福島の原発事故をめぐって―― いくつか学び考えたこと

著者 :
  • みすず書房
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感想 : 47
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  • Amazon.co.jp ・本 (114ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622076445

感想・レビュー・書評

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  • 誠実な思考。その積み重なり。
    ひとことを導き出すために、多くの言葉が選ばれていることがわかる。
    「特別にユニークなことが書かれているわけではありません」と著者がいうとおり、書かれていることは、すでによく知られていること。
    それだけに、著者の論の進め方は、説得力がある。

  • 山本 義隆氏の真骨頂だ。
    いい反原発の論だと思います。
    賛成派の本もぜひ出してください。
    きちんとした議論が大切です。

  • 元・東大闘争全共闘会議代表の山本義隆氏の著書ということもあって、骨太の反原発論を期待して購入したが、激しく後悔する結果となった。

    その内容も視点も、従前から擦り切れたテープのごとく散々繰り返されてきたサヨクの言説の範囲を超えるものでない。その一言に尽きる。

  •  2011年3月11日の福島第一原発の炉心溶融・水素爆発事故を受けて、どうして日本で原子力発電が推進されてきたのか、その歴史的な経緯を振り返りつつ、原子力事故が隠される背景に探りを入れている。ページ数から分かる様に、それほど深い考察をしている訳ではないが、著者の専門分野との関わりを示しつつ、著者の考えを明らかにしている。

     本書は三章構成となっており、第一章では日本の原子力政策に岸信介元首相が果たした役割を強調しつつ、兵器転用の含みを残すための民生利用だったことを明らかにしている。
     第二章では、そもそも、原子核物理学から原子力工学へ至るためには、電気科学理論から電気工学へ至るのに比べ、比較にならないほどの経験蓄積が必要であり、未だ原子力を必要十分にコントロールできる科学技術はないという著者の考えを明らかにしている。
     第三章では、科学技術に対する幻想と、政治的思惑の野合が、現在の状況を作り出し、それを掣肘することすら許さないもたれ合いが原子力村にはあることを糾弾している。

     ではこれらの経緯を受け、これからどうすれば良いのか、そういうことを考えていく必要があるだろう。

  • 20120122

  • 脱原発社会の立場。科学は万能ではない。

  • 3月11日の大震災、その後の福島の原発事故が発生し、いまだ自分の
    中でもやもやした感情が残っている。
    この著者は、今回の原発事故は科学技術幻想の肥大化が招いたものだ
    と指摘する。科学技術とは、技術者が経験主義的に形成してきたもの
    だが、原子力は純粋な科学理論のみに基づく点が異なり、それが人間
    のキャパシティの許容範囲を超えた技術を生み出す結果になってしま
    ったという。
    脱原発社会に向けた説得的な批判を読み、腹落ちのする内容だったと
    思う。

  • 福島出張のお供にチョイスしました。
    「福島の」とついてはいるものの、中身は日本の潜在的抑止力としての「核」としての原子力への取り組みからはじまり、誰も制御できないものになっていった過程、そして日本がアジアに、そして世界にどのような態度を示していくべきなのかということを訴えています。
    福島にいる人々は明らかに被害者であったものの、この国は、世界的に見れば加害者なのです。なんともやり場のない…

  • 金曜日には本屋に寄るのが楽しみだ。
    アマゾンでもずいぶん買うのだが、
    本屋の空間が提供してくれる身体性、偶発性は
    かけがえのないものだ。

    山本義隆『福島の原発事故をめぐって
    ーいくつか学び考えたこと』(2011)を読む。
    山本の名前は『磁力と重力の発見』(全三巻)(2003)の著者として
    僕の記憶にあった。
    山本は事実や引用に基づき
    丁寧に冷静に自分がなぜ原発に反対するか説いてゆく。

    「16世紀文化革命」から始まる「3. 科学技術幻想とその破綻」は
    人間の思考・営みを科学史の視点で俯瞰にとらえた著者の真骨頂。
    歴史的事実の連続から現代の官民学一体の
    反駁を許さぬ「原発ファシズム」の全貌までを明らかにしていく。
    その筆致にはムダがなく、感情におぼれず説得力がある。

    (デジタルノートが以前紹介した
     平井憲夫『原発がどんなものか知ってほしい』(1996)からも
     引用している。平井の原文を参照してほしい)。

    福島原発事故から9ヶ月が過ぎ「終了宣言」のようなものが
    政府から公式に出されたがその実態は疑わしい。
    放射能汚染は数万年の単位で続くことが
    科学的に証明されているからだ。

    著者は現在学校法人駿台予備学校勤務。
    こうした気骨ある在野の知性と対話し続けることで
    僕も原子力問題について倦まず弛まず考え続けることができる。
    雑誌『みすず』の福島原発に関する原稿依頼が
    著者も予測しえなかった単行本の出版となった。
    みすず書房の良質な仕事に感謝する。

    (文中敬称略)

  • 論旨明確。理系の文章。章立てがちょっと読みにくいけど、虚飾がなくてわかりやすかった。

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著者プロフィール

山本義隆(やまもと・よしたか)
1941年、大阪府生まれ。東京大学大学院理学系研究科博士課程中退。科学史家、駿台予備学校物理科講師。元東大闘争全学共闘会議代表。

「2022年 『演習詳解 力学 [第2版]』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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