- Amazon.co.jp ・本 (276ページ)
- / ISBN・EAN: 9784750335162
感想・レビュー・書評
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「東大話法」という言葉をどこかで聞いて、
ちょうど武田砂鉄さんの本を読んでいると、
あっ この本のことか
と 手にした一冊
なかなか興味深く、面白く読ませてもらいました。
特に 第四章「役」と「立場」の日本社会
での考察には フムフムとさせられました。
これは どこかで経験したフムフムだなぁ
と思っていたのですが
そうだ 半藤一利さんの著作を読んでいる時に
味わう アレだな と思い至りました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
コロナ禍になって私が一番影響受けた教授の安冨歩さんの本
原発事故が起きたときの官僚や専門家たちの欺瞞にみちた言動をどうしてそうなったのかを語っています。
驚いたのはこのときの原子力の専門家や官僚たちの対応が今のコロナの専門家や官僚と同じということだ。
当時の自分の感じた専門家の言動の気持ち悪さがこれ読んで納得しました。 -
この本における著者の筆致にはややアジテーションの激しさがあり、いくらか挑発的に過ぎるかもしれない。
ただ、現代日本社会が「立場主義社会」で、社会の主導権がなすべき仕事や果たすべき役割にではなく、立場にあるという認識は正鵠を射ている。
コロナとワクチンをめぐる専門家の言説のあり方も、まさに同じ「東大話法」であることに気づかされた。 -
安富歩は、大阪生まれ、京都大学、住友銀行勤務、京都大学修士、名古屋大学助教授、東大助教授、教授という経歴の持ち主。前回の参院選にはれいわ新選組から立候補、落選。女装姿をしている。なんとなく、印象はキワモノのような気がしていた。原発について、勉強中にたどり着いた本書である。意外と緻密な論考をしているので、少し感心した。確かに、御用学者や官僚っって、自分の過ちを認めないように言い回しを使う。言っていることがわかんない。
例えば、アメリカのニューヨーク国連本部で核不拡散条約の再検討会議で岸田首相が演説した。きれいな言葉を並べながら、被爆国の首相として、そして広島の出身として、核禁止に対して一言も触れなかった。では、なぜ演説したのかという理由よりも、参加したことに意義があるということなんだね。すべからく、傍観者としての存在をアピールした。これは、官僚の作成した東大話法なんだねと思った。核禁止に賛成をしていないことの言い訳に過ぎなかった。それで、広島出身の被爆国の首相かいといいたい。
ふーむ。安富歩のいう東大話法は、「常に自らを傍観者の立場に置き、自分の論理の欠点は巧みにごまかしつつ、論争相手の弱点を徹底的に攻撃することで、明らかに間違った主張や学説をあたかも正しいものであるかのようにして、その主張を通す論争の技法であり、それを支える思考方法」である。東大話法は、以下の通りである。
①自分の信念ではなく、自分の立場に合わせた思考を採用する。
②自分の立場の都合のよいように相手の話を解釈する。
③都合の悪いことは無視し、都合のよいことだけ返事をする。
④都合のよいことがない場合には、関係のない話をしてお茶を濁す。
⑤どんなにいい加減でつじつまの合わないことでも自信満々で話す。
⑥自分の問題を隠すために、同種の問題を持つ人を、力いっぱい批判する。
⑦その場で自分が立派な人だと思われることを言う。
⑧自分を傍観者と見なし、発言者を分類してレッテル貼りし、実体化して属性を勝手に設定し、解説する。
⑨「誤解を恐れずに言えば」と言って、嘘をつく。
⑩スケープゴートを侮蔑することで、読者・聞き手を恫喝し、迎合的な態度を取らせる。
⑪相手の知識が自分より低いと見たら、なりふり構わず、自信満々で難しそうな概念を持ち出す。
⑫自分の議論を「公平」だと無根拠に断言する。
⑬自分の立場に沿って、都合のよい話を集める。
⑭羊頭狗肉。
⑮わけのわからない見せかけの自己批判によって、誠実さを演出する。
⑯わけのわからない理屈を使って相手をケムに巻き、自分の主張を正当化する。
⑰ああでもない、こうでもない、と自分がいろいろ知っていることを並べて、賢いところを見せる。
⑱ああでもない、こうでもない、と引っ張っておいて、自分の言いたいところに突然落とす。
⑲全体のバランスを常に考えて発言せよ。
⑳「もし◯◯◯であるとしたら、お詫びします」と言って、謝罪したフリで切り抜ける。
まぁ。東大は、偉いんだぞ。東大が、我が国を指導しているんだという偉さが、以上のようなルールを作る。原発に対しても、「絶対安全」と東大話法で言い続けた御用学者たちは、原発メルトダウンの惨状をどうみているのだろうか。御用学者なりに誠実に自己批判文を出すべきだ。本書では、精神科医の香山リカとブロガーの池田信夫の発言に対して東大話法がどのように使われているのか、検証している。「役」と「立場」に対する考察が優れている。夏目漱石が「立場」という言葉の概念をうまく表現した。英語では、立場に該当するのが、standpoint,position,situation,stance,viewpointなどがある。また、東大話法は知らず知らず自分の中にも汚染されていると警告する。
それにしても、原発という利権に関して、原子力の委員会から、社団法人、財団法人がたくさんあることに驚いた。天下り先を作って、御用学者や官僚をうまく運用している。
広島、長崎という原爆の実体験は、アメリカによってデータ化された。そして、フクシマは、またしても放射能被曝のデータが収集できる。山下俊一長崎教授は、低被曝放射能のデータが集まることに、喜んでいるような感じでもある。専門バカは、ここに極めている。
武谷三男、高木仁三郎、小出裕章氏たちの意見も説明されていて、早くから原発の危険性を指摘している。こうやって、原発について、勉強していくと、日本の官僚、御用学者はかなり歪んだ世界に身を置いていることがよく理解できた。最近のクイズ王になることが東大出の流行のようだが、知性の無駄遣いとムダな知性で、間違った論説を作り出して、結果として福島のメルトダウンを招いたことを感じた。キワモノ的教授も、いい仕事している。 -
安冨さんの本は何冊か読んだけれど、この本が一番分かりやすくてよかったと思う。
私も東大話法に畏れ入り、自分も時には東大話法を使って誰かを欺いてるかもしれない。
立場主義に毒されて、今、自分はこの立場で何を望まれているのかと常に考えてしまう。
そこからなかなか抜け出せない。
私は今、何を言いたいのか、何をしたいのか、分かるようになりたいし、自分の体や心が望むような発言や行動をしたい。
でも、私は何をしたいのかが空虚で…と思ったら、沖縄戦で戦死した方が家族に宛てて書いた手紙のくだりで、本当は「寂しい、悲しい」と思っている気持ちを否定して、立場でものを考えないとならないとなれば、中身は空虚だというようなことが書いてあり、胸にぐさっと来ました。
言い過ぎ、というような意見もある本ですが、私はそうは思いません。
安冨さんの感じていることが、とてもよい精度で書き表されている本なのだと感じました。 -
福島の原発事故の半年後くらいに出たのかな。理性的な安冨先生の抑え切れない焦りと怒りが滲みます。東大原子力にどれだけ金が流れ込んでいるか(他分野全部より一桁多い)、理解できない無責任な発言群は「東大話法」である、それだけで読む価値がある。「影響はない」じゃねーんだよボケ、という姿勢に密かに共感です。もう、言えなくなってしまった、住み続ける人たちがいるから(2019-07-29)
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概ね素晴らしいと言っていい本。こういう良心回路を持った学者が東大におられるというのは心強い。ただし、人工地震説をろくに検証もせずに否定する態度は感心しない。否定できるだけの科学的根拠を出されたら、我々陰謀論者もそうだったのかと納得するところなのだが。残念なのはそこだけ。あとは本当に素晴らしい。名著。
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言葉の乱れが世の乱れ、という言葉にもあるように、原発推進者は言葉を巧妙に置き換えて原発用語を作り出し、他者だけでなく自分をも騙そうとする。
日本には立場主義しかなく、その立場を守るためになら、どんな変哲なことでもやってしまう、奇妙なブラックな社会なのではないか、という筆者の問いかけは無視できない。
東大話法は無意識に使ってるかも…笑 -
現代日本社会における統治者側の欺瞞・無責任体質が東大話法により行われているプロセスが暴かれている。
東大話法は、東京大学という機構が象徴的に取り入れているが、何も東大関係者だけではなく、欺瞞・無責任な態度な者によっても行われる。
第4章の『「役」と「立場」の日本社会』という章で、なぜ東大話法なるものが現代社会で蔓延してしまったのか歴史的に解明されている。
「立場」という言葉の使い方について、夏目漱石の苦心が分析されている箇所が面白かった(笑い)。