待ち遠しい

著者 :
  • 毎日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784620108414

感想・レビュー・書評

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  • 『普通はこうだよね~』とか、
    『○○じゃないなんて、変だよ』とか
    私たちの周りには、さりげなく自分の価値観を押し付けようとする言葉が大量に飛び交っている。
    価値観や常識なんて人それぞれだし
    あれこれ言ってくる人は、言うだけで責任なんてとってくれないのに。

    主人公の春子さん(39歳独身一人暮らし)は、
    相手にそんな言葉を投げつけられても
    ふんわりと受け止めてしまう。
    私なら例えその場ではニコニコしてても
    心の中では『お前の顔なんて二度と見たくね~!』とか
    思ってしまうような場面でも。

    春子さんは相手の考え方を否定しない。
    『そういう風に思うには理由があるのだろう』と考える。
    いいな、私もそんな風に相手のことを決めつけないで
    考えられるようになりたいな。
    まだまだ修行が必要だ。

  •  大阪で独り暮らしをしている春子は、新しい大家として東京からやってきたゆかりさんと、近くに住むゆかりの甥の妻である沙希と知り合い、親交を深めていく。
     ひとりでいる時間はスマホに没頭するでもなく、「消しゴムはんこ」を作ることが趣味である春子は、何かと世話を焼いてくるゆかりさんに困惑しながらも、今の落ち着いた生活にささやかな満足を感じている。

    「春子は、今の生活が、じゅうぶんいい、と思った。仕事があって、明日や来月のことがだいたい予測できて、それなりに好きなことも楽しめて。やっと、自分自身の生活というものを自分の力で営んでいる実感が持ててきたのだ。」(P.54)

     世話焼き好きのゆかりや、ズバズバと発言をする沙希の言動にときおり振り回されながらも、春子は自分のスタイルを低い姿勢で貫き通しているが、たまに他人と対比して自信のなさが顔を出すのは、作者の登場人物に共通した特徴。

    「今でも、なんとか正社員にはなったものの、補助的な仕事しか任されない自分はなにか足りないのではないかという気持ちが強く、人に迷惑をかけないように目立たないようにしていなければいけない、そんな思いがずっとある。」(P.244)

     人づきあいの苦手な春子が、ゆかりさんに巻き込まれる形でご近所づきあいをおずおずと始める様子を、作者は理想像として書いているようだが、等身大の30代の働く独身女性からすると実際にはどうなのだろうか。

     登場人物たちの会話が中心で、精密な光景描写が少なかったのは物足りなく感じたが、テンポよく読めたし、作者の味が出ていると感じる作品だった。
     ストーリーに多少の波はあったが大きな事件が起こるでもない。タイトルの『待ち遠しい』も大それた目標を目指すではなく、カーテンを買い替える程度のささやかな変化を望む程度であり、作者は「それでいいよ」と語りかけているようだ。

  • 世代も価値観も趣味も違う三人が、目と鼻の先に住む偶然によって、ご近所交流が始まっていく。
    淡々と描かれる日常。
    友情とは少し違う、
    ゆるやかに繋がるこういう関係性って実は貴重で時に救われたりするんだよね。

  • 女性同士の心地良さと歯がゆさ
    どうにも噛み合わない人を理解しなくてもいいし、ガツンと伝えなくてはと思う時と。

  • 主人公は、住み心地の良い離れの一軒家で一人暮らしを続ける39歳の北川春子。

    自由気ままな生活をそれなりに楽しんでいた春子だが、母屋に越して来た夫を亡くしたばかりの63歳のゆかり、裏手の家に暮らす25歳の沙希と出会った事で奇妙な近所付き合いが始まり生活が変化して行く。

    寂しさを紛らわすかの様にお節介を焼くゆかりに閉口し、歯に衣着せぬ発言で相手を傷付ける事に鈍感な沙希にイラッとする。

    年齢、性格、抱える悩みが異なる三人の日常を傍らで見ているような感覚で読了した。

    人間関係は本当に難しい。

    それでも人は人で救われて行く。

  • 最初は群ようこさんっぽいほのぼの系の話かなと思ったけど、ジェンダー問題よりだった。
    何が「待ち遠しい」のかな?

  • 柴崎友香さんは「家」にまつわる話が多いのかな?
    この作品はあんまり。沙季って女にムカつきすぎて…。

  • 居心地良く暮らす女性のご近所ネタあれこれ。こうあるべき論を無邪気に、いや、多分悪意を持ってぶつけてくる隣人に、落ち着いて対応する主人公。偉いなと感心する。見習いたいと勉強になりました。
    悩みながら生きているの、考えを押し付けないで、と叫んでいるような話。私には届きました。

  • のんびりひとり暮らしをしていた主人公が、ひょんなことからご近所付き合いが始まって…というお話。
    マイペースなひとり暮らしの日々を描いているのは嫌いではないのだけど、300ページ強を読み進めるのにはちょっと単調だったかも。

  • 再読
    柴崎友香さん好き
    年とったら友だちと一軒家で暮らしたい。って私も思うし、女なら結婚、子育てって環境で私も育ってきたし、そういうのに反発していたし…登場人物全員が自分に思えた。私のこと?っていう作品

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著者プロフィール

柴崎 友香(しばさき・ともか):1973年大阪生まれ。2000年に第一作『きょうのできごと』を上梓(2004年に映画化)。2007年に『その街の今は』で藝術選奨文部科学大臣新人賞、織田作之助賞大賞、咲くやこの花賞、2010年に『寝ても覚めても』で野間文芸新人賞(2018年に映画化)、2014年『春の庭』で芥川賞を受賞。他の小説作品に『続きと始まり』『待ち遠しい』『千の扉』『パノララ』『わたしがいなかった街で』『ビリジアン』『虹色と幸運』、エッセイに『大阪』(岸政彦との共著)『よう知らんけど日記』など著書多数。

「2024年 『百年と一日』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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