“文学少女”と死にたがりの道化 (ファミ通文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784757728066

感想・レビュー・書評

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  • これは、沢山読んでいる人が書いた文章なんだなぁ……というのが、第一印象でした。

    この話は太宰治の『人間失格』を中心に物語が進んでいきますが、太宰の他の作品や、物語中に出てくる遠子先輩の読んでいる小説にも興味がそそられます。

    添田さんの印象薄いところからの、突然の理不尽で意味不明なブチギレには面食らいましたが……(^_^;)OB3人組もうちょっとキャラ掘り下げて欲しかったかもです……

    でも、遠子先輩にあんなに太宰の魅力語られてしまったら、読みたくなるじゃないですか!
    そして、遠子先輩が食……いや読む小説の表現の美味しそ……いや面白そうなこと!

    文学の“味”が気になる作品ですね(*´∀`)♪それらを読んでいたら「あぁ、解る……」ってなるかもしれません。

    1巻の時点で謎も色々残されているので、続きが気になります!

  • 太宰治『人間失格』をモティーフにそこに挟まっていた告白の手紙と登場人物の思春期の葛藤や心の傷がリンクする。
    物語の登場人物への共感は読書の醍醐味だが、本の中の死と現実の死を結び付けてはいけない。太宰治の作品には生きる希望をつたえるものもある。
    文面にも物語の明朝体と手紙のゴシック体の2つが、現実と心象、現在と過去を表現し、それが一連の流れとなって物語が進む。その表現が『はてしない物語』へのオマージュのようでもあった。
    “読み応え”があった。

  • 文学作品とリンクする、透明感のある苦しい青春の話

  • 小説を食べる妖怪天野遠子と、元美少女作家で今は平凡な生活を求める井上心葉。
    文芸部の二人の元にラブレターを書いて欲しいとやってきた竹田千愛の依頼から、話はどんどん不思議な方向へ。

    千愛ちゃんの想い人である片岡愁二は弓道部の先輩。
    その姿を求めて心葉は弓道部へ行くのだが…。

    太宰治の『人間失格』から引用された手紙。
    心葉にも愁二にも千愛にも当てはまっていて、なんだか、そんなに同じ境遇の人がいるなら、もっと誰かと共感し合えたんじゃないかって、なんだか少し寂しい気がしました。

    心葉には遠子先輩がいて良かったね。

    千愛ちゃんは、これからも作品に出てくるみたいなので、そこに期待をしつつ読了しました。

    みんなと同じじゃなきゃいけない。
    感情や感じ方なんて人それぞれなのに、人が死んだ時は悲しまなきゃいけないし、みんなが笑ってる時は笑わなきゃいけない。
    なんでなんだろ。別に違う感情持ったっていいのに。場を弁えたり、空気を読んでいれば、何を思ってたって、それは個人の自由だと思うんだけどな…。思うんだけど、やっぱり自分と違う人に会ったら、少し引いてしまうんだろうな。

    理保子の「人間失格よ」の言葉はキツかったな。

  • 2000年以降の人気の出たラノベを少しずつ読んでいっています。やはり人気の出た作品には人気が出るだけの理由があるなと思わされますね。もちろん時代的なものというものもあります。その時代だったからこそ人気が出たものもあります。しかし多くは時代を超えて読み継がれる作品なのではないでしょうか。
    ただラノベは人気が出ると無限増殖するので、今から追いかけるのは大変という面もあります。なので今の処1巻のみを読みあさっている状態です。
    また人気のあった作品でもすぐに新刊書店からは消え去っていくものも多いです。さて読もうかなと思っても作品が手に入らないということもあります。ラノベ作品をきちんと扱う古本屋も少ないですしね。もっと大系的にラノベは扱われるべきだと思うのですが、なかなか難しいでしょうね。

    さて、今作ですが読み始めは傍若無人な先輩女子に振り回される男子の物語かと思いました。しかし読み進めていくと何とも重い空気が張りつめていくのです。ラノベ的お約束なキャラクター設定もあるのですが、行動自体に破天荒な所はなく(もないのだけどメインではなく)太宰治に囚われたストーリー展開に巻き込まれていきます。
    でも太宰治を消化し昇華するというよりは、多感な時期に太宰治にかぶれてしまう、その感覚をそのまま作品化したような雰囲気があります。これは太宰を扱い切れなかったという訳ではなく、この作品としてきちんと形に成したと読むべきでしょう。あくまでラノベの型に従いながら太宰を扱うとはどういうことかを表わしているように読めます。

    物語を食べちゃうくらい深く愛する”文学少女”と平凡を望む少年。1巻らしい物語の種もあちらこちらに散りばめ、次巻へと手を伸ばさせる力も感じた作品でした。

  • 2018年06月17日読了。

  • 太宰治が読みたくなる本。
    「人間失格」とどうからめていくのか気になったけれど、たんなる道具として文学が使われたわけじゃなくてよかったと思う。

    文学少女自身はサッパリした性格で、好きな事に真っすぐなところがとてもかわいらしい。
    主人公の心葉くんにはなにか訳アリの事情がありそうだけど、それは明かされず。

    他のライトノベルと比べると文章もさっぱりしていて読みやすいし、それでいてライトノベルらしいキャラクター性もあって、なかなかよかった。

  • 女性作者にしか書けないような作品。

    勿論、男性にも描ける人はいるけど、基本的には女性の方が上手いよね心情描写。

    ポエムっぽいのははじめっから斜め読みなんだけど、それが、ああ、こう効いてくるのね。ってのは面白い。

    あんまり書いてしまうと面白味を損ねてしまうから書けないけど、こうくるのか……。ってストーリーの重ね方が巧みだと感じられる。

    人間失格ってどんな話だったっけ?と考えさせられる一冊である。

  • ふーん、ただほんわかふんわりした話なのかー
    と思いきや、なかなか詰まった話でした。
    シリーズけっこう続いてるみたいだし、楽しみです(´ ` )

  • プロローグでちょっ苦手な部類の本かもと思い、
    本を破いて食べるというびっくり女子高生が出て来た時には、
    うわぁ、これ無理かもと思い、
    うざい話し方をする女子高生が依頼に現れた段階で、
    ひぃぃぃ、やっぱこれ以上無理だわぁと思ったのですが・・・
    二章に入ってから、どんどん物語に引き込まれて行きました。 太宰治は教科書でしか読んでないし、
    内容も全く覚えていなかったので、最初引用されてることすらわかりませんでしたが。

    人間失格ってそんな話だったのかぁ。
    そしてこんな展開になるとは!

    最終的にハマってしまいました。 これ面白いわ。
    シリーズらしいので次も読みたいと思います。

著者プロフィール

合唱王国福島出身。春の夕暮れに生まれる。幼いころから読むこと、書くこと、眠ることが大好きで、作家を目指す。作品に「文学少女」シリーズ、「むすぶと本。」シリーズ、『ドレスな僕がやんごとなき方々の家庭教師様な件』(いずれもファミ通文庫)などがある。

「2021年 『世々と海くんの図書館デート(5) 春めくきつねは、つりばしにゆられて、あのこに会いにゆきます。』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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