- Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
- / ISBN・EAN: 9784620108414
感想・レビュー・書評
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戸建ての離れを借りてる主人公の春子さん。
新しい大家さんのゆかりさんは、前の大家さんの娘さんで、以前にはなかった母屋と離れの交流が始まります。
そこに同じ敷地に住むゆかりさんの甥夫婦、特に嫁の沙希ちゃんと世代の異なる3人の女性のそれぞれの考え方や生き方なんかが書かれてます。
大きな事件があるわけでもないけれど、毎日働いて好きなことが出来れば満足な春子さんと、人が好きで社交化のゆかりさん、若いだけあって少々傍若無人ぶりを発揮したりする沙希ちゃんと。
読んでて、それぞれに共感したりしなかったり。
けど、読後感は良かったです。 -
前半は淡々と、ご近所付き合いの話が続いていくので、中だるみしてしまった。主人公と同じ40歳近くなってから読み返すと、感じることが違ってくるかもしれない。
33歳の自分には、少々退屈だった。 -
同時期に読む本としては、こちらも辛い。でも、まぁ、仕方がない。
2019/11/5読了 -
誰かと関わると、その先の人とも関わることがあって、それで生活は少し変わっていく。居心地の良い距離で、それぞれの生活を大切にしていきたい
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久々に柴崎友香作品読んだ~って思った作品だった。
主人公北川春子39歳独身独り暮らし。敷地のなかに建った離れの一軒家を借りて住んでいる。恋愛にも結婚にもあまり興味がなくて、美術大学を出たけれど現在の仕事は事務職。趣味で刺繍と消しゴムはんこを作っている。
春子が見た世界。隣の大家さんが亡くなって娘のゆかりさん63歳が引っ越してきて、一人でいるのがさみしいゆかりさんが社交的でそれに巻き込まれていく。年の離れた人とは友だちになれないのかなぁと春子は言うけどそれは絶対春子たちの考えだけでワタシは大好きな友だちは14個年上やねんけど、って春子に言いたくなった。裏に住んでいるゆかりの甥っ子の妻の沙希25歳が強烈すぎて断然ムカついた(笑)春子が沙希に興味を持つのは分かる気もするけれど、なんでも率直に話すのが決して正しいわけじゃない、大人は黙っておくことも必要やし、嘘ついてたのは沙希だし、何だかなぁこいつそばにいてたらムカついて絶対かかわらないようにするのにな~って思った。家族の団欒みたいな飲み会、お互いの家族を連れてくる飲み会とかそういうの絶対絶対パスやし、春子は偉いな参加してとか最後イライラしながら、でも春子にはあまり帰りたくなくても実家あるし独り暮らしして余裕がある給料やねんなーとかなんか、そんなことを思ってしまったけど、あと春子の会社の岩井さんにも会ってみたいと思った。この春子の上司の勘違い感も普通にあるある過ぎてムカつくけど、息するみたいに理解できた。
まだ色々あるけど今回の柴崎友香作品『待ち遠しい』、やっぱり好きやなぁとしみじみ読み終わったのです。 -
『まだ夜にはなりきっていなくて、空は薄紫色が残っていた。高速道路やビルがひしめいて見通しがいいわけではないが、地上に出てすぐ川の上を走る』
柴崎友香の描く主人公はいつも、積極的に決断をすることがない。もちろん何も決めなかったとしたら日常生活は儘ならない。そういう意味ではなく、人生の中で何か転機になるような時や分岐点に差し掛かった時に、この作家の主人公は簡単に選択肢を選ばないということ。それがきっとこの作家の信条のようなものなのだと、デビュー以来読み継いで来た中で改めて認識する。その信条とは、世の中を日常的に観察し得る以上に脚色しない、ということかと想像する。それは「きようのできごと」からずっと変わることのない柴崎友香の芯のようなものなのだろうと思う。
「待ち遠しい」という第三者からの「期待」と自分自身の中のもやもやとした不安との折り合いの悪さは、何も今の世の中に特有の不均衡ではない筈。だが、それにしても近頃は結果を求めるまでの時間がどんどん短くなり、一人ひとりに求められるものの明確化、峻別化圧力が強いように感じる。多様化が叫ばれている反面、世の中の基準とでも言うようなものは画一化され、ポリティカルコレクトネスばかりが求められる。生き方の多様性、などと声高に叫ばれていなかった30年前の方がむしろ様々な人が自由に生きていたような気さえしてくる。そういう中で、柴崎友香の描く主人公は、とてもオネスト(正直、ではなく)である。そこに共感が生まれる。けれど、この共感と思ったものもよくよく吟味してみると、同じ価値観を共有しているよ、といった類の共感ではなく、同じ時代を同じように苦労しながら生きているね、という式の共感であるような気がする。価値観の一致に裏打ちされた共鳴を求めないまま、何やら捉えどころのない感情を呼び起こすことが出来るのが何より柴崎友香的文体だと思う。
この作品では今まで以上に周囲に翻弄されそうになる、あるいはされてしまっているのにそれにすら中々気づかない、主人公が描かれる。この作家の小説にしては珍しい位に様々な出来事が起こり、主人公以外の人物の色が多彩だ。それを作家の社会へのコミットが増えたからと解釈するのは少し言い過ぎかも知れないが、アイオワでの経験なども含めて、デビュー以来この作家が歩いて来た道程の健全なことが反映しているのは間違いないように思う。その健全さに信頼感が湧く。これからもきっと柴崎友香を読むのだろうな、と改めて思う。
もちろん、彼女の繰り出す大阪弁のニュアンスや、一回り異なる世代の異性の価値観など本当のところ理解し得ないとも思うけれど。と言いつつ、柴崎友香の大阪弁は案外と自然に脳内変換される。そして相変わらずの動体視力の良さにしびれる。 -
こういう家族ではないけど、ゆるく繋がるご近所づきあい、他で読んだような気がするし、映画で見たような気がする。こういう題材、最近流行っているのかな。
独身のままだったり、結婚したけど一人になったり。一人は気楽でいいけれど、いい時ばかりではない。ゆるく人と繋がっていたい、そういう人が多いのかも。シェアハウスとかも。わかる気はするし、そういう小さなコミニュティみたいなもの、うらやましい気持ちもある。春子さんやゆかりさんが近所にいたら楽しく心強いだろう。