明がつかないのが当然で、それでも人は言葉以外にそれを表現することはできないのだから、とにかく考えて言葉を尽くすしかないのだ、という著者の一貫した姿勢につながっていく。著者のいう冷血とは、人を人として尊厳しない心性や行為を指すのではないか。そして人を尊厳するということは、その一人の他人のことをきちんと正しく理解することぬきには始まらないのではないだろうか、そういうことを言いたかったのかと思う。

  • 誰かに待たれている感じってわかる?と言う男と、人にも自分にも興味がない男、どこか律儀で本当のクズではない二人がなぜ冷血の所業を?最後まで結論があるわけじゃないけど。迷い立ちすくみながらも二人に向き合い、一瞬の改心を待ち望む合田に、銀竜草の傍線と、「マジで感謝してます」、何かが通じたんだ。穴を穿ったんだ。"人間が生きることの大変さに言葉を失う"、"問答無用で生きよと教えられているような気がします"。本家カポーティは読んでないし、深いとこまでわかってないかもしれない。でも、まちがいなく今年のマイベストだ。

  • 合田さんが登場する作品の中でいちばん陰惨な事件を扱っているのが今作だと思うが、ならずものが行った善行エピソードにときめくような思考回路を一切持ち合わせていない私ですら、人を裁くことの意味や、それこそ生の不条理さや歩む道の不安定さを考えずにはいられなかった。形がなくても、目的や理由が曖昧でも、確実に存在しうるものの大きさ。

    1月にあったトークショーで高村先生が「冷血」は「生きている人間の存在の大きさや重みを前に、合田に立ちすくんでほしいと思って書いた」と仰っていた。「冷血」を読み、読者もまた合田同様立ちすくみ、思考し、答えのない世界に生きているということを実感するのかもしれない。

  • 【訂正後】
    死とは何でしょう

    小説を書くことを考えて生きる手段として続けてきた小説家が
    小説を突き詰めて現実に追いついてしまった、そんな読後感

    著者は、ずっと感じ続けてきた社会への、世間への、人への、
    自分自身への違和感を本作で解したのではないでしょうか

    本作をリアルタイムで体験できることは、
    読書家としてこの上ない幸せと感じる




    読んだ後ずっともやもやもやもやしていたけれど、
    再読しヒョードルさんという方のレビューを読み、
    ストン、と本作が気持ちの中に落ちました
    周りに高村薫作品を読む方がいないので、
    ブクログで共感できるのはとても嬉しいありがたし

    ■初見読後感想~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    いつもどおり、最大限予備知識を排除し上巻を読み始めたが、帯の「一家殺人」の文字が目に入ってしまった。
    自分の頭のなかに「一家殺人=理不尽な事件」があり、直感的に高村氏は理不尽を生み出す人間の業を静かな怒りで描くのではないかと予感した。
    が、冷静に考えれば著者の過去作において、殺人がただの理不尽な事件として書かれたことはなく、本作もその点は同様であった。

    時に被害者となる家族の目線で、時に一家殺人を犯し裁かれる犯人の目線で、そして合田刑事の目線で一連の事件発生の伏線から、犯人の死刑執行までを、著者は彼らの周りの風景と心模様を丹念に描く
    細やかな描写に飲み込まれて、一歩引いてみれば理解できない様なコトまでも納得してしまう錯覚に何度も陥った

    過去作と大きく異なると感じた点は、最初から最後まで、あまりにも静かであるということだった
    著者のこれまでの作品にあまりにも影響を受け、何らかの期待を抱いて読み始めた自分自身の心境のせいか、やはり著者がそのように描いたのかはわからない

    犯人達が犯した一家殺人は許されるものではないが、「冷血」は彼らに向けた言葉では無いと感じた
    井上克美が合田刑事に宛て書いた手紙の文面が頭の隅にこびりついて離れない



    やっぱり全然消化できていない
    少し時間を置いて再読が必要

    追記~死について~
    ・先日読んだ永遠のゼロ
    「直掩機も特攻隊みたいなものですね」
    「全然違います。たしかにこの状況下では援護機も大変です。しかしそれでも私たちは九死に一生ということがあります。たとえ絶望的であろうと、生き残るために戦うことが出来ます。しかし特攻隊員たちは、十死零生なのです。」

    ・本作
    ”いずれ死を迎えるのは自分たちも同じであって、刑死が特別なしであるわけではないという気でもしてきたのか。否、国家によって命を断たれる刑死こそ特別の中の特別であるし、またそうでなければ、死刑制度の意味がなくなるのだ。”
    ”死という結果は同じでも、細胞や内臓の働きが自然に停止する病死と、首吊りという強制終了は、やはり別物だろうからです。”

  • 読後しばらく、悶々しました。
    なんだ、この寂寥感、茫漠とした感じは。

    事件の発生から、捜査、逮捕、起訴、結審、そして刑死で「終結」したはずなのに、何も結びつかない。合田が、言葉にしようとしても出来ないそのままの、印象。
    読んでひと月たって、またちょっと読み返している。
    内容は全然違うのに、前作の「太陽を曳く馬」のように、”空”を見つめている感覚とよく似ているな、と、思う。

    ただ、雄一郎がつぶやく「問答無用で生きよと教えられているような気がします」という言葉が、ほんの少し、自分のなかで「解決」を思う言葉だった。

    今は、この本を読んで、本当に良かったと思える。

  • 何の救いもなく、荒涼な心象風景が呼び起こされるようで暗澹たる気持ちに追いやられてしまう。この「冷血」には、たいした動機も理由もなく一家四人を惨殺し、あっけなく警察に捕まった後も、自分たちの凶行を省みることもなく、はたまた開き直るでもなく、まるでADHA的な非行を重ねる中学生のような犯人が描かれている。

    被害者の一人である女子中学生や犯行直前までの犯人たち二人の内面が描かれているところは秀逸で、複雑で繊細な心の動きにまるで様々な角度からフラッシュを浴びせているようだ。

    しかし、二人が捕まってからは、犯人たちの内面から描かれることはなく、合田刑事から見た二人が登場し、事情聴取が延々と繰り返されていく。そしてやがて合田と犯人たちとの書簡が少しずつ交わされていくのだが、そこに現れる犯人は、文学的な表現ができる思慮深い青年となっている。しかし犯行に対する反省や後悔はなく、人格的な変容が描かれているのではない。

    そこにあるのは塞ぎようのないぽっかりと開いた大きな空洞だ。そこに吹きすさぶ風が血を凍らせていく。9.11で妻を亡くした合田にもその風は吹いている。ただその空洞を見ないようにして生きているだけだ。その為に合田は毎朝、畑に出てキャベツを育てる。金属バットで叩き割るのではなく。でも、育てるのも叩き割るのも、紙一重なんだ、たぶん。

  • 強盗殺人事件の被疑者と向き合い、事件の背景とその素顔を探ろうとする刑事の姿を追う長編小説。

    事件に至るまでを、被害者と犯人の両サイドから描いた上巻は、なかなか動かないストーリーにもどかしさを感じていた。
    が、犯人はあっさり逮捕され、包み隠さず自供するに至り、単純な謎解きのミステリーではないことに気づく。以降、解決はしているのに真の答えの出ない迷宮に苦悩する刑事の視点に同化して、重く根気のいる読書となった。

    犯人の繰り返す、何となく、何も考えず、勢いでという言葉に裏はなく、これらがすべてを物語っている。
    重い躁鬱や問題の多い家庭環境を背景に、反省は一切なく、かと言って虚勢を張るわけでも自暴自棄になるわけでもない犯人。人間に対して無関心で、自身の生への執着すらないという意味では、「冷血」と言えるだろう。
    だが、タイトルの指す「冷血」は、犯人のみに向けられたものではない。周囲の血縁者や事件後の関係者など、あらゆるところに存在する。目のつけどころはさすが高村薫、文章も男性的で冷血ならぬ冷静沈着だ。
    その分、被害者の女の子視点のはしゃいだ文章には、やや違和感があった。

    好きな作家なのに、なぜか今まで読み落としていたこの作品、近頃は主流となりつつある派手でわかりやすいミステリーとは対極にあるため、万人受けはしないだろう。
    でも、読んでよかった。疲れるので再読はしないだろうけれど。

  • 高村薫「冷血」上下 http://books.mainichi.co.jp/2012/11/post-2b6c.html … 読んだ。読んだけど。。あれー?高村薫の読後にあった読書への幸福感がない。どうした。晴子情歌あたりからだけど、ネタ切れつーか、齢を取ったということかな。こういう俗っぽい老化はしない人だと思っていたんだけどな(つづく

    視点が内向きで瑣事を捏ねくり回す。中二っぽい。わたしは高村薫をミステリー作家ではなく、社会と折り合うのが難しい人たちや、人間の内面を書く純文作家だと思ってきたけど、だからと言ってこういう方向ではないんだよ。なんかもう典型的な頭のいいオールドミスの作風になっちゃったな。涙(つづく

    ノンキャリの合田がインテリでバイオリンまで弾けちゃう非現実キャラなのはともかく、犯人の文化度が異様に高くて違和感ある。教育程度と知能の非相関を言いたかったの?パリテキサスやトークトゥハーなんて、映画好きでもそう観てないし、利根川図志に至っては。作家が頭良すぎた悪例かな。。(おわり

  • 久しぶりの二段組みに一瞬とまどったが、読み出したが最後、上巻は一気に読み進む。恐れていた事件の凄惨さは、被害者視点がほぼないためか、あまり感じられない。読者への配慮かとも思ったが、そうではなく、この小説は、冷血な事件を起こした犯人、さらに事件が起きた理由を掴もうともがく合田刑事の物語だからなのだろう。

    下巻の大部分を占める取り調べの描写は、聴取している刑事達と同じく、こちらまでがジリジリしくるほどだ。下巻のページを何枚も繰った末に見えてくるのはいったい何なのか。自分には、まだ答えが分からない。そもそも答えなんて、あるのだろうか。

  • 犯人たちは前科があるものの、それなりに普通の社会生活を送ってきた人間であり、特別凶悪に生まれついたというわけではない。それでいて事件を起こすのは、犯人達の性質と共に、成り行きや偶然、気分といった要素が重なったという部分が大きい。事実なぜ事件を起こしたかを彼らはうまく筋道立てては言語化できない。
    凶悪犯といってもそれはそこいらにいる普通の人間とほとんど変わるものではない。あるいはあなたや私も紙一重のところでそちら側に立っていないだけなのかもしれない。
    また世間から見れば一刻も早く死刑となるべき凶悪犯であっても、彼らにも生い立ちがあり歴史がある。合田はなんとかしてそのカケラを汲み取ろうとする。
    思い起こしてみれば高村さんは昔から犯罪を起こすものやテロリスト、スパイたちを、ある種の愛情を持って細やかに描写してきた。彼らはどこか冷ややかであると同時にひどく美しかったりする。高村小説に息づく彼らは、人を早急に断罪しようとしまたそのことに後ろめたさを感じない、今の社会に対する作者の警鐘なのかもしれない。

  • 暗闇の落とし穴を周りから覗き込む感覚。
    それでも生きたいという実感。罪人への冷静な視線。
    私の中でこの上下巻はタカムラベストかもしれない。(地を這う虫と迷う)
    カポーティの冷血が本当に好きで、この本を読むのを楽しみにしていた甲斐がありました。

  • 凄く面白かった。文学にとってエンタテインメントなんて、ただの一要素にしか過ぎない。それより大切なことは人生を社会をどれだけ描写するかということだ。人生が楽しいだけなどということはあり得ない。そういう事を感じさせてくれるのが、文学であり芸術なのではないか。

  • なんともやりきれない話です。冷血といえども、その血は重く、濃い。

  • うーん、僕は好きじゃない。というか、面白くなかった。高村薫は初めて読んだけど、もう二度と読まないと思う。

  • うーん・・・重い。いろいろ考えさせられる・・・。すごく丁寧で、緻密で、濃厚。丹念に丹念に書き込まれていく、それぞれの犯人の人間性。気力は、めちゃめちゃ減退。体力すらそがれる感じ。後半の、井上と合田刑事の手紙のやりとりが興味深い。

  • 下巻は被害者、犯人、それに関わる合田刑事の苦悩から人の生死について考えさせられた。(合田刑事が担当している医療訴訟の件も合わせて。)
    寝食を忘れて読めるくらい面白かった。でも読後になんだかすっきりしたようなもやもやしたような複雑な気持ちが残った。

  • 合田刑事シリーズ最新刊の後半。

    カポーティの「冷血」は読んだことがないので比較はできないが、こちらはあくまでフィクションでしょう。
    犯人逮捕後の下巻は、殺意や犯意が明確に意識されない被疑者に対する調査の混迷が詳細に描写されます。
    また、控訴後の被告と合田刑事の主に書簡によるやり取りが、被告の心理がわからない合田刑事の困惑が描写されます。
    それにしても、悲惨な犯罪そのものは置き去りにされた感があり、裁判関係者、被害者関係者、被告関係者の方が「冷血」という感じです。
    犯罪に対する合田刑事のスタンスが、係長になり、現場に能動的に参加しなくなった為に、作者に近くなってきているように思います。
    つまり、合田シリーズはミステリーというよりクライム小説的であったのですが、前作から合田自身に犯罪者の心境を探求させるようになっているように思います。
    合田自身の個人環境については、相変わらず本人の心境を多くは語らず、断片的なエピソードから読み取るしかないのですが、次作があるとしたら、もっと本人の個人環境に何らかの区切りがつくような形にしてもらいたいものです。
    一気読みはしましたが面白いという感想ではなく、なんかもやっとした感情が残ってしまいました。

  • 合田雄一郎シリーズ。
    両親共に歯科医師の4人家族が惨殺され、その犯人の犯行に至る動機の検証に翻弄する警察、検察の模様が描かれる。
    上巻の半分は被害者家族の日常の様子、犯行に及んだ2人の犯人の犯行までの足取りなどが描かれる。
    なかなか登場しない合田に、本を間違えたと思ったくらい。
    上巻の後半は事件が発覚して、犯人が逮捕されるまで。
    下巻になると、ほとんどが取り調べの様子を録音したデータを合田が聞く様子が描かれる。上巻の時から感じていたが、今作では自分のしていることの目的が分からないまま、事件を起こした井上、戸田2人の犯人の心理的分析がメインで、前作の「太陽を曳く馬」の時と同じような哲学的な印象が強い。
    今は特捜に所属する合田が、事件の第一線で活躍することもなく、少し物足りない…

  • やっと読み終わった…
    警察の描写がリアル。

  • 暴発しない合田刑事は私にとっては物足らないのです。二人の殺人者の内の井上克美のように、時にトチ狂って検察官と真っ向対峙し己の捜査方法を貫いてほしかった。でも、そのようなことは些末なことであって、この小説では結局人間という生き物は玉ねぎの皮を一枚一枚剥いでいくようにしても、どこに本質が潜んでいるのか解らない、捉えどころのない存在であるということが見えてくる。巷間、小説より奇なる事件が頻繁に起こっているが、捜査する刑事たちは合田刑事のように日々懊悩しているのだろうか。

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