造花の蜜 下 (ハルキ文庫 れ 1-9)

著者 :
  • 角川春樹事務所
3.57
  • (23)
  • (61)
  • (51)
  • (16)
  • (2)
本棚登録 : 453
感想 : 54
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (316ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784758435154

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 最高の誘拐ミステリだった。

  • これまでに経験したことのないトリック。
    二重の誘拐とか、さらにもう一つ誘拐が掛かっていたり、
    どうしたらこんなことを考え付くのか。
    蜂の比喩など、表現も秀逸。
    でも、2件目の話はどうなのだ?プロット、トリックとしては必要ありなのかもしれないが、
    この話の山場はすでに終わっている。あそこで終わっていても良いのでは?
    詰め込んだなという感じ。

  • ○ 造花の蜜(上)
    「誘拐」をテーマにしたミステリ。連城三紀彦の晩年の作品である。上巻は「香奈子」の子,「圭太」の誘拐されるところから始まる。「圭太」の誘拐には,「加奈子」の父が経営する工場従業員である「川田」が深くかかわっている。
    「誘拐犯」は,身代金を要求するのではなく,圭太は自分の意思でここに来た」,「俺はあの子の父親だよ。」と言ってくる。香奈子は山路将彦と離婚しており,圭太の父は山路将彦・・・。そして山路将彦は誘拐犯ではない。圭太の父親とは何を意味するのか。犯人は,これまでの要求を変え,圭太の身代金を要求する。身代金の金額は5000万。受け渡し場所は,渋谷のスクランブル交差点の真ん中。スクランブル交差点での身代金の受け渡しは失敗したかに見えたが,用意していた5000万円から1000万円が消失していた。そして,発見・救出された圭太が漏らした一言,「おかあさん,この人がユーカイハン?」なくなったと思った1000万円は,圭太が持っていた。これは果たして誘拐だったのか?その真相は?
    ○ 造花の蜜(下)
     下巻では,上巻の誘拐事件の犯罪の裏側が描かれる。水絵と名乗る女性が,自分が圭太の本当の母であり,香奈子から圭太を取り戻すために誘拐をしたいと,川田を誘う。水絵という女性の正体は「蘭」という女性であり,川田の正体が沼田という長野の有力者の子供であることを知ったことから,圭太誘拐の裏で,河田の誘拐を計画していた。物語は川田の視線から描かれるが,「蘭という希代の犯罪者による,華麗な誘拐事件」という真相が描かれる。
     造花の蜜のあとに,最後で最大の事件という短編が書かれている。圭太の誘拐事件をなぞるような形で,仙台のお菓子会社の息子が誘拐される。圭太の誘拐事件で警察側で指揮をとった橋場警部の偽物が登場するが,橋場警部だと思わせる叙述トリックが仕掛けられている。父親に金庫に閉じ込められたショックで声が出なくなったという少女の目から物語が語られるが,偽の橋場警部が途中で身代金が入ったバックをすり替えるというトリックで誘拐を成立させる。さらっと書いたように思われる短篇だが十分面白い。さすが連城三紀彦。

     人間動物園,造花の蜜と,連城三紀彦は晩年に誘拐ものの傑作を連続して出している。造花の蜜は,前半部分の圭太誘拐をもう少しさらっと書いた方が,後半の川田誘拐事件の衝撃が増したように思える。前半の誘拐部分が詳細に描かれすぎたせいで,後半において前半の誘拐事件の登場人物や設定の伏線の回収がされていないようなイメージを持ってしまい,物語全体が,やや散漫に感じてしまうのだ。連城三紀彦が描く「蘭」という女性の魅力と,川田の存在のやるせなさなどが非常に心に残る作品だけに,全体に掛かる散漫なイメージが惜しい。全体的に見ると★3の評価で。

    ○ 登場人物
    小川香奈子
     誘拐された圭太の母。
    小川圭太
     誘拐される。
    小塚君江
     香奈子が結婚生活をおこうっていた世田谷の家の隣人
    山路将彦
     圭太の父。香奈子とは離婚している。歯科医。
    小川汀子
     香奈子の義姉
    小川史郎 
     香奈子の兄。汀子の夫。
    小川篤志
     汀子の子ども。圭太より一歳年上。
    高橋
     圭太の幼稚園の担任。
    川田(沼田実)
     香奈子の父が経営する工場の従業員。
     下巻で本名が沼田実と分かる。
    坂田
     製紙業者の営業マン。
    山路礼子
     圭太の祖母。
    山路水絵
     山路将彦の再婚相手。

     事件の黒幕。小川圭太の誘拐事件を表の事件とし,裏で川田実の誘拐事件を実行する。
    橋場警部
     誘拐事件のプロフェッショナルの警部
    ○ 以下は短編「最後で最大の事件」の登場人物
    小杉真樹
     康美の父の再婚相手。
    小杉康美
     子供の頃,父に金庫に閉じ込められたショックで声を発することができなくなった少女
    橋場警部
     「造花の蜜」で,捜査を担当した警部。この作品では橋場警部の名を騙る蘭の部下が登場する。
    小杉光輝
     真樹の連れ子
    サトミ
     お手伝い

  • 下巻から主人公が変わる。というか、上巻の主要人物がほとんど出てこない。誘拐事件の本当の目的。真相。どんでん返し。面白かった。
    多くの人が言ってるように最後の章は蛇足な気もする。でもこの章の橋場警部はすきかな。

  • 後半。主人公からして変わってしまってて、同じ事件を扱っているんだけど、別の視点から綴られた新しい物語、って感もあり。前半の主人公、後半には全く登場しないし。何も起こらなかったはずの事件の裏で起きていた大問題とか、その後に引き続いて巻き起こる、一連のものとも思える事件とか、展開が目まぐるしく変わるけど、その上で保たれている整合性も素敵。連城作品は初めてだったけど、面白かったです。

  • たどり着いたように思えた真実が見る角度によってまるで違う様相を呈したもう一つの真実を浮かび上がらせる。
    一体どうやってこんな途方も無い物語を考えついたのか。

    すごいなーと思うけどただそんなに好みの話ではなかったです。

  • 連城三紀彦さんの本は2作目。

    被害者側に見える人が犯人だったり、犯人だと思っていた人が被害者だったり…
    ミスリードによる人物像の変化のさせ方がとても巧い。
    特に、川田の立ち位置の変わり方はすごいなあと思いました。

    スクランブル交差点や雪降る高崎駅の描写なんかも素敵です。
    鮮やかなのにくすんでいる。
    映画のワンシーンのような場面がたくさんある作品でした。

  • シングルマザーの子どもが誘拐された。その真相が明らかになるにつれ、物語が劇的に変化していく作品でした。最終的にはただ唖然しました。
    連城作品をかじり始めて5作目くらいですが、叙述がきれいだなと思います。きれいなのに魅力的というか、魅惑的というか、、、。
    今まで読んだことのない手法の本であり、賛否はありますが、私は気に入りました。トリックや心理描写、情景描写など、あらゆる一文一文がとても心に響く作品でした。

  • 前半終わって、後半にちょっとは期待してたんだけど、結局期待倒れでした。結局何だったのか余りちゃんと理解できていないが、読み返す気になりませんでした。

  • 【生きた花は枯れ、造られた花は蜜を零す】

    二重三重に張られた伏線に気づいたら絡め取られ、終わったときにぽかんと口を開けている事しかできない。

    まず、主人公は誰か?
    犯人は誰か?

    まったくわからないまま終わってしまった。
    最後読み終わっても読後の安堵があるのに、どんな話だったのか上手く想像できない。なのに面白かったと感想が浮かんでくる。まるで洗脳を施すようなミステリ。

    もう一度読んでも理解できるかわからないが、もう一度読み直してみたい。

全54件中 11 - 20件を表示

著者プロフィール

連城三紀彦
一九四八年愛知県生まれ。早稲田大学卒業。七八年に『変調二人羽織』で「幻影城」新人賞に入選しデビュー。八一年『戻り川心中』で日本推理作家協会賞、八四年『宵待草夜情』で吉川英治文学新人賞、同年『恋文』で直木賞を受賞。九六年には『隠れ菊』で柴田錬三郎賞を受賞。二〇一三年十月死去。一四年、日本ミステリー文学大賞特別賞を受賞。

「2022年 『黒真珠 恋愛推理レアコレクション』 で使われていた紹介文から引用しています。」

連城三紀彦の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×