- Amazon.co.jp ・本 (324ページ)
- / ISBN・EAN: 9784758412315
作品紹介・あらすじ
仕事に疲れたベテラン放送作家が、ある日、封印されていた父の「秘密」に触れ…。リリカルな筆致が、過去の悔いや無念さえも温かな光で包みこむ、感動の人間ドラマ。
感想・レビュー・書評
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一気読み。阪急ブレーブス、北朝鮮、戦後史、見事に絡み合ってます。傑作だと思います。
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寡黙で普段は8歳の息子と交流も薄かった父親が素っ頓狂な事を言い出す息子の言葉を数分で信じ半生を語り出す。
人を信じたばかりに収容所に入り大変な目にあった二人が半日で相手を信じ洗いざらい自分の生い立ちを語る。
二十代で日本を離れた老婆が日本のラジオ放送を聞いていたと言うだけで現代的な言葉でまるで小説のような長文の手紙を書き綴る。
魔法の様な偶然が一杯。
無理でした。 -
小説の職人さん。そんな言葉を贈りたくなる。
ファンタジー。壮絶な戦後史。阪急ブレーブス。溶け合って、読み終わった後、心明るくじんわりとする。
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この人の書く作品は全部温かさがあってすき。
いつの日かきた道。そんな空耳が聞こえて降りた思い出の駅。たった1度お父さんと来た野球がとても心に残っていて、父親相手だからこそ聞きたいことも聞きづらい雰囲気があって。そんな子供心が懐かしかった。
当時を知らないけれど野球場や周りのイメージが伝わってきた。
北朝鮮のことも当時のことをこの小説で知れてよかった。
ファンタジーは苦手だけどこれはよかった。 -
バルボンの話がいいね。
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舞台が地元なので、時空の枠を超えて懐かしく愛おしいお話でした。
昔の話なんだけど、自分の軸にもこの物語が交わってる様な気になってしまう。
ちなみに西宮球場も、甲子園も 大阪ではない!と言っておきまっす。 -
50歳になる放送作家の工藤正秋は、阪急神戸線に乗車中、車内アナウンスの声が「いつの日か来た道」と聞こえて電車を飛び降ります。それは「西宮北口」を聞き間違えただけ。けれど、小学生の頃、西宮球場でプロ野球を初観戦した日を思い出し、球場跡地に建つショッピングモールへと足を踏み入れます。シネコン入り口横にひっそりとたたずむ阪急西宮ギャラリー。そこで回想にふけるうち、正秋は当時にタイムスリップし……。
ショッピングモールの名前は出てきませんが、もちろん阪急西宮ガーデンズのこと。5階のTOHOシネマズ西宮で映画鑑賞前に何度か立ち寄ったギャラリーも懐かしくて、一気読み。
当然野球の話も出てきますが、普通の野球小説とは趣が異なります。正秋の父親・忠秋は能登の貧しい農村の生まれで、北海道の開拓地を経て西宮へ。そこで出会った在日朝鮮人の女性・安子は、幸せな暮らしが待っていると信じて北朝鮮へ。タイムスリップしたことによって、今は亡き父親と彼をめぐる人びと、そして彼らを勇気づけたプロ野球、阪急ブレーブスの面々と出会います。
実在の選手の名前がたくさん出てくるばかりではなく、物語の一員となって登場します。正秋がまず会いに行くのは、数々の代打記録を持つ高井保弘選手。ロベルト・バルボン選手が出てきたときには、本の中の安子に声をかけたくなりました。「チコさん、今も日本にいるよ。福本がしょっちゅうチコさんの話をしてるよ」と。 -
心を鷲づかみにされるような本とはこの本のことだろう。死ぬまでに読むべき本の一つになるだろう。何度泣いたかわからない。読み進むたびに阪急ブレーブスの本拠地の地名が出て来る。その地名を読んだだけで条件反射のように泣いてしまうのだ。
私は大阪に住んでいるので少しは阪急ブレーブスについて馴染みがある。リーグ優勝した瞬間、梅田の阪急百貨店前に巨大なブレービー君が飾られセールを告げてくれるのだ。野球には興味なかったがブレーブスの優勝は客にとってありがたかった。日本シリーズで優勝したときはマーチングバンドが梅田の駅前を行進したらしい。そのブレーブス球団を軸にさまざまな人生が交差する。その人生は客観的に見れば悲惨なものだが、この本の中では宝石のようにキラキラと輝く人生に見えるのだ。心に「勇気・希望」と言う宝石を持っていれば、どんな人生でも素晴らしい人生になることをこの本は教えてくれた。